復興、つまり町づくりに終わりなどない。宮城県亘理町(わたりちょう)の復興のために移住するWATARI TRIPLE C PROJECTのクリエイティヴ集団、C-SQUAD(シースカッド)のメンバーとコラボレーションを企画。クリエイターと洋服が融合した、ファッションストーリーをお送りする。
アートで、ミュージックでそしてファッションで復興を
青々と生え揃う芝生、黒々としたアスファルトの道路、そして真新しい建物。現在の姿だけを見れば、美しい町だと思うはずだ。2011年に起きた東日本大震災。宮城県亘理郡亘理町は、津波により壊滅的な被害を受けた。10年以上の時が経ち、復興とともにその風景は一変。海岸線沿いには高い堤防が連なり、かつて民家があった場所も震災予防の観点から新たに区画が整理され、多くの人が移転を余儀なくされた。それが、この場所である。景色から感じられるように、確かに整備はされた。しかし、単に道や建物が整えば、町になるのではない。町とは人であり、習慣であり、そして文化の集合体なのだ。そんな想いを抱きローンチしたのが、新プロジェクトのシースカッドだ。
2021年に設立したシースカッドは、文化の創造・発信・定着をテーマに、若いアスリートやアーティストが亘理町に拠点を移し活動するというものだ。その狙いについて、総合プロデューサーであり、これまで広告プランニングをはじめ、さまざまなメディアプロジェクトに携わってきた佐藤勇介氏はこう語る。
「震災から10年。いろいろな立場の人がいるのですべてがというわけではないが、支援を募るだけの段階はもう終わったのかもしれないと思っています。復興も、以前の状態に戻しただけでは意味がない。若い世代のアスリートやアーティストなどが活躍する場とすることで、今まで以上に魅力ある町になるのでは」
道を整備し、いわゆる箱物をつくって終わり。そんなこれまでの復興のセオリーから抜けだし、人にスポットを当てる。1年が経った今、多くの町人にも受け入れられ、徐々に取り組みが実りつつある。2022年9月3日には初の音楽フェスも実現させ、さらに今後はスケートパークも完成する。しかし、課題はまだまだあるという。
「現実の問題は、やはり資金面ですよね。単にスポンサーとしてではなく、自分たちも参加しようという気持ちとともに、というのが理想。あくまで町と一体になって文化をつくり、育てることが目的ですから」
復興とは、クリエイティヴと大きく通ずるものがあるのかもしれない。何もないところから、新しい何かをつくりだし、世界へと発信していく。クリエイターたちが手がける未来への創造を、亘理町に見た。
クリエイティブ集団が纏う、旬のコーディネイト6選
1.プロデューサー・佐藤勇介×ディオール
何かを新たに生みだすには、セオリーからの脱却が必要だ。ピークドラペルにプリンスオブウェールズ柄というクラシカルなダブルのジャケットも、今ではスウェットフーディ&パンツとでストリートに着こなすことが当たり前になったように。それまでの常識を打ち壊すことで、新しい常識は生まれる。
2.アーティスト・相澤安嗣志×フェンディ
昨今のロゴ人気を牽引するFFロゴ。1960年代から続いているロゴだが、その表現は実にバリエーションに富んでいる。ウールフリース製のこのクルーネックニットにおいては、インターシャ編みによってチェーンモチーフと組み合わせた。構図としては単純であっても、FFロゴは表現方法次第で実に面白い。表面上では計り知れない、アートのよう。
3.ミュージシャン・RIKIYA×サン ローラン
形こそシンプルなダウンジャケット。しかし、ラッカーエフェクトで光沢を強めた生地が、ともすればロゴやレタードよりも強烈に、男の色気を奏でる。
4.スケーター・松本崇×ルイ・ヴィトン
ラギッドの象徴だったデニムセットアップも、ダイヤモンド・ダミエ パターンによってラグジュアリーに。1枚のデッキからスケートカルチャーが生まれたように、今トレンドはストリートから多く生まれる。
5.アーティスト・岩村寛人×セリーヌ
レオパードのフリースボディに反骨心を匂わせるテディジャケット。ラムスキンとのコンビ使いがロックな反面、トラックパンツがイマドキなルーズ感を漂わせている。芯がありつつも柔軟。表現の可能性を信じつつ、試行錯誤しながら常に前進するアーティストによく似合う。