いついかなる時も仕事にまっすぐ向き合い、成果を残してきた男たち。腕時計に思いを託して勝負を挑む日常を彩るのが、勝負時計だ。最愛の時計たちのストーリーを聞いた。
時計×ファッション、それが楽しい
「時計を強く意識するようになったのは30年ほど前から。きっかけはパネライ。それまでも時計は好きでしたが、オーセンティックなデザインしか触れたことがなくて。その頃から、パネライのような新スタイルの時計が増えてきて、時計に面白さを感じるようになりました」
そう話すのは、幹コーポレーション代表取締役の古賀幹治氏。福岡県で貨物の保管や小口配送の業務などを手がける会社を経営している。オーダースーツを身に纏(まと)った美しい姿は、82歳という年齢を感じさせない。
「いつまでも現役のビジネスパーソンであり続けるためには、ファッションはとても大切。そのひとつが時計です。私にとって時計はファッションと切っても切り離せないモノ。出張の際には、必ず2〜3本の時計を持参して、誰に会うのか、そして仕事の内容やファッションを考えながら、“勝負時計”を選ぶようにしています」
そんな古賀氏の最近のお気に入りは、パルミジャーニ・フルリエの「カルパ XL エブドマデール」。独特のトノーシェイプに縦スケルトンのダイヤルを組み合わせた姿は、かなり個性的だ。
「この時計に出合ったのは2019年のSIHH(スイス・ジュネーブで開催されていた新作時計の展示イベント)です。いつもお世話になっている福岡の時計専門店オロジオの木村喜久社長のご招待でしたが、そこでパルミジャーニ・フルリエというブランドに出合いました。衝撃的でしたね。私がこれまで持っていないタイプのデザインでしたし、品質もずば抜けていた。
なかでもこのカルパは、ひと目惚れで。僕は所有するすべての時計に愛があるし、思い出も深い。だからカルパだけが特別というわけじゃない。しかしパルミジャーニ・フルリエは知る人ぞ知るブランドですから、『変わった時計ですね』と話のきっかけにもなる。それが密かな楽しみにもなっています」
この実力派ブランドに魅せられた古賀氏は、新しいラグジュアリースポーツウォッチの「トンダGT」も手にいれた。
「これまでのパルミジャーニ・フルリエにはないスタイルですし、今の私のライフスタイルに合うモノでもある。この時計にどんなファッションを合わせようかとワクワクしています」
現役の会社経営者として忙しい日々を送りながらも、ファッションや時計を楽しむ。そんな先達の姿に学ぶことは多い。
「時計は“人間形成”だと思います。きちんとしたファッションをしているなら、時計だってきちんとしたモノをつけるべきでしょう。私が選んできたのは、すべて普段使いの時計たち。数十本ありますが、どれもが縁があって私の元にやってきた。コレクションボックスに並べ、どれをつけようかと思い悩む時間も楽しいです。そしてこういった時計は、いろいろな縁を連れてきてくれる。オロジオの木村社長がいたからこそ、こういった時計に出合えたともいえるし、いろいろなつながりが広がっていくのも腕時計の面白さですね」
そろそろ現役を退き、会長職になろうという古賀氏は、“上がりの時計”を探している。しかしそれが最後の時計になるとは周囲も本人も思っていない。最前線に立ち続ける仕事人にとっての勝負時計は、一生探し続けるモノなのかもしれない。