ビジネスの最前線で闘うリーダーやスペシャルな人の傍らには、仕事に活力を与え、心身を癒やす、大切な愛用品の存在がある。それらは、単なる嗜好品にとどまらず、新たなアイデアの源となり、自らを次のステージへと引き上げてくれる、最強の相棒=Buddyでもあるのだ。今回紹介するのは、マイムアーティスト・が〜まるちょばの相棒、ハーレー・ダビッドソン V-ROD Custom。特集「最強の相棒」
五感を研ぎ澄ませるひとりだけの時間
ドコドコと低音をかき鳴らす1台のモーターサイクルが近づいてくる。今や世界的マイムアーティストと評しても、まったく大げさではないが~まるちょば氏だ。自身が創作を手がけた昨夏の東京五輪開会式でのピクトグラムパフォーマンスは記憶に新しい。ロック、革ジャンをこよなく愛すが~まるちょば氏にとって、日常のアシであり、ひとりになれる空間かつ五感を研ぎ澄ましてくれる最高の鉄馬。それが、ハーレー・ダビッドソン V-RODだ。
「バイクは子供の頃から好きで、ヤマハのパッソーラに始まり(笑)、ヤマハRZ、ホンダMVX、スズキKATANA、カワサキGPzなど、いろいろ乗ってきました。今みたいに教習所に通えば誰でも大型二輪免許が取れる時代じゃなかった」
当時、一般的には20、30回落ちるのが当たり前の一発試験をわずか2回目で合格。
「人生でガッツポーズをする機会なんてないけど、さすがに出ましたよねガッツポーズ(笑)」
「必要性のないものを必要とする」という矛盾
だがある時、が~まるちょば氏はやっとの思いで手に入れた大型二輪を降りた。
「パントマイムで生きていくと決めて家を出てからは……やっぱりお金がなくてね。生きるために、仕方なく売ってしまった」
それから幾星霜(いくせいそう)。プロのマイムアーティストに、それも世界的な演者となったが~まるちょば氏が、再びバイクという相棒、ハーレー・ダビッドソンV-RODを手に入れたのは、今から12年前のことだった。
「ある尊敬するアーティストが公演に駆けつけてくれて。楽屋にヘルメットを持ってきていたので話しかけると、『君も乗ってるの?』って。その時、頭を殴られたような気がして。僕が20代の頃、バイト先のガソリンスタンドで愛車を磨いていた時に『僕も同じのに昔乗ってたんだよ』と声をかけられて。『今乗ってなかったら意味ないじゃん』──そう、内心ずっと思っていたのを走馬灯のように思いだして。慌てて次の日に買いに走った」
20代の頃にパントマイムをやろうと、少なくともこの道を必ずまっとうしようと決意。
「せっかく生きるなら、存在を知ってもらって、多くの人のなかで生きられたらいいなって。そして今、おかげさまでマイムアーティストとして食わせてもらってるのですが……仕事って、どれだけ多くの人の役に立てるか? ということ。だから今、自分がコイツに乗れているのもパントマイムというものを通じて多くの人の心に生きて、役に立てているんだな、と」
自分は、“エンタテインメント”を仕事にしているが、だが同時にそれは人間の心にとっては絶対に必要なものでもあると言う。
「このハーレーも同じ。バイクがなくたって死にはしないし、支えないと倒れちゃうんですよコイツ(笑)。でも……必要性のないものを必要とするという無駄というか矛盾こそが、人生を豊かにするんじゃないかな」