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3代目が老舗イノベーションに挑む!:會澤 祥弘

會澤高圧コンクリート株式会社 代表取締役社長
會澤 祥弘

道路、住宅、ビル、橋など、人間が必要とする建造物を造るうえで欠かせない重要な材料、コンクリート。日本の高度成長を支えた素材ともいえるが、それゆえコンクリート業界には古いルールや慣習が残り、多くの問題を抱えていたという。そんな業界を変えるべく立ち上がったのが、會澤高圧コンクリート3代目社長の會澤祥弘。コンクリートのように固くガチガチだった業界を変革する戦いが始まった。


記者時代に培った“学ぶ力”

北海道苫小牧市を拠点とする會澤高圧コンクリートの家に生まれた會澤祥弘氏。だが、大学では文学部を選び、卒業後は日本経済新聞社に就職した。

「正直なところ、いずれは家業を継ぐことになるかもしれないという薄っすらとした思いはありましたが、まずは自分の好きな道を極めたいなと。12年間、記者生活を送り、最終的にはニューヨークで米州編集総局記者を経験しました。この12年間の記者時代が、学ぶことの大切さを教えてくれた。取材を続けていると、知らないことがたくさん出てきます。さまざまな国の歴史や文化、業界特有の専門性の高い知識、その業界の最新動向……。でも、知らないでは済まされない。とにかくキャッチアップするために裏で“陰徳”を積むんです。要するに情報のアップデート。時代の変化に置いてけぼりにならないようアンテナを張り続けるという習慣、これが記者時代に培った私の大きな財産です」

1998年、會澤氏は日本経済新聞社を辞め、北海道に戻り、會澤高圧コンクリートに入社した。もしも記者生活を経験することなく新卒で家業を継いでいたら、「今の自分も今の会社もなかったでしょうね」という。

「家業をそのまま継げば、それなりに安泰だったでしょうし、従来の経営方針に黙って従ってやるという道もなかったわけではない。でも、ダメでしたね。どうしてこうしたやり方なんだろうと、いちいち疑問が湧くからです。私は2009年に研究開発機関として『アイザワ技術研究所』を創設しましたが、研究員たちと最初にやったのはプリニウスの『博物誌』を読む込むことでした。コンクリートは古代ローマからの歴史があります。ローマンコンクリートにこそ次の時代を考えるヒントが隠されているのではと考えたのです。学びの対象は今の事象に限りません。いにしえにも及ぶのです」

NY特派員時代のオフィスでの一枚。国連の記者クラブに所属し、安全保障理事会をカバーする傍ら、勃興しつつあったネット企業の動きも取材した。

若手社員を抜擢し老舗改革に挑む

1998年に會澤高圧コンクリートに入社した會澤氏は、コンクリート業界の荒れ果てた状況に直面した。

「コンクリートは国の仕様規定により、製造方法が厳しく定められています。そのため品質や付加価値による差別化が難しく、同業他社に勝つためには価格でしか勝負できませんでした。価格競争が激化すると、安さを売りにしたアウトサイダーのような業者が出てきて業界の秩序を乱してしまいます。同じ土俵で競争してしまえば、経営体力をじわじわと消耗するだけです。すべてを変えようと考えました」

會澤氏は、まずは社内を変えた。老舗企業は古参役員の権力が強く、若手社員が自分の意見を自由に言えない雰囲気があるが、會澤高圧コンクリートも同様の状態だった。そこで會澤氏は入社2ヵ月後に、会社の現状に不満をもつ若手社員とともに「業務改革ワーキンググループ(WG)」を発足。執行役員制度を導入し、WGのメンバーを中心に若手を執行役員に任命した。

「古参の役員が名を連ねる取締役と、経営執行者を完全に分けました。役員から実質的な経営権を奪い取ることが目的です。この制度の導入とともに、京セラの稲盛和夫さんが提唱した“アメーバ経営”を取り入れました。アメーバ経営とは企業の人員を6~7人の小集団に分け、集団ごとに採算を見える化する仕組みです。自ら考える燃える集団づくり。これが改革の狼煙となり、若手社員の目の色が変わったのです」

業界を震撼させた「ウップス」とは?

社内の変革とともに、會澤氏は古い業界の再編にも挑んだ。

「社外での動きとしては、同業者に対しM&Aを積極的に仕かけました。業界を変えるには、規模や力が必要だと考えてのことです。同時に、アメリカのコンクリートメーカーを参考に、ITを駆使した新しいネットワークプラント『ウップス』を独自開発し、札幌市で一気に展開しました。これはコンテナモジュール型のモバイル式小型生コン工場を多店舗展開し、それまで冷遇されてきた住宅用の小口生コン需要にスピーディーに対応する試みです」

世界一のエンジンドローン開発を目指して組んだ荒瀬国男氏(右)と。500ccエンジン搭載の産業用ドローン『AZ-500』のデビューフライトを2021年10月実施。

業界に衝撃を与えた『ウップス』の登場だったが、稼働から約1年後に建築基準法が改正。ウップスによるコンクリート製造は違法という扱いになってしまった。

「古い業界からの妨害も受けました。でも、法律は守らなければならない。断腸の思いで、ウップスの稼働を一時停止しました。それでも、住宅業界の方々を中心に『規制に負けないでください』『ウップスこそ、まさに私たちが求めているシステムです』との声を多くいただいた。稼働停止から1年半後、ウップスは国土交通大臣認定を取得し、再稼働できたのです」

コンクリート3Dプリンターで建設したグランピング施設(北海道新冠町)

コンクリートの可能性を広げる

ウップスだけに留まらず、その後もコンクリートの可能性を広げる新しい事業への挑戦を続けた。そのひとつが、オランダ・デルフト工科大学との共同研究で生まれた「バジリスク」。コンクリートの中に生きたバクテリアを封じ込め、経年変化によりコンクリートにひび割れが入った時に、そのバクテリアがひびを自己修復するという。にわかには信じがたいが、現代の技術ではコンクリートは自己治癒が可能なのだ。

「ウップスはコンクリートに黎明期のインターネットを掛け算して生み出した新しい経営モデル。これに対し、バジリスクはコンクリートにバイオテクノロジーを掛け算して生まれたものです。コンクリートにテックを掛け算してコンクリートの新たな価値創造をする、これが当社の骨太の戦略になりました。バジリスクは建築土木系の専門誌や新聞、テレビのニュースなどをはじめ、ニューズウィーク国際版など世界のメディアでも報じられました。今や、自己治癒型マテリアルの代表選手として広く認識されつつあります。勝手に治るのですから、買い替え需要は大きく削減できます。地球全体で取り組む二酸化炭素削減にも大きく貢献できると感じています」

會澤氏の掛け算の対象は3Dプリンターやエンジンドローンにまで及んでいる。

「100キロのペイロードを持ち5時間以上連続航行できる世界一のエンジンドローン開発を目指し、スズキで隼のエンジンを開発した荒瀬国男と会社を興しました。アームロボットを使ってコンクリートのインクを型枠なしで3次元造形する技術をドローンと組み合わせ、空のうえで展開する構想です。つまり空飛ぶコンクリート3Dプリンター。エンジンドローンが燃料とコンクリートを積んで飛び立ち、高所の建築現場で自動的に3D打設を行う。これが実現できれば、建設業界は根本的に変わります」

保守的、閉鎖的というイメージが抱かれやすい老舗企業。だが、會澤高圧コンクリートはテクノロジーの力をテコに急激な自己変革を続ける。老舗だって、イノベーションに挑めるのだ。

會澤高圧コンクリートの守り神

「先祖が誰か一人でも欠けたら自分は存在しない。先祖から受け継いだものをつないでいくことにこそ真の幸福が宿る」という祖霊崇拝の心を大切にする會澤氏。

會澤家は806(大同元)年開基の常陸国・西金砂神社の氏子筆頭として72年に一度執行される大祭礼(茨城県指定文化財)を支えてきた家柄。

創業80周年(2015年)の際には、常陸国から北海道に渡って會澤高圧コンクリートを創業した會澤芳之介を顕彰するために、西金砂神社の御霊と會澤家の屋敷内に江戸期からある氏神社の御霊をそれぞれ分霊し、北山王金砂神社を創設。現在は会社の守り神ともいえる存在になっているという。

※掲載内容は2022年6月21日現在の情報となります。

コンクリート業界の革命児が挑む 老舗イノベーション

會澤 祥弘

出版社名:幻冬舎メディアコンサルティング
発行年月:2021年10月29日

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