安心・安全な環境で食事ができる「NO密レストランプロジェクト」を行っている美食サロン「北参道倶楽部」。そのノウハウを活かして 11月27日(金)に”フレンチの鉄人”坂井宏行シェフが、かつて大人気を博した伝説のテレビ番組『料理の鉄人』で披露したメニューを再現するイベントを開催した! 北参道倶楽部のためだけに復活する一夜限りの『料理の鉄人~令和バージョン~』で会場は熱気に包まれた。
一夜限りの『料理の鉄人~令和バージョン~』
色彩に富んだ華やかな盛り付けから「フランス料理界のドラクロワ」と称される、「ラ・ロシェル」オーナーシェフ・坂井宏行氏。数々の名勝負を生み出したテレビ番組『料理の鉄人』(フジテレビ)で、1994年2月から2002年1月まで“フレンチの鉄人”を務め、勝率はなんと80.4%。通算70勝をおさめ、これは全鉄人中、最多勝利数記録になる。
安心・安全な環境で食事ができる「NO密レストランプロジェクト」を行っている会員制美食サロン「北参道倶楽部」では、坂井シェフが『料理の鉄人』で披露したメニューを再現するイベントを開催。伝説の一皿を食すべく、全国各地から北参道倶楽部会員が集まった。
坂井宏行シェフが勝利を収めた4皿が登場
11月27日、会場は南青山にあるフランス料理の名店「ラ・ロシェル」。南フランスを思わせる明るく開放的な空間は、高級感がありながらも、柔らかな空気にあふれ居心地がいい。
「さっそく、ムッシュに登場いただきましょう」。MCのアナウンスに導かれ、坂井宏行シェフが会場に姿を現した。トレードマークともいえる、ニコニコとした笑顔。坂井シェフから今回のイベントの主旨が語られる。
「今夜は『料理の鉄人』で僕が作った料理から、4皿を再現して提供。こういう試みは、初めてのことです。『料理の鉄人』では番組のセットで調理しましたが、今回は自分の店で作る。より完成度の高い“令和バージョン”としてお届けします」
再現するメニューは、以下の4皿。
「もちろん、対決で勝った料理のみ。負けた料理を出すわけがないでしょう(笑)。この4品に加えて、今夜のために考案した肉料理を1皿、お出しします。『料理の鉄人』が放映されていた90年代を振り返りながら、令和の一夜を楽しんでください」
この夜、当時の様子を振り返るための特別な演出が用意されていた。各自の席札の裏にQRコードが印字されており、スマホをかざすと、今夜提供される料理が作られた『料理の鉄人』の動画が視聴できる。会場から「これ見たよ、懐かしいなあ」といった声が聞こえてきた。
料理の提供スタイルも、『料理の鉄人』を踏襲。テーマ食材が発表され、調理前の食材が会員に披露される。その後、坂井シェフがキッチンで調理し、完成を楽しみに待つという流れだ。
坂井シェフによる『料理の鉄人』裏話も満載
1つ目のテーマ食材は「雲丹」、料理は「地卵の雲丹詰め」。地卵の中に雲丹を詰め、サバイヨンソースを合わせたもの。濃厚な卵黄と北海道産バフンウニの絡みが絶妙で、華やかな一夜の幕開けにふさわしい。料理も最高だが、坂井シェフの思い出話がまた楽しい。
「対戦相手は脇屋友詞シェフだったの。今は有名だけど、当時は立川リーセントパークホテルに勤めていて、それほど知られていなかった。僕は鉄人になって6戦目で、全勝中。そろそろ負けてもいいやと思っていたら、脇屋シェフは山本益博氏の推薦だという。これは、負けられないと気合が入ったね」
料理評論家の山本益博氏は坂井シェフの料理を酷評したことがあったため、坂井シェフどうしても勝ちたかった。
「その山本益博氏が対戦相手を選んだだけでなく、審査員として出演している。もし彼がいなかったら、負けていたかもね(笑)」
2つ目のテーマ食材は「アスパラガス」、料理は「アスパラガスのシャルロット」。鉄人・坂井シェフの代名詞となった「セルクル固め」を堪能できる一皿だ。
「お菓子作りに使うステンレス製の円形の型、セルクル。料理の鉄人時代によく使いましたね。この料理はアスパラを短く切って外周に並べ、その中にキャビア、アワビ、ツブ貝、車海老などを盛り込んだもの。塩味を生かした、さわやかな風味に仕上げました」
アスパラガスの対戦相手は、駒沢ラ・ターブル・ド・コンマの小峰敏宏シェフ。“野菜フレンチ”の第一人者と呼ばれる強者だ。
「審査員に山本益博氏の仲間である料理評論家の見田盛夫氏がいた。僕の料理を一回しか食べたことがないのに、すべて見切ったように批判されたんですよね。彼の姿を見て、怒りが湧き上がり、収録中に指を切っちゃった(笑)。手袋をはめて調理を続けましたが、やりにくくてたいへん。でも、意地で勝利をつかみました」
3つ目のテーマ食材はオマール海老、料理は「オマール海老の海藻ソース」。アサリの出汁をベースに、青のりの風味を生かしたソースが絶品。濃厚なオマールのうまみを、ソースが軽やかに引き立てている。
「この料理は、『料理の鉄人』の最強鉄人決定戦で陳建一さんと戦ったときに作ったもの。陳さんとは仲が良く、いろんなことを学び合いました。僕がフォアグラの焼き方を教え、陳さんから唐辛子の使い方を教えてもらうという感じで。そんな陳さんとの勝負。彼にはいつもゴルフで負けていたので、料理対決は絶対に勝ちたかったんですよ」
対決は5人の審査員がジャッジし、3対2の僅差で坂井シェフが勝利した。「陳さんがオマール海老のエビチリグラタンを作った。エビチリにチーズをのせて焼いたもの。審査員が口を揃えて“まずい”と言った(笑)。あの失敗のおかげで、僕に勝利が転がりこんだんです」
4つ目のテーマ食材は洋梨、料理は「洋梨のロースト」。2時間かけて焼き上げた洋梨の熟れた甘みに、生クリームとコニャックの香りが絡み合い、優雅で奥行きのあるおいしさを生み出している。
「デザート対決の回は得意でした。洋梨の対戦相手はスイーツ界の大御所、柳正司さんでしたが、勝利をおさめました。パティシエの辻口博啓さんにも勝ちましたしね。勝利の理由? 『料理の鉄人』には制限時間があり、スピードが要求される。丁寧で緻密な仕事を大切にするパティシエは、そもそも不利なんですよ(笑)」
『料理の鉄人』再現メニュー4品に加え、デザートの前に出された肉料理「和牛サーロインの朴葉巻きロースト」も完璧な味わい。きめ細かくサシが入った鹿児島産黒毛和牛の風味豊かなうまみを、朴葉と藁の焦げた香りがやさしく包み込む。味噌を加えたソースとの相性も抜群で、日本的な情緒を感じされる傑作だった。
『料理の鉄人』再現メニューの味わいはもちろん、坂井シェフの思い出話にも参加者の笑顔が絶えなかった至福の時間。「僕も最高に楽しかった。来年春くらいに、第二弾をやりたいな」と、坂井シェフは早くも次への意欲を見せていた。
※本イベントは2020年11月27日に行われました。