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2021.05.20

井村雅代HCの覚悟「1%でも開催の可能性があるなら最高の準備を」

本連載「コロナ禍のアスリート」では、まだまだ先行きが見えないなかで、東京五輪メダルを目指すアスリートの思考や、大会開催に向けての舞台裏を追う。

(左から)吉田萌、井村雅代HC、乾友紀子

ワクチン歓迎も一部ネット上では批難の声

アーティステックスイミング(AS)東京五輪日本代表の井村雅代ヘッドコーチ(70、以下井村HC)が、今月7~9日に大阪府東和薬品ラクタブドームで開催された日本選手権中、五輪選手団へのワクチン接種について率直な思いを口にした。

「接種したい。一日も早く接種したいのが本音」と歓迎。「賛否両論があるのは分かっているが、五輪で競うことはアスリートの夢でありゴール」と理解を求め「ワクチン提供のニュースを聞いて、五輪開催が近づいた感じがしてうれしい気持ちがした」と喜んだ。コロナ禍の五輪開催に関して様々な意見があることは理解している。その上で、あえて”本音”を口にした。

国際オリンピック委員会(IOC)は今月6日、東京五輪・パラリンピックに参加する各国・地域の選手団に、米製薬大手ファイザー社と独製薬企業ビオンテック社が共同開発した新型コロナウイルスワクチンを提供することを発表した。

日本にも提供され、7月23日の五輪開会式までに全選手が2度の接種を終えることが可能となる。日本に関しては政府がファイザー社と契約しているワクチン枠とは別。日本選手団は選手1000人程度、監督・コーチ1500人程度が対象になる見通しだ。

国内では高齢者を対象としたワクチン接種がスタートしたばかり。五輪関係者への優遇措置ともいえる優先提供には「不平等」の声がつきまとう。多くの選手、コーチが戸惑いや複雑な心境を口にする中、歓迎の意思を明確にした井村HCの発言はクローズアップされ、一部インターネット上では批判もされた。

無観客で開催された日本選手権には東京五輪代表のチーム(乾、吉田、福村、安永、塚本、京極、木島、柳沢)とデュエットの乾友紀子(30=井村ク)吉田萌(25=ザ・クラブピア)組がオープン参加し、上々の演技を披露。東京五輪でのメダル獲得へ、順調な調整を印象づけた。

井村HCは中国代表を指揮した2008北京五輪、’12年ロンドン五輪を含め9大会連続で五輪メダルを獲得。ASを知り尽くすが、’16リオデジャネイロ五輪以降は世界の変化に頭を悩ませてきた。ロシアやウクライナなどの強豪国が身長180cm近い選手を揃えて大型化。繊細さよりもパワー、スピードが重視される傾向が強まっていた。

日本も大型化を図り、多少の技術には目をつぶり170cm近い選手を揃えたが、’19年世界選手権でチームは4位。優勝したロシア、2位中国、3位ウクライナに水をあけられた。採点競技の特性もあり、一度ついた格付けを覆すのが難しい競技。巻き返しに向け、プログラムの難易度を上げることに挑んだ。

週3回、空手道場に通う徹底ぶり

テーマはフリールーティンが「祭り」で、テクニカルーティンが「空手」。「祭り」は冒頭の高いリフトを皮切りに途切れることなく見せ場が続く。一瞬も気を抜けない集中力と体力が要求される演目。「空手」は切れ味鋭い動きと、連続する多彩な脚技が魅力だ。

代表チームはテーマ決定から約2カ月間、週3回程度のペースで空手道場に通い、形を習得。その後もプールサイドで道着を身にまとい正拳突きを繰り返すなど稽古を継続してきた。’19年夏には阿波踊りに参加して、演舞台での踊りも経験。祭りの熱を体感することでイメージの共有を図った。

選手の大型化にも磨きをかけた。練習拠点の東京北区ナショナルトレーニングセンター(NTC)のプールサイドには筋力トレーニングの器具が揃い、選手は肉体改造に取り組んでいる。4月にはロシアに遠征して、約1年8ヵ月ぶりに国際大会に出場。井村HCは「むちゃくちゃ鍛えてきたので、体がごつくなって海外選手にも見劣りしなかった」と手応えを口にする。

妥協せずに練習に励む選手を間近で見続けてきたからこそ、五輪中止に傾く世論を簡単に受け入れることはできない。

「選手には1%でも開催の可能性があるなら、最高の準備をしようと言い続けている」。

本気だからこそ、建前はいらない。ワクチン接種歓迎の意思は、メダルに向けて突き進む覚悟のように映った。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=西村尚己/アフロスポーツ

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