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ART

2020.12.12

森田恭通×田辺良太対談 経営者のためのアートの作法【後編】

国内外問わず多くのプロジェクトを手がけてきたデザイナーの森田恭通氏。多くの企業のトップと肩を並べてきた氏曰く、「経営者には美的センスが必要」。そんな森田氏が美意識と経営の相関関係を探る連載。今回はその森田氏がここ10年ほど、世界中のアートフェアを一緒に回るというWHITEWALL代表でアートプロデューサーの田辺良太氏と対談を敢行。多くの経営者とも付き合いのあるふたりが声を揃えていうのが「経営者こそ、アートにもっと触れるべき!」という意見。その真意とは?<後編>

ファッションがアートの扉を開ける鍵

森田 最近、大学生がクルマを買わなくなったという話があるけれど、一部の学生はお金を貯めて何を買うのかというと、カッシーナのソファを買ったりするわけです。僕らの時代とはまったく違い、彼らはクルマを飛び越えて住空間の充実を選んでいる。その先にアートもある。

田辺 そうなるでしょうね。たとえば「Supreme」というブランドがありますが、若い世代にアートとファッションを結びつけるのに一役買ったブランドだと思うんです。スケートボードやら、ストリート系のものを買う若いものたちがそこからアートに手を出し始め、カウズなどの流行にもつながっていると思うんです。

森田 「Supreme」はスケボーの板をキャンバスとして、少年たちにアートを結びつけたパイオアニアですね。あとは何と言ってもルイ・ヴィトン。

田辺 そう。以前ルイ・ヴィトンのクリエイティブディレクターに就任したマーク・ジェイコブズが、尊敬していたスティーブン・スプラウス(2004年没)に依頼して彼の描いたグラフィティをバッグに採用して2001年した「モノグラム・グラフィティ」が、アーティストとのコラボレーションの始まりでしょうね。

森田 僕は速攻買いましたよ。といっても日本にはなくて、シカゴで買いました。

田辺 あれがもう20年近く前のことなんですね。そこから村上隆、草間彌生、リチャード・プリンス、ジェフ・クーンズら現代アートのアーティストたちがルイ・ヴィトンとコラボして、その度に世間を賑わせました。次は誰がくるんでしょうね。

森田 誰だろうね。

田辺 ルイ・ヴィトングループがすごいと思うのは、作品を所有したり、注目するアーティストを、コラボレーションとしてブランドから世界中に発信し、アーティストのバリューを高めると同時に、所有する作品の価値も高めているという仕かけをしていること。世界中が見事にハマった感じですね。

森田 僕もそのひとりだね(笑)。でもアートというのは、いかに触れた人の心をハッピーにするかということなんです。とくに今のようなコロナ禍において文化や芸術の力が身に沁みる。演劇もアートも漫才も人の気持ちを上げるためのひとつのツールだと思います。今こそ経営者はアートを見るべきです。アートはある意味おじいちゃんになっても続けられる趣味になりますよ。

国内アーティストに目を向ける

田辺 本当なら名だたるギャラリーの作品が一堂に集まるアートフェアにぜひと言いたいところですが、コロナ禍で自由に海外と行き来できない今は、国内の注目すべきアーティストを知って欲しいですね。

森田 福岡のストリート発のKYNE(キネ)さんや沖田絢悟(おきだけんご)さん、武田鉄平さん、佐藤誠高さんなど、国内にもスーパースターが出てきていますよね。

森田氏がデザインを手がけたベトナム料理のレストランバー「ダダイ タイ ベトナメーゼ ディムサム」。店内には佐藤誠高氏の5m級の巨大アートが飾られている。

田辺 日本にもギャラリーがいっぱいありますもんね。

森田 近々京都でアートのイベントが開催されるし、コロナ禍でも何かをやろうとしている人はいっぱいいて、動き出している気がします。

田辺 感染対策をきちんと行い、アポイント制にしてソーシャルディスタンスを保って、マスクを着用して行えば、基本静かに鑑賞するアートのイベントは開催可能だと思います。もちろん、美術館も開いているので、この機会にぜひ国内の美術館を回って欲しいですね。

森田 日本には素晴らしい美術館がたくさんありますもんね。

田辺 ブリジストン美術館も今年「アーティゾン美術館」として生まれ変わったし、「京都市京セラ美術館」も新しくなりました。どんどん美術館がリニューアルしている。ギャラリーも東京にはたくさんあるけれど、とくに六本木に集中していますね。

森田 「タカ・イシイ」「小山登美夫」「OTA FINE ARTS」など。「ペロタン」もピラミデビルにあるしね。

田辺 「スカイ・ザ・バスハウス」の白石さんもギャラリーをオープンする予定と聞きましたよ。あと東京・天王洲に日本初の現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT」がオープンしましたね。寺田倉庫が母体となっていて、美術館でもなく、ギャラリーでもなくて、展示されているのは、寺田倉庫に作品を預けているコレクターが所有する作品。

森田 東京都現代美術館や恵比寿の写真美術館も僕は好き。東京を見回すといいアートが見られる場所が多く、日本は世界一ミュージアムのある国じゃないですか。トリエンナーレや芸術祭も各地でやっているから、旅の目的にしても楽しい。

「アート」と「経営」その接点とは?

森田 アートに触れることで間違いなく感性が豊かになり、発想も生まれます。僕は打ち合わせなどでご本人のアートコレクションを見ると、趣味趣向がなんとなくわかるし、仕事のスタイルが想像できます。

田辺 センスは間違いなくわかりますよね。

森田 わー、渋いのを持っていらっしゃいますねーという方もいれば、わかりやすい作家のものを集めている方もいます。アートも表面的なものだけでなく、背景のストーリーを含めて買うってことが、経営者には必要なことだと思います。かっこいいね、迫力あるねだけでなく、このアーティストがどういう経緯でここまできて、どういう形で有名になったのかがわかると、その人の初期の作品が見たくなり、その作品を手に入れたくなる。

田辺 「知る」ことの面白さがアートの醍醐味だと思うんです。経営者に絶対必要な知的好奇心をいつまでも保つために、アートはいい刺激になると思います。なぜなら知ろうと思ったら無限にあるのがアートだから。

森田 経営者の“脳”に箔がつくと思います(笑)。そういう意味でも、良太くんのウェブサイトを覗いて、ほんの少しアートに触れ始めてみてください。

田辺 あ、ありがとうございます。「ARTRANDOM」いうウェブサイトを立ち上げたんですが、僕が所有するアート関係のほか、藤井フミヤくんや小山登美夫さん所有のアートなども展示し、クリックするとどんなアートなのかが解説してあります。アートなものなら何でもありのサイトです。僕が今まで勉強してきたことや集めたものを詰め込んであります。

森田 あれ、面白いよ!

田辺 今後はギャラリーの方や森田さんにも出品者として参加していただき、そこから森田さんを始め、アーティストやギャラリーのサイトにも飛べるようになっています。そういえばアーティスト森田の個展ももうすぐですね。今回の写真の展示はどんなテーマで?

森田 12/11―12/25に表参道のSCENEで開催するんですが、もともとパリで毎年開催していたフォトエキシビションが今年はコロナで開催できず、でも止めてしまうのは嫌なので小規模ですが国内で行います。テーマは「BRAIN」。その人の本棚を見ると、その人の思考が見えるというコンセプトで選んだ本を、僕なりの視点、ライティング、並べ方で写真に収めるシリーズなんですが、今回の展示はずばり僕の頭の中。ぜひ見にきてください。

【 “Brain” Yasumichi Morita】SCÈNE
2020年12月11日〜12月24日(休み:日、月、祝)
12:00~19:00 ※完全アポイント制
東京都港区南青山3-15-6 Ripple Square D-B1
http://scenetokyo.com/exhibition/

【ARTRANDOM】
「アートなものなら何でもあり!」をコンセプトに、現代アート作品からTシャツや写真集などのアートグッズを紹介するECサイト。今、アート好きの間で話題となっている。
https://artrandom.jp

YASUMICHI MORITA
GLAMOROUS co.,ltd代表。2001年の香港プロジェクトを皮切りに、ニューヨーク、ロンドン、カタール、パリなど海外へも活躍の場を広げ、インテリアデザインに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行なっている。100年に一度と言われる再開発が渋谷で進む中、2019年「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がけた。またアーティストとしても積極的に活動しており、’15年より写真展をパリで継続して開催している。
http://glamorous.co.jp

RYOTA TANABE
ホワイトウォール代表。アートプロデューサー。17歳で渡米。サンフランシスコの高校からアートカレッジへと進学。ニューヨークではパーソンズやFITにてイラストとデザインを勉強。マガジンハウス『POPEYE』や『BRUTUS』のニューヨーク特派員として活躍。帰国後は化粧品ブランド「RMK」のオフィシャルサイトの立ち上げや藤井フミヤの「FUMIYART」のWEBページの制作。現在は”アートなものなら何でもあり”のECサイト「ARTRANDOM」を立ち上げた。https://artrandom.jp

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