ビジネスパーソンの教養に「アート」は欠かせないものとなりました。2022年に開催される必見の美術展やアート情報を紹介していきます。第1回は3月13日まで金沢21世紀美術館で開催されている「フェミニズムズ / FEMINISMS」展。
9名の現代アーティストの作品が揃う
2010年代後半におこった#MeToo 運動やSDGsへの意識の高まりによって、社会が大きく変わり始めています。世の中には「多様な性」があって当たり前。ジェンダーだけでなく、人種や国籍、年齢、宗教など、様々な壁を超えて、自分と異なる価値観に向き合うことが大切です。
残念ながら、日本は今の時代に必要な「変化」から取り残されています。2021年3月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2021」では、調査対象である156カ国中120位。G7の中では最下位という結果に。
意識を変えたいとは思うが、どうすればいいかわからない。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは、金沢21世紀美術館で3月13日まで開催されている「フェミニズムズ / FEMINISMS」展に足を運んではいかがでしょうか。
「フェミニズムズ / FEMINISMS」展は、性差の議論についての答えを求めるものではありません。9組の作家による写真、映像、日本画、刺繍アートなど多彩な作品を通して、フェミニズムについて自由に、多様に、思考を巡らすことができるようになっています。
展示室の中央に設置された巨大な女児の人形は、ユゥキユキの《「あなたのために、」》という作品。アイドルやコスプレなどのカルチャーとの関わりが強い作家が、自分と母親との関係性を再構築するために制作したものです。
自分の内面を支配し続けるインナーマザーの表象としての人形。背後にはインナーマザーと決別できない「母殺し」の映像が映し出され、人形の内部には自己の内面世界を投影した「毛糸をほどきあうボーイズラブ」の映像が流れています。ボーイズラブをはじめカルチャーの担い手として活躍しながらも、母親がもつ理想の娘像から逃れられない両方の自分がリアルに描き出されています。
碓井ゆい《shadow of a coin》も、心に残った作品です。この作品は「女性の労働」が題材。小銭をかたどった布に、長く女性の仕事とされてきた家事をはじめ、賃金が支払われない“シャドウ・ワーク”の場面が刺繍で表されています。社会のありかたについて考えさせられた一方で、作品の美しさも印象に残りました。
もうひとつ、木村了子《鰐虎図屏風「俺たちアジアの虎」》にも興味を引かれました。日本画の主要ジャンル“美人画”を、イケメンの男性像で描いた作品。昔から美人画のモデルは、たとえ女流画家が描くにしても「女性モデル」という習わしがありましたが、木村さん曰く「イケメンを描いたほうが、自分の思いを投影できる」とのこと。伝統を打ち破るパワーを感じた作品でした。
展覧会の会場は金沢21世紀美術館。妹島和世と西沢立衛による日本の建築家ユニット「SANAA」の設計により、2004年に開館。建築のテーマは“まちに開かれた公園のような美術館”。UFOのような平たい円形の建物は、四方のどこからでも入館できる造り。ふらりと立ち寄ったり、自由に通り抜けたりすることが可能で、街とごく自然につながった“開放的なハブ”という印象。SDGs時代にふさわしい美術館だと改めて感じます。
金沢21世紀美術館
会期:開催中~3月13日
時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
料金:¥1200
詳しくはこちら。
2022年は女性アーティストに注目した展示が全国各地で開催に
「フェミニズムズ / FEMINISMS」展のほかにも、今年は女性アーティストに注目した展覧会が多数開催されます。
「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー(三菱一号館美術館、2月18日~5月15日、東京・丸の内)」、「Viva Video! 久保田成子展(東京都現代美術館、開催中~2月23日」、「池内晶子 あるいは、地のちからをあつめて(府中市美術館、開催中~2月27日)」、「田部光子展 希望を捨てるわけにはいかない」(福岡市美術館、開催中~3月21日)」など。視野を広げに、ぜひ足を運んでみてください。