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2022.04.27

【鳥羽周作】僕らの活動が次の時代の「定番」や「文化」になり、100年続くような食のかたちを目指したい──新刊『本日も、満席御礼。』

TV、書籍、YouTube、SNSなどでレシピを公開し、レストランの枠を超えて「おいしい」を届けている、鳥羽周作シェフの書籍『本日も、満席御礼。』が発売となった。プロサッカー選手になることを諦め先生になり、その後、料理の世界へとギアを変更。31歳で料理の世界へ。数多くの苦境や挫折を乗り越え、一つ星を獲得するスターシェフへ登りつめた、最注目シェフ兼実業家による人生哲学。今回、特別に『本日も、満席御礼。』を抜粋・編集して一部公開!

「本日も、満席御礼。」

食に対する「ものさし」の精度を上げる

僕が世の中に対してやりたいのは、みんなの「おいしい」の精度を上げることです。世の中の「食の基準値」を上げたい。

これから僕はファストフード店の商品開発に携わったり、アレンジレシピを公開したりして、おいしさの基準値を上げていきます。そして「なぜ、こうするとおいしいのか?」というロジックを言葉にして発信していきます。それによってみんなの食のリテラシーが上がるといいなと思っています。

たとえば松屋の牛めしの玉ねぎは、ちょっと厚めに切ってあって火入れもあまくしてあります。だから、牛肉を食べている途中でたまにシャキシャキの玉ねぎが出てきて気持ちいいんです。もし超薄切りの玉ねぎだったら、食べるときには溶けてなくなってしまいます。

もしこういうことにみんなが気づけるようになったら「あのお店の玉ねぎは溶けちゃってるからイマイチだよね」といった判断ができるようになります。それは「批判」ではなくて、正しい「目利き」ができるようになるということです。そこがすごく大切だと思うんです。

お客さんの目が育っていくと、ファストフードもファミレスも気が抜けなくなります。切磋琢磨してレベルが上がっていく。すると、いいものがきちんと残ってそうじゃないものは淘汰されていき、世の中がちょっとハッピーになると思うんです。

僕らがつくりたいのは、新しい「基準値」です。次の時代の基準値。いまの世の中の「ふつう」を変えたいわけじゃなくて、もう一段だけ階段を上りたい。「無印良品の、ひとつ先」みたいなイメージです。その新しい「ふつう」を地道に伝えていきたいと思っています。

だからこそ「伝える場所」を増やしたいんです。新しい基準値は、うちのお店に来た人だけに伝えても広がりません。ファミレスやコンビニなど、多くの人にとって身近な場所でも伝えていきたいと思っています。

牛めしをテイクアウトするときに、ご飯とおかずがセパレートになっているだけでも、おいしさは一段上がります。それをすでにやっているのが松屋です。セパレートにすることで、持ち帰って家で食べるときにタレがご飯に染みすぎない。よりおいしい状態で食べてほしい、という意図が見えます。こうした細かい部分までこだわっているところが本当にすばらしい。でもまだまだそのすばらしさは伝わっていません。そこを僕らがきちんと伝えることで、すべての牛丼屋で「テイクアウトのときはご飯と牛皿を別にしよう」という流れになったらいいな、と思っています。

新しい「ふつう」が定着して「定番」になっていけば最高です。定番というのは、次の世代に残っていくような、本質的なものです。定番がなじんでいくと、それは文化になっていきます。

たとえばカルピスは100年以上続いています。最初は珍しいものだったかもしれませんが、いまでは食卓になじんでいて、認知度もほぼ100%です。これは、まさにカルピスというものが100年かけて、みんなの「定番」になったということ。その結果、食卓の「文化」になったわけです。

「シズる」が、商品を開発したりレストランを運営したりして、食の世界を少しずつ変えていく。それが次の時代の「定番」になり、いずれは「文化」になっていってほしい。僕が死んでも100年続くような食のかたちを目指したいのです。

──鳥羽周作シェフの人生哲学が詰まった『本日も、満席御礼。』のご購入はこちら

 

「本日も、満席御礼。」

『本日も、満席御礼。』
幻冬舎 刊/¥1,500+税
なぜ、鳥羽の店は常に満席なのか? 鳥羽は言う。「ぼくは(食の世界に)選ばれた人間だと思う。待遇があまり良くないと言われる食の世界を変えていきたい。食を通じて、愛を配り続けます。プロと一流の違いは愛の濃さだと思うんです。お客さんへの愛、クライアントへの愛、愛があれば、最高の想像力が生まれるし、プラス最高の技術で仕事をすれば、それが人に幸福をもたらす。もう、そこの差しかない」。2022年4⽉27⽇発売

PHOTOGRAPH=正田真弘(M+W)

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