GOLF

2018.12.07

ゴルフアマチュアのテークバックの正解はゆっくり? 早く?

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム25回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

吉田洋一郎

ゆっくり動かしても正確性は上がらない

ペンで字を書くときにゆっくりお手本をなぞるように動かすのと、一定のリズムで素早く動かすのではどちらが美しい字を書けるだろうか。一般的に「ゆっくり動かすこと=丁寧」というイメージがあるためか、前者のほうが美しくなると思う人が多い。しかし実際にはほとんど差はない。それどころかやってみると分かるが同程度のクオリティになることはあるものの、ゆっくり動かしたほうが美しくなることは稀だ。

これは人間の手先の器用さに関係している。物を触る、つまむ、握るなどさまざまな微細な動きが可能な人間の手。この器用さが字を書くという一連の動作で、あだになることがある。「ゆっくり丁寧に」という動きに意識を集中しすぎると、筋肉が硬直し意図しない小さなアクションが入ってしまうのだ。力を一定に保てず線が寄れてしまったり、筆圧にムラが出たりする。

スイングも同じことがいえる。テークバックをゆっくり上げると、意図した位置にクラブを動かせそうなものだが、実際のスイングではそうはならない。ゆっくり上げることでクラブ、手、腕、体が全て同じ運動量になったり、クラブヘッドの勢いが足りずに手元ばかりが先行してしまうなどの問題が生じ、正しい軌道を外れてしまう可能性が高い。

そしてもっとも重要な問題は、クラブヘッドの動きが遅いために切り返しで反動をつけられず、ヘッドスピードが上がらないということだ。字を書くときにペンが高速に動く必要はないが、スイングでヘッドが走らないのは致命的だ。

松山英樹はゆっくりではないか!?

このように私はレッスンで、テークバックをスピーディーに上げることの重要性を説いている。そのたびに聞かれるのは「松山英樹はゆったり見えるから、遅いテークバックのほうが正確なのではないか」という指摘だ。

松山の場合、トップで一瞬停止しているような間があることからゆったり上げているように見える。しかし、松山のスイング動画のテークバックをもう一度確認してみてほしい。始動からトップまでの時間が決して長くはないことが分かるだろう。

PGAツアーの飛ばし屋はダスティン・ジョンソンを筆頭にテークバックが速い。テークバックでクラブヘッドを速く動かせば切り返しの反動によって深いタメが生まれヘッドスピードが上がる。試しに彼らの映像に合わせて素振りをしてみるといいだろう。ゆっくり見える選手でも実際はかなりのスピードでテークバックを行っていることがわかる。

アマチュアはできる限り速く上げるべき

多くのプロはスムーズでスピーディーなバックスイングを行っているのに、なぜアマチュアはゆっくりとしたバックスイングをしたほうが良いとアドバイスされるのだろうか?

アマチュアがゆっくり上げたほうが良いと言われる理由は、手先や腕でクラブをヒョイと持ち上げることが多いため、ゆっくり上げることで身体と腕の一体感が出やすくなるからだ。手先や腕の運動量が多くなるとスイング中の体と腕のシンクロが崩れ方向性も飛距離も失われてしまう。アマチュアはこの関係性を崩さない範囲で、できるだけ速くバックスイングをとってほしい。

体と腕のシンクロを維持するために両肘と胸にできる空間にボールなどを挟んで素振りをしてみるとよい。体と腕がシンクロしていればクラブヘッドを速く動かしても体が連動して適切なバックスイングを行うことができる。

体と腕のシンクロに加えて意識したいのが各部位の適切な運動量だ。体<腕<クラブヘッドの順で運動量が多くなるため、当然動くスピードも末端に行けば行くほど速くなる。すべてを同じスピード、運動量にするとシャフトもしならず、ヘッドも走らないので注意したい。ちなみにバックスイングの速さを変えると最初はきちんとフェースに当たらないだろう。これまでとタイミングが変わるのだから当然だ。最初は連続素振りのような練習をしてクラブを走らせる感覚をつかんでほしい。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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