スポーツ界の開拓者
新しい応援のカタチ。スポーツギフティングサービス、アンリムが存在感を増している。サービス開始は昨年2月。ファンがサービスをとおしてアスリートフラッグ財団に寄付することで、登録選手、チームに応援ポイントを贈ることができ、そのポイントを基に寄付金の67〜83%が支援金となる。提携するメディアが配信する記事や、アスリートがアップしたSNSなどに添付されたURLから寄付画面に進む仕組みだ。支援する側は10円から寄付が可能で、SNSでシェアして寄付の輪を広げるサポートもできる。支援される側にとっては、購入型のクラウドファンディングなどと比べて分配率が高く、使途が自由な魅力がある。
サービスを提供する一般財団法人アスリートフラッグ財団の代表理事を務めるのはBリーグチェアマンの島田慎二氏。B1所属クラブ千葉ジェッツ会長時代の2019年に資本提携していたミクシィ社が同財団を設立した経緯から白羽の矢が立った。コロナ禍で閉塞感が漂う世の中で、アスリートの持つ可能性の大きさを実感する日々を送るが、アンリム拡大の旗振り役として「スポーツの力」の上にあぐらをかくことはない。
「スポーツの価値、スポーツの持つ力に疑いの余地はないが、スポーツ界にいる人間がスポーツの価値に溺れてしまうと本質を見失ってしまいます。価値に溺れず、よいものを追求することが重要。よいマーケティングをして、よい商品を売るのはどの商いも同じです」
冷静な視点は異例の経歴で培われた。学生時代には芝居を志し、欽ちゃん劇団に所属。萩本欽一から言われた「眠くなってからが勝負。眠くなっても寝るな」の言葉は今でも鮮明に覚えている。大学卒業後は旅行会社に就職し、3年後に独立。’10年に自身の設立した旅行会社を売却し、セミリタイアした。39〜41歳の2年半で約40ヵ国を放浪。ローマで強盗に襲われて命の危険を感じ、ラオスでは少数民族の生活に接した。
「セミリタイアして感じたことは、早い段階でセミリタイアしたら飽きるということ。人生100年と言われるなかで、あと60年何をするのか、と。飽きてきた時にジェッツから声をかけていただきました。積極的にスポーツ界で仕事をしたかったわけではありません。『困っているので助けてほしい』と頼まれたからやりました」
’12年に経営難に陥っていた千葉ジェッツにコンサルタントとして関わり、わずか3ヵ月後に社長に就いた。クラブの現状を把握して原理原則に基づいた判断を徹底。選手と一定の距離を保ちつつ、悩んでいる時は親身に話を聞き、経営者の視点で助言を送った。チームを再建し、屈指の強豪に押し上げた実績を買われて昨年7月にBリーグのチェアマンに就任。コロナ禍で観客の収容数が制限されるなか、厳しい舵取りを任されている。
「目の前の仕事を一所懸命やった結果として今がある。自分の強みは絶対にやり抜くメンタル。ゴールを設定したら一直線に進む、押してだめなら引いてみる。最終的には何とかなる運も持ち合わせていると思います」
寄付文化創出への挑戦、目の前のことを全力で
アンリム立ち上げの背景には日本のスポーツ界が抱える問題がある。アマチュアだけでなくプロ競技も含めた大半の選手は活動費の経済的負担が重く、アルバイト等を強いられて競技に専念できない現状がある。さらに競技外での自らの価値を高めるため、メディア露出やファンとの交流を増やすことを模索している選手も多い。その解決策になるべく、サービスを始動した。開始時の登録アスリート、チーム数は34だったが、現在は130を超える。東京ヤクルトスワローズやFC東京、スキージャンプの高梨沙羅選手、女子ゴルフの勝みなみ選手らプロクラブやメジャー選手だけでなく、五輪新種目のBMXやサーフィン、パラ馬術、東京六大学野球など幅広いアスリート、団体が名を連ねる。
SNSで積極的にプロモーションする選手もいるが、提携メディアをとおして寄付を集められるため、アスリートの負担は少ない。女子野球の山崎まり選手は練習会場の使用料に使い、サーフィンの須田那月選手はサーフボードを購入。アイスダンスの西山真瑚選手が都内のスケートリンクを貸し切って子供たちと一緒に練習するなど競技に還元される循環も生まれている。
「メジャーな選手もそうでない選手も幅広くダイレクトにサポートできる仕組みです。大きなチームや企業に守られていない選手は世の中にごまんといる。日本は災害に対する寄付文化はありますが、何かに挑戦している人に対する寄付文化はない。その創出に挑戦したい。たった一度の人生、悔いなく生きたい」
スポーツ界での寄付文化定着へ、挑戦は続く。
少ない負担で継続的に支援を受けられる
ファンは提携メディアが配信する記事や、選手のSNSなどに添付されたURLから寄付画面に進む。現在の寄付単価の1回平均は3,000~4,000円。支援金の受け取り方は3ヵ月に1回と、現役引退時に一括の2種類ある。
提携メディアの記事がプロモーションの役割を果たすため、選手の負担は少ない。LINEをとおしてファンの応援メッセージを受け取ることができる。支援側はコンテンツをシェアして寄付の輪を広げるサポートも可能。女子プロゴルファーの勝みなみ選手は「応援してくださる方の気持ちや熱意を感じ、さらに向上したいと思うことができました」と強調する。
スポーツギフティングサービス「アンリム」について詳しくはこちら。
Policy of SHIMADA
01. アスリートとは適度な距離をとる
02. 困っている時は徹底的に話を聞く
03. 大局観を持ち原理原則に従う