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2021.03.24

星野リゾート星野佳路、UUUM鎌田和樹に学ぶ、時代の変化への対応力

2011年、ゲーテが創刊5周年を記念しシーバスリーガルとともに創設した「シーバスリーガルゴールドシグネチャー・アワード」。現在もさらなる活躍を続けている受賞者たち。そのなかから第1回と昨年第10回の新旧受賞者おふたりに受賞を振りかえりながら、時代の変化とコロナ禍の今を語ってもらった。

星野リゾート代表 星野佳路氏 (2011年受賞) 「経営力は経験のブレンドによって培われる」

記念すべき1回目の受賞から10年。星野リゾートにとって大きく進化した時期であり、困難から始まった10年でもありました。この賞をいただいた2ヵ月後に起こったのが東日本大震災。当時は日本全体の旅行需要が一時期完全に失われ、大変苦しい時期でした。東北には経営していた施設も多く、まさに“再”再生するつもりで歩んできました。同時に、それまでの再生事業から、「星のや東京」など新築案件へと切り替えることができたのもこの時期です。日本初の観光に特化した不動産投資信託(リート)を立ち上げたことを転機に、新築案件のリスクも収益を出せばリートに組みこむことができるサイクルをつくり、大きな一歩を踏みだせるようになりました。さらに台湾、バリ、ハワイなどの海外進出や、「OMO」「BEB」というサブブランド展開も始めました。

シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード

ゲーテ創刊5周年を記念して創設された「シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード」。審査委員長に村上龍氏を迎え、星野氏とともに楽天の三木谷浩史氏が表彰された。

振り返ると大きな変化ばかりに見えますが、私にとってこの10年は、星野リゾートの成長期に向けて大胆に行動できる体力がやっとついたという感覚です。軽井沢から始まり、再生案件をひとつひとつ成功させ、運営会社としての実力を認めていただいた。そうやってつけた体力があったからこそ、星野リゾートが本来やるべきことに乗りだすことができた時代だと感じています。コロナ禍ではもちろん打撃を受けましたが、乗り越えるための18ヵ月計画を発表し、国内の「マイクロツーリズム」促進などで、昨年秋には例年どおりの収益に戻すことができました。

実は私の人生で「1のつく年は大事件が起こる」というのが定説なんです(笑)。1991年は問題山積のなかで社長に就任。2001年は初めての再生案件であるリゾナーレ八ヶ岳に取り組んだ年。これが順調にいかなければ、今の星野リゾートはなかったでしょう。’11年は東日本大震災。’21年は1年前倒しでコロナがやってきたので、さらにもっと大変なことが起こるのか、とドキドキしています(笑)。しかしこれまで学んだ経営の理論や知識に、そういった経験がブレンドされてこそ、自分の経営力に大きな影響を与えていることは事実です。コロナもいつか人類が経験しなくてはいけないことならば、さまざまな経験がブレンドされ経営理論を使いこなすことができる今で、きっとよかったんだと思っています。

Yoshiharu Hoshino

Yoshiharu Hoshino
1960年長野県生まれ。’83年慶應義塾大学卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。’91年星野温泉(現:星野リゾート)社長就任。「星のや」、「界」、「リゾナーレ」、「OMO」、「BEB」の5ブランドを中心に国内外で46の施設を運営する。

 

UUUM代表取締役社長CEO 鎌田和樹氏 (2020年受賞) 「物事を決めた回数だけ人は成長する」

1年前の受賞のことは、すごくよく覚えています。実は当日1月14日は、UUUMの第2四半期の決算発表をした日。当時の業績が、世間の期待値を超えていなかったため、多くのご批判をいただきました。そんな時にいただいた賞だったので、自分にとって忘れもしない1日になっています。

この1年、コロナの影響で大多数の方がその歩みを止められました。でも立ち止まることで、目先の問題解決に追われるのではなく、長期目線で物事を捉える時間ができました。これからのUUUMのマイルストーンを決める、よい機会になったと思います。実際にはイベントや撮影が制限されたりと大きな影響も受けました。でも逆に、コロナが加速させた社会のデジタル化は、YouTubeや、僕たちが手がけるオンラインビジネスの追い風にもなっていると感じています。

2020年は10回目という節目の年

2020年は10回目という節目の年。鎌田氏とともにアカツキ創業者・代表取締役CEOの塩田元規氏とGEN Japan代表取締役CEOの齋藤由佳子氏が選ばれた。

どんな事態においても経営者は成功に向かって走らなきゃいけない。決断すべきこともどんどん増え、内容も重くなっていく。でも僕は「物事を決めた回数だけ人は成長する」と思っているんです。惰性で生きていては成長などあり得ない。さらに言えば、80点の答えを出すくらいなら、厳しくても120点の答えを出さなきゃいけない環境に敢えて身を置き、ちゃんと向き合い後悔しない決断をするべきだと思います。そういう意味では、この2020年はUUUM、そして僕のビジネス人生においても、過去最大級のターニングポイントだったと感じているんです。

しかし環境が変わっても、僕が大切にしている"好き"を仕事のモチベーションにすること、そして「もっとアソビナカマを」という経営戦略は変わりません。クリエイター、ユーザー、クライアント、社員の4つのアソビナカマがバランスよくブレンドされて、混ざるというより個々がともに大きくなっていく、それがUUUMの目指す形です。昨年を経て、UUUMがやるべきこともいろいろ見えてきています。まだ言えないことも多いですが(笑)。

あの受賞の日が大きなターニングポイントとなり、2020年は僕たちにさまざまなきっかけをくれました。いつの日か「今の自分たちは、2020年の日々があったからこそ」と必ず言えるUUUMの未来をつくっていきたいと思っています。

Kazuki Kamada

Kazuki Kamada
1983年東京都生まれ。2003年大手通信会社に入社し、携帯販売代理店の責任者に。その後HIKAKINとの運命的出会いを得て、’13年UUUMを設立。クリエイターマネージメント・サポートを中心にインフルエンサーマーケティング事業、グッズ・イベント事業、メディア事業を展開する。

 

Illustration=あべあつし

TEXT=牛丸由紀子

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