役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
休日に家族で観てほしい映画部門の殿堂入りです!
滝藤、ずっとジュリア・ロバーツが苦手でした。『プリティ・ウーマン』も『ペリカン文書』もいろいろと観ましたが、「ザ・ジュリア!」と言いたくなるようなスター感に惑わされ、物語のディテールを忘れさせてしまう力に何だか違和感を感じていたのです。
この作品も、担当編集者から薦められ、しぶしぶ観たのですが、なんと、なんと! ジュリア・ロバーツも作品も抜群でした! 一生観ずに終わったんじゃないかと思うとゾッとします。
彼女が演じたのは、トリーチャー・コリンズ症候群の息子を抱えるお母さん。遺伝子がひとつ欠けているだけで、顔の骨が変形する症状だそうですが、外見が他の子と違うから、学校で露骨な嫌がらせを受けます。
この10歳の息子オギーを、一昨年のアカデミー賞を賑わせた名作『ルーム』の天才子役、J・トレンブレイ君が演じているんですが、相変わらず、演技が秀逸。目の動きが繊細で、彼が同級生からの容赦ない視線に耐えている様を見て、胸が締めつけられました。
私、滝藤も41歳になりましたが、50歳前後と間違われるほどの老け顔です。子供の時からわりとこの顔のままで、例えば野球の試合に行って、帽子を脱いで挨拶をした瞬間に指さされて笑われたことも(泣)。家では、この映画のジュリアのように、「あんたはハンサムだ」と母親が褒めてくれるんですが、一歩、外に出ると他人の視線が容赦なく、子供ながらにとても苦しみました。この悔しい体験が、「今に見てろ」と奮起する力になったし、役者という道に進ませた原動力にもなったので、今ではよい思い出ですが(笑)。
しかし、この映画は子供を悪者にしないのが、またいい。子供の行動には、必ず原因があることをしっかり描いております。そしてオギーの周りには差別・偏見を持たず、理解してくれる友達がいて、オギーをひとりぼっちにしていない。こういう題材は画面から目を逸らしたくなりがちですが、とてもファンタジックに作られていて胸に響いてきます。家族で一緒に観たい映画のひとつになりました。
『ワンダー 君は太陽』
P・J・パラシオのベストセラー小説『ワンダー』を、『ウォールフラワー』のS・チョボスキーが映画化。遺伝子の疾患で、人と違う顔をした少年と、その家族や友人の成長を章立てで紹介する感動作。脚本は『スタ-・ウォーズ』新作を手がけるジャック・ソーンが担当。『スタ-・ウォーズ』の小ネタも満載。
2017/アメリカ
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ジュリア・ロバーツ、ジェイコブ・トレンブレイ、オーウェン・ウィルソンほか
配給:キノフィルムズ
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中