PERSON

2022.11.23

写真家・平間至の進化を続けるオーディオ部屋公開!

好きなことに没頭できる自分だけの空間があれば、人生は深みを増す。価値観を人に押しつけることなく、淡々とこだわり、淡々と愛でる。今回は、写真家・平間至氏の仕事の流儀にも通じる趣味部屋に潜入した。【特集 浪漫のある家】

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

平間氏はベーシストでもあるため、愛器のベース「TSUBASA GUITAR WORKS」も置かれている。

音楽でインプットし、写真でアウトプットする

「ある時ピンと閃くんです、あのケーブルをつないだら、いい音になるんじゃないかと。もう降りてくる感覚ですよ」

写真家・平間至氏の自宅、音響機器とレコードがずらっと並べられたオーディオ部屋で平間氏は微笑む。25年前からオーディオ機器を集め始め、今ではケーブルを自作し理想の音を追い求めるという、もはやプロフェッショナルの域にまで到達。

「ただお金を出して機材を買っても自分の好きな音にはなりません。ケーブルや電源タップひとつでも音は変わりますから、それぞれの特性を頭に入れセッティングを常に更新していく。今朝も電源タップを変えてみました。なかなかいい音になりましたよ。1日にほんの少しでもよくなれば、20年かけたら大きな変化になりますし、オーディオのセッティングが進化すると自分が成長するような感覚があります」

1970年代後半からパンクにニューウェーブ、ポストパンクと聴き続けてきたが、ここ最近60年代のサイケデリックロックに目覚めた。なじみのレコード店に週2回通い店主が平間氏のために選んだレコードを視聴、気に入ったものを毎回入手しているという。

「レコード店へ行き、店の方と話をして、お金を出し、家で針を落とす。ただ聴くだけではない、それらも含めての音楽体験だと思っています」

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

右側の壁面には、アクリル画のカンバスが。作者は平間氏の愛娘。「私と同じ音楽を聴くと、こういうアウトプットになるんですね(笑)」

タワーレコードのポスターをはじめ数々のミュージシャンを撮影してきた平間氏。音楽愛が高じて、地元宮城の塩竈(しおがま)で音楽フェス「GAMA ROCK FES」も主催し、音響設備にも関わっている。

「自然の中、屋外の音響は無駄な反響がなくていいですよね。部屋だとそれぞれの特性がありますから、低音が聞こえすぎるなと思ったら、こうやってセッティングして変えていくもの。私にとって音楽は、密接に仕事と人生に関わってくる大事なものです。音楽でインプットして写真でアウトプットしている、そんな感覚なんですよ」

ここで音楽を聴くのはもっぱら朝の時間。オーディオの前にロッキンチェアを置きコーヒーを飲みながら耳と心を澄ます。

「撮影を終えてヘトヘトの状態ではなくて、一番元気な時間にじっくりと聴きたいですからね」

朝、ここで平間氏は音楽をインプット。そのインスピレーションを写真にぶつけるべく、オーディオ部屋を出て撮影に向かう。平間氏の写真は長い間そうやってつくられていたのだ。

平間至氏のこだわりのオーディオアイテムを紹介!

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

ともに長く過ごすレコードプレイヤー
モデルは「YAMAHA GT-2000L」。「スピーカーやアンプは、現行品でよい音を出すことが私のこだわりですが、これだけは古い。昔から愛用しています」

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

ミュージシャンが選んだ真空管
真空管アンプは「SUNVALLEY SV-Pre 1616D」を使用。「友人のミュージシャンにメーカーの人を紹介してもらい手に入れました」

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

置き方すら美しい音質を左右するケーブル
ケーブルはすべてオヤイデ電気の製品。床とケーブルの接触も音に影響するため丁寧に設置されている。「とはいえ、よく踏んでしまいます」

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

昔懐かし、幻の!? カセットプレイヤー
「最近、カセットがいい音なんだって気がついて好きなんです」。プレイヤーは、愛好家のなかでは幻の逸品と言われている「Nakamichi CR-40」。部屋の右側に配置。

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

ポータブルカセットプレイヤーに音楽を詰めて
現在カセットウォークマンを集めている平間氏。「好きな音を詰めて出かけるって、お弁当箱を持って遠足に行く感じ。ワクワクします」

平間至 進化を続けるオーディオ部屋

レコード店巡りは毎週欠かさない
レコードは、下北沢のピアノラレコードに毎週通って購入。サイケデリックロックは鎌倉のフィルモアレコードの店主が教えてくれた。

Itaru Hirama
1963年宮城県生まれ。写真から音楽が聞こえてくるような作品により、多くのミュージシャンの撮影を手がける。2015年からは平間写真館TOKYOをプロデュース。今年は、京都駅と東京駅で音楽をテーマにした回顧展を開催した。

【特集 浪漫のある家】

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=藤村全輝

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