世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム3回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する。リーダーに欠かせない“周りから慕われる”ゴルファーになる方法とは?
そのラウンドに具体的なプランはあるか?
ゴルフを仕事のツールに使うのであれば、「名刺代わり」ともなるベストスコアは1つでも少ないものを持っておきたい。だからこそ毎回ベストスコアを目指してラウンドするアマチュアが多いのだが、この姿勢がベストスコアの更新を妨げている。「ベストスコアを出すためには、ベストスコアを狙ったラウンドをするな」というのはパラドックスのようだが、これにはきちんと理由がある。
「ベストスコアを出したい」と思ってラウンドしている人は、そのためにはどんなことをしなくてはならないかという具体的なプランがない。例えばプロゴルファーは、自分のベストスコアが「65」だったとしても、常に「64以下」を狙ってラウンドをするわけではない。大会であれば順位の状況、自らのコンディション等を鑑みて「この日は2つ凹ませたい」とか「パープレーでOK」というように具体的なスコアを設定する。
目標がスコアでない場合もある。トーナメントの予選前に行われる練習ラウンドでは、芝の状態の確認、グリーンの把握などをして、18ホールを通してどこで勝負をかけなくてはならないか等の具体的な戦略を立てる際の材料を集める。オフであれば、練習で試している新しいスイングが、コースで使い物になるかといったチェックをすることもある。
ビジネスでよく使われる「PDCA(Plan・Do・Check・Act)」は、もはや原始的なフレームワークだとも言えるかもしれないが、ことゴルフにおいて実践できているアマチュアは非常に少ないのだ。ベストスコアを出すには前半をいくつで回って、そのために出だしの3ホールはいくつを目指すというようなプランが必要だ。今の時期であれば、「スタートしてみたら思っていたよりもラフが長くて大変だ。だから最初の3ホールはラフの感覚をつかむために3打犠牲にしつつも、4ホール目からは順応していきたい」というような、より具体的な可能性も加味しておくべきだろう。
もちろん初めてのコース、ゴルフ歴も浅くスコアが安定しないという事なら、そのプランは大きくズレるはずだ。しかし計画を立てておくことに損はないし、考えることで自分の課題の見つめなおしにもなる。ロシアW杯、予選の最終戦で西野朗監督がそうであったように、いくつもの具体的なプランを用意しておくことで、ネガティブなことが起きてもパニックにならず状況に応じたプレーができる。そして結果、目指していたものを手に入れることができるのだ。
ラウンドは経験を積む場所である
アマチュアはどうして漠然とベストスコアを目指してしまうのか。それはプランを立てるための材料が圧倒的に不足しているからだ。だから私は、ラウンドの4回に3回はベストスコアを目指さない練習ラウンドとしてプレーすべきだと思う。コースでどのようなミスが出るのか、教わったアプローチを試した時にキャリーとランの比率はどうか、傾斜地でのショットの傾向はどうか等々。こういったラウンドでしかわからない経験をため、ベストスコアを出すための戦略づくりの材料にする。
そして4回に1回を「ベストスコアを狙うラウンド」と決めてプレーする。そうすることでその1回への熱量や集中力も上がる。例えば、前の日の就寝が早くなったり、ラウンド前のストレッチの時間が長くなったり、プレー以外の準備も入念になるだろう。普段の経験の蓄積とそういった準備や真剣さが化学反応を起こしてベストスコアが出るのだ。
また普段のラウンドを「経験を積む場」と割り切ることで、気持ちに余裕ができるため同伴やキャディとのコミュニケーションが増えるだろう。こうした人たちの会話は自分にない気付きを与えてくれる良い機会となるはずだ。まずはスコアに固執した「本気ラウンド」を止め、経験を積む「練習ラウンド」を増やすことが、結果スコアアップへの近道になってくれるだろう。