“壊れない時計”という常識破りのコンセプトから生まれたG-SHOCK。本誌の提案でカシオと可士和の付け替えコラボモデルが実現した。
「付け替え。それがすべての始まりでした」
「2021年の2月から始まる『佐藤可士和展』のために、何か特別なことをやりたい」
そう考えていた佐藤。編集部でも、ただ佐藤可士和特集(1月25発売)を組むだけでなく、一緒に何かをつくってみたいと思っていたところ、佐藤がG-SHOCKを着用していることに気がついた。その意外な組み合わせに話を聞いてみると大学生の頃にこの時計に出合ったという。学生時代にパンクバンドを組んでいた佐藤は、リストバンドのようにも見えるG-SHOCKを愛用。今でもスノーボードなどをする際に使っていると話してくれた。また今まで時計をデザインしたことがないと聞き、コラボレーションモデルなんてどうですか? と編集部から提案。すぐにカシオ側に企画を相談し、プロジェクトがスタートしたのが2019年の11月のことだった。
「初期に出た5600シリーズが好きで、今も愛用しています。コラボレーションモデルをつくるなら、特別なことがやりたいけど、すでにG-SHOCKには多くのバリエーションがある。友人のNIGO®君も華やかなネオンカラーのモデルをつくっていたし、何か新しいことができないかと模索していました」
しかし5600シリーズは、すでにデビューから30年以上の歴史があり、多種多様なモデルがつくられてきた。ここから"新しいもの"を生みだすのは不可能に近い。だが、佐藤は諦めない。カシオの担当者とのディスカッション中に出た、ちょっとした言葉を聞き逃さなかった。
「ぽつりと"構想段階ですが付け替え可能なG-SHOCKがある"と。それを聞いて、ぜひそれをやりましょう! って(笑)」
この提案にカシオ側は狼狽する。G-SHOCKは耐衝撃性能こそが最も重要な柱であるため、新型モデルをつくる際にはかなり綿密に耐衝撃構造を開発する。 例えば一昨年にデビューしたフルメタルの5600シリーズも、外殻部分をメタルにしているだけでなく、内部の耐衝撃構造を新しく開発しているG-SHOCKは外装の樹脂部分も耐衝撃性能を高める大きな役割を担っているので、そこが付け替え式になるなら、それ以外の耐衝撃構造も進化させなければいけない。実現可能なのか? そして開発が間に合うのか? カシオは頭を悩ませた。
そして試行錯誤の末、G-SHOCK初の付け替えモデルとして「DWE-5600CC」が2020年10月に発売され、この「KASHIWA SATO Collaboration Model DWE-5600KS-7JR」が完成する。
今回の付け替え式G-SHOCKをつくる際のポイントとなったのは、カシオが力を入れているカーボン技術。時計モジュールを軽量で強固なカーボンファ イバー製のケースに収める「カーボンコアガード構造」によって耐衝撃性を高めた。さらにセンターケースに4つのフックをつけ、ここで引っかけることでベゼル部分を固定するようにしている。そしてバンド部分はスライドレバーで着脱できるようにした。こういった構造のすべてがもちろんG-SHOCKの耐衝撃基準を満たしている。
「とにかく、これはできますか? と質問攻め。でもリクエストするといろいろチャレンジしてくれました。しかしやはり付け替えができるというのが、理想を実現する最大のブレイクスルーになりましたね。僕自身が時計のストラップを替えて楽しむのが好きで、G-SHOCKでもやればいいのにと思っていた。つまり僕が求めていたことと、カシオが進めていた計画がピタリと合致したんです。
実際に時計の製作に携わってみると、想像以上に緻密につくられていることがわかりました。無駄なく完成されている時計なので、できることは少ないかなと思いましたが、(赤をベースとした)文字盤部分のデザインができたのが大きかったです。小さい面積でも印象はかなり変わりますから。そこに、今回の新色である鮮やかなオレンジやグリーンでベゼルやバンドのパーツを文字盤と組み合わせ、思い描いたとおりの腕時計ができました。理想の色を出すために何度もディスカッションしましたが、細かいことを丁寧に積み上げていったことで、新鮮な時計ができたんじゃないかな。
G-SHOCKは世界中にファンがいるブランド。今回、深く関わったことで、その理由がわかりました。モノづくりに真剣に向き合い、これだけのデザインと品質を、このプライスで提供できる。まさにイノベーションとクリエイティビティの賜物ですね」
近年は企業ブランディングに関わることが多い佐藤だが、今回は純粋にプロダクトデザインを楽しんだ。「久々にデザイナーらしい仕事だった」と笑う佐藤に、G-SHOCKのブランディングをするならどうする? と投げかけると、「G-SHOCKは変える必要がないんです」と即答だった。それは長年のファンからの、G-SHOCKへのエールでもある。
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