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2024.07.12

【納言・薄幸】「タコ焼き器無いの?」尼神インター渚さんの要望通りにタコパを開いたが……

大酒飲みで知られる、お笑い男女コンビ「納言」薄幸さん。その、笑いに満ち溢れた酒エピソードを著書『今宵も、夢追い酒場にて』から一部抜粋してお届けします。

「お前ん家でタコパしよう!」

「タコ焼き食いたい! 家にタコ焼き器無いの? みゆきちゃん家で、タコ焼きしよーや!」

少し前に、そんなLINEが届いた。

送り主は、尼神インターの渚さん。

「タコ焼き食べたいな。うちにタコ焼き器あるから、タコパしよう」は、聞いた事がある。

「タコ焼き食いたい! お前ん家でタコパしよう!」は、聞いた事がない。

パーティー開催の誘いにしては、結構珍しいお誘いだ。

そして、タコ焼き器なんて、ない。

「家にタコ焼き器無いの?」

渚さんは何を根拠に、もちろんある物だと思ったのだろう。

私はコテコテの関西人じゃない。その反対。サラサラの関東人だ。

「家にWi-Fi無いの?」のテンションで、タコ焼き器の有無を聞いてきたコテコテの関西人の渚さん。

ご希望通り、渚さん用にタコ焼き器を用意して、それから4、5日経った頃。その日仕事が一緒だったさすらいラビーの宇野君と、ルームシェアをしていた私の家でサシ飲みしていると「今日遅いん?」渚さんからLINEが届いた。

渚さんの「今日遅いん?」は、「おい! 飲もうや!」っていう意味だというのは、知り合った数年前からよく知っている。

「さすらいラビーの宇野君と飲んでいるけど、良かったら家で飲みましょう! タコ焼きしましょう」

という旨のLINEを送ると、

「木村君と行くわ」

そう返ってきた。

木村君というのは、拓哉さんの方じゃなく、インディアンスのきむさんの事。

タコ焼きを食いに、関西人が関西人を連れて来る。もうこの家は、道頓堀や。

タコ焼きにうるさい渚さん

元々背が低いのに、初対面の先輩とタコ焼きをするという緊張のせいで、身長が130センチに縮んでしまった宇野君。そんな宇野君と一緒に、渚さん達が来る前に近所のスーパーへ具材の買い出しに行く。

買い物を済ませ、15分前後で家に戻り、ドアを開ける。

「遅かったなあ」「氷どこー?」

渚さんときむさん。

もう、来てた。

来て、入って飲んでた。

来て、入って飲んで、氷探してた。

「さすらいラビーの宇野です」

なぜかもう来てた先輩達に動揺したせいで、更に縮み身長110センチになった宇野君が挨拶を済ませる。

「僕◯◯でバイトしてたんで、タコ焼き焼けますよ」

某チェーン店のタコ焼き屋でバイトをしていた経験があった宇野君。これは頼もしい。渚さんもさぞかしご満悦だろう。

宇野君のタコ焼き焼ける宣言が終わると、渚さんが口を開く。

「ちゃうねん、ちゃうねん、ちゃうねん。あそこのタコ焼き硬いやろ。そんなんちゃうねん。うちな、柔らかい奴が好きやねん。ちゃうねん。柔らかいの作って」

すっごい、ちゃうかった。

初対面の先輩に、いつも作っていたのとは全然ちゃう、柔らかいタコ焼きを作るハメになった宇野君。でも、流石経験者。身長は2桁まで縮み、35センチになってしまった小さな小さな体で、ダマにならない様に粉を混ぜて、水の分量を多めにして柔らかい生地を作り、手際良く焼いていく。

「生地少なない?」

「水少ないんちゃう?」

「卵入れた? 卵少ないんちゃう?」

全部少ないと思っちゃう、何もしない渚さんの邪魔くさい野次も華麗にかわし、綺麗なタコ焼きを焼き上げる宇野君。

「うま! タコがコリコリしてんなあ。生地がええなあ。めちゃくちゃ旨いわ!」

食べたらもう今までの野次は無かった事になるシステムらしく、渚さんは満足気にタコ焼きを頬張っていた。

ちなみに渚さんは、終始タコが旨いタコが旨いと言っていたけど、スーパーのタコが売り切れていたから、それはイカでした。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:今宵も、夢追い酒場にて
薄幸(納言)

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