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2021.04.12

福岡ソフトバンクホークス4年連続日本一達成にひと役買った最先端システムとは?

ライブリッツ

ITがスポーツ産業の発展を加速させる

近年のIT化の波はスポーツ界も例外ではない。その代表的なものとして挙げられるのが、プロ野球界だろう。ここ数年、球場に設置された機器で投球の回転数や回転軸、打球の角度や飛距離を測定したり、高解像度カメラで撮った画像をベースに、投球・打撃・守備・走塁動作をデータ化・分析するシステムが普及。可視化できる情報が格段に増えた。こうした科学的データを基に、チームを勝利に導くためのシステムを提案・構築しているのが、村澤清彰氏率いるライブリッツだ。福岡ソフトバンクホークスも同社のシステムを活用しているというから、同チームの4年連続日本一にひと役買っているのは間違いない。

「私が初めて野球チームのシステム開発を手がけたのは、親会社のフューチャーでITコンサルタントをしていた2012年のことでした。ちょうど、アメリカのメジャーリーグでITを利用したデータ分析が普及し、日本でも注目が集まっていた時期です」

『アストロボール』

村澤氏のデスクにはスポーツデータ関連の書籍がずらり。なかにはデータ活用で世界一を成し遂げたアストロズの軌跡を描いた『アストロボール』も。

それを日本でいち早く取り入れようとした、とある球団から「データを用いた戦略システムを、自分たちのニーズに合わせて構築してほしい」という依頼があったのだ。

「野球少年で、社会人になってからも会社のチームに所属するほど野球が好きなので、非常にやりがいがありましたね。ITを活用することで、スポーツはもっと面白くなるし、チームや選手はもっと強くなれる。このシステム開発を通して、それを実感しました」

サポートしているチームの優勝記念のアイテムや限定グッズ

オフィスのあちらこちらに、サポートしているチームの優勝記念のアイテムや限定グッズなどが並ぶ。まさに“スポーツ界を支える裏方”ならでは!

これを機に、村澤氏は他の球団も手がけるようになり、’14年には社内にスポーツ事業部を新設し、他競技にも進出するまでに。事業は順調に拡大し、’17年、フューチャーのグループ会社に事業部を移して社長に就任。スポーツのIT化に特化したライブリッツが誕生した。

データに基づいた戦略が強いチームをつくる

ライブリッツがメインにしている事業のひとつが、映像解析やデータ分析をベースにした「チームに勝利をもたらす戦略システムの構築」である。

「昔から、球団には試合経過などを記録・測定するスコアラーがおり、選手のデータを集めてはいました。選手の走行を例にとると、ストップウォッチで走行時間を計測し、タイムを記録し、過去の記録などと照らし合わせて分析するといった流れです。これでは、1プレイごとに計測できるのはひとりの選手だけですし、分析するまでに、かなり時間がかかってしまいます。それをIT化すれば、選手ごとに走行時間や移動距離が測れる。記録や分析も即座に、しかも正確にできるようになるのです」

IT化により試合で収集できるデータの種類も数が増えたのに加え、現在は、ほとんどの球団が、各選手のトレーニング内容やコンディショニングに関するデータもとっているという。

AIやIoTなどの最新技術がスポーツを盛り上げる! ライブリッツが掲げるミッションは

ライブリッツが掲げるミッションは、AIやIoTなどの最新技術を駆使し、チームの勝利とビジネスの勝利、双方をバックアップすること。プロ野球以外のスポーツでの展開も進んでいる。

「当社では、提携する各球団のニーズに応じて、膨大なデータを包括的に活用するシステムを開発しています。なかでも、IT化が進んでいるのが、フューチャー時代からお付き合いが続いている福岡ソフトバンクホークス。以前はスコアラーやスカウトだけが持っていたデータを、選手やコーチがモバイルアプリで見られるようにしたのですが、多くの選手に利用いただいているようです。対戦相手の映像とデータをチェックしたり、自分のプレイを振り返ったり。左打者との対戦だけの映像とデータ集なども瞬時に出るので、利便性が高いのでしょう」

また、試合に関するデータにトレーニングやコンディションのデータを組み合わせた分析も、“勝利をもたらす”効果が大きい。三振を取った時のボールの回転数はどのくらいで、前日の練習はどんなことをし、コンディションはどうだったのか。そのデータを組み合わせることで、「三振を取れる状況」が数値化。「なぜか身体のキレがよかった」などと、感覚や勘といったあいまいな基準に頼るよりも、ベストパフォーマンスが出せる確率が上がるのは、想像に難くない。

「学生時代にこうした科学的なサポートがあれば、どんなによかったか(笑)。今は費用の問題もあって難しいですが、近い将来、育成年代でもデータが活用されることを期待しています。実は当社でも、アマチュアチーム向けの強化サービス『キューステ!』内で、ミズノ製の野球ボール回転解析システム『MA-Q』データを取りこみ、投球を解析する機能を提供しています。こうしたサービスを利用いただき、データ活用が普及すれば嬉しいですね」

IT化を進めることでチームの収益もアップ

ライブリッツのもうひとつの主力事業が、データに基づいたコスト削減や売り上げ拡大、ファンの満足度向上、新規ファンの獲得といった「チーム運営を強化するシステムづくり」だ。2年前からは、読売巨人軍のファンクラブ・ECサイトの構築にも関わっている。サイトをリニューアルし、デジタルマーケティングなどを活用した結果、1年でファンクラブの会員数が急伸し、EC売り上げもアップ。上々の滑りだしを見せている。

「ITは、人の作業の代わりではなく、人では成し得なかったことを実現するためのもの。これからも、最新技術を駆使し、お客様の期待や想像を超えるような高い品質の“作品”を提供し、スポーツ界をバックアップしたいと思います」

 

福岡ソフトバンクホークスを勝利に導く選手育成システム

チームの強化から試合スケジュールまで包括サポート
「もともとシステムエンジニアだったので、理想とするグランドデザインがありました。それを理解し、設計・開発してくれたのが村澤さん。システムの導入によって、手作業が減り、分析に時間をかけられるようになりましたし、ボタンひとつで、さまざまなデータをチェックできるようになったので多角的な分析も可能になりました。コーチやトレーナー、選手でデータを共有することによって、課題や目標への共通認識ができたのも、チーム強化に役立っていると思います。また、プレイに関するデータだけでなく、スケジュールや先発ローテーションなどの管理も、チーム専用アプリで行っていて、各自好きな時にチェックできるためか、情報共有が徹底されるようになりました」

対戦相手を画像とデータで事前に研究

対戦相手を画像とデータ

チーム専用アプリでは、クリックひとつで、さまざまなデータが瞬時に出るように。

例えば自分が左打者なら、対戦ピッチャーの過去の左打者との対戦シーンを映像とともに記録を呼びだし、制球やボールスピードなどのチェックが可能だ。「アプリの利用は選手に任せています。ただログを見ると、トップ選手ほど活用しているようです」(関本氏)

自分のプレイ映像集で自身の傾向を分析

映像集で自身の傾向を分析

選手の利用頻度が高いのが自分のプレイ集。

どういった球種や球速、ボールの軌道の時に、どんなバッティングをしたか。結果がよかった時と悪かった時を比較することも可能だ。「次の試合の先発が右投手であれば、試合前日に、右投手と対戦したプレイ集をチェックするといったことができます。すきま時間に利用できる点も、選手に好評です」(関本氏)

関本 塁

福岡ソフトバンクホークス データ分析チーム 関本 塁

 

データの一元管理で読売巨人軍ファンを活性化

システムの再構築でファンとチームの架け橋に
「球団基幹事業(EC、ファンクラブ、アカデミー)のシステムを一元管理することで、ユーザーにとって快適な環境を提供したい。それを出発点に、サイトのリニューアルをライブリッツに依頼しました。それまでは、年齢や性別といったデモグラフィックデータでユーザーを捉えていたのですが、行動や購買データをかけあわせることで、ユーザーの実態が明確になり、ニーズをより正確に理解できるようになったと思います。おかげさまで、リニューアルした翌年の’20年度は、EC売り上げ、ファンクラブ会員数の前年比伸び率が12球団トップになるなど、順調なスタートを切ることができました。今後も改善を重ねて魅力的なサービスを提供し、愛されるチームづくりを目指します」

ファンクラブ、アカデミー、EC会員などのIDを統一

『GIANTS ID』

サイトのリニューアル前は、ファンクラブ、アカデミースクール、オンラインショップのそれぞれが別々に顧客管理を行っていた。「ユーザーにとって快適な環境をつくるために、それを『GIANTS ID』として統一しました」(青木氏)。その改善によって、大幅にユーザビリティが向上した。

WEBゲームでサイトのアクセス数が増加

トリプルヒーローゲーム

会員マイページへのアクセス数を増やす秘策として、ライブリッツと相談し導入を決めたのが、誰でも気軽に参加できる「トリプルヒーローゲーム」。

活躍する3選手を試合前に予測、試合開始後はAIがリアルタイムで選手を評価。予測が的中するとポイントが加算される。「モニタリングでは、まず、トリプルヒーローゲームにエントリーして、ECサイトへと遷移、チケット購入、最新ニュースをチェック……というように、ゲームがきっかけになり、各種アクションにつながっていることが判明しました。ゲーム参加率はまだまだ高められると考えていますので、認知を広げるほか、ゲーム内容をさらにブラッシュアップすることも検討していきたいです」(青木氏)

青木丈典

読売巨人軍 ブランドコミュニケーション部 青木丈典

 

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02. 生涯現役エンジニアとして、自ら発案し、推進

03. お客様やユーザーの期待や想像を超える未来を創る

 

Kiyoaki Murasawa

Kiyoaki Murasawa
1976年大阪府生まれ。2001年京都大学大学院工学研究科精密工学修了後、フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャー)入社。’14年にスポーツ事業部を立ち上げ、’17年より現職。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=太田隆生

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