「僕にとって仕事は、人生において最優先にすべきもの」
冷静さの奥に狂気を秘めた自殺サイトの管理者、明るく爽やかな菓子職人、イジられキャラの高校生……。映画やドラマ、舞台で、さまざまな表情を見せる実力派若手俳優、高杉真宙。9月に放送終了した主演ドラマ、『ホメられたい僕の妄想ごはん』では、週末はバンド活動に勤しむ、不器用なサラリーマンを好演。役のために、料理や楽器の演奏も猛練習して臨んだ。
「どちらも初めての経験だったので、初めは戸惑いました。特にベース!楽器を演奏したことがないうえに、楽譜が読めないし、リズム感もなくて(苦笑)。だから、とにかく練習あるのみ。以前、舞台(2018年上演の劇団☆新感線の『メタルマクベス』)で歌とダンスに初挑戦した時も、繰り返し曲を聴いて耳で覚え、『何秒後にこの音』みたいなやり方で乗り切ったんですよ。僕、根性だけはあるので」
高杉真宙本人は未経験、苦手なことでも、役として必要ならば、全身全霊をかけて取り組む。
「役になりきるのが俳優の仕事ですから、当然のことです。それに僕は、自分が何もできないことを自覚しています。だから、頑張るのは当たり前だし、うまくいかないからといって凹むこともない。基本ポジティブなので、どんなに辛くても、ひと晩寝たら忘れちゃいますしね(笑)」
甘いマスクとは裏腹に、精神はタフ。俳優という職業に真摯に向き合っている高杉だが、この世界に入ったのは、「12歳でスカウトされ、なんとなく」と、明かす。子供の頃は、テレビで観るのはアニメばかりだったため、俳優という職業の存在は知っていても、具体的に何をするのかわからなかったそうだ。
「やってみたら楽しかったし、真剣に取り組んでいるつもりでした。ただ、当時中学生だったこともあって、正直、仕事というより部活に近い感覚だった気がします。変わったのは、17歳の時に主演した映画『ぼんとリンちゃん』から。撮影前に3ヵ月ほど準備期間があったんですが、役の背景やセリフに秘められた想いなどいろいろ考えるようになり、役作りの面白さに目覚めたんです。そこからですね、俳優が僕にとって“やりたい仕事”になったのは。今は、台本を読みこんで、自分の役をひとつずつ積み重ねていく作業がすごく好き。その結果、素晴らしい作品ができあがれば嬉しいですね」
順調にキャリアを重ねるなかで、新たな欲も出てきた。
「ひとつひとつの作品にもっと深く携わっていきたいという気持ちが強くなったんです。いろいろと違う側面からチャレンジをしたいと思うようになり、今年4月、長年お世話になっていた事務所を離れ、独立しました。会社を興すって、やっぱり大変ですね。甘えられる場所、守ってくれる場所を手放すことですから。でも、やりたいことを実現させるために選んだ道なのでやるしかないです」
仕事とは、「人生において最優先にすべきもの」と言う高杉。
「俳優は、自分が商品という特殊な職業。高杉真宙というプロジェクトに取り組んでいるという感じです。だから、仕事人間であるべきだと思っています。ただ、ベースは、『楽しいからやっている』。それがなければ、テンションが上がりませんし、パフォーマンスも変わってきますから」
初のフォトエッセイ『僕の一部。』では執筆に挑戦し、アニメ『RE-MAIN』で声優を務め、10月スタートの火曜ドラマ『婚姻届に判を捺(お)しただけですが』では、ヒロインに片思いの獣医を熱演。独立を機に、さらなる高みを目指す“仕事人間”、高杉真宙から今後も目が離せない。
『婚姻届に判を捺しただけですが』
原作:有生青春「婚姻届に判を捺しただけですが」(祥伝社刊)
主題歌:あいみょん「ハート」
出演:清野菜名、坂口健太郎、倉科カナ、高杉真宙ほか
TBS系毎週火曜22:00~22:57。
おひとり様ライフを満喫するデザイナー、大加戸明葉(清野菜名)が、ひょんなことから、堅物・変人のサラリーマン、百瀬柊(坂口健太郎)と偽装結婚をし、共同生活をスタート。そこに、明葉を気にかけてちょっかいを出す牧原唯斗(高杉真宙)が加わって……。結婚や夫婦について考えさせられる、“ふいキュン”ラブコメディー。