師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第54回は、実は従兄弟の起業家ふたり。
セーフィー 代表取締役社長 佐渡島隆平が語る、佐渡島庸平
子供の頃から、庸平はとにかく本を読んでいましたね。びっくりしたのは、一緒に住んでた時、学校の劇が気に入らない、と先生の用意した脚本を書き換えたことです(笑)。小6ですよ。それで講談社に入って活躍して、おいしい人生だなぁと思っていたら、独立して。聞けば、自分たちでクリエイターを直接サポートして、面白いものを届けたいという。今も覚えているのは、「漫画でノーベル賞を取りたい」という言葉。今は小説と詩だけだけれど、面白い漫画でもいいはずだ、と。すごいなぁ、と驚きました。
社会人になってからは、2、3ヵ月に一度は一緒にゴルフをしたりして、しょっちゅう会うようになりました。このお正月も延々と語っていたんです。僕が庸平に可能性を感じるのは、世の中に残るものを作ろうとしていること。平安時代にイケてた商売って思い浮かばないけど、源氏物語はみんな知っている。人の心に残るものって、文化や芸術なんですよ。これから一緒に何かやれたら面白いな、と思っています。
仕事でもいろいろお世話になってきました。いろんな人を紹介してもらったり、ブランディングを手伝ってもらったり。ようやくちゃんと社会に立脚したサービスが立ち上がってきたんですが、映像を使った新しい可能性を追求してもらいたいと言ってくれています。今はお互いが自立した感覚で、さまざまなことができていく面白さがありますね。
自分達の持っている本質、ネイチャーのようなものを生かしたところでみんなが稼ぐことができたら、もっと幸せな社会になると思っています。これからいろんな挑戦をしていきたいです。
コルク 代表取締役社長 佐渡島庸平が語る、佐渡島隆平
普通の従兄弟と違うのは、小6の時に1年間、隆平の家に住んでたことですね。親が海外転勤になり、僕は受験のため残ったんです。しかも同級生。だから普通より濃い間柄なんです。
今や注目の起業家ですが、小学校の頃からお金儲けのことばかり考えてましたね(笑)。曾祖父が起業家。祖父は若くして病に臥せったんですが、祖母が起業してそこそこの規模の保険代理店を経営していました。隆平はよく祖母の手伝いもしていて、影響は大きかったはず。大学時代、関西の学生の多くが使っていたサービスを開発した時は、見事だと思っていました。
お金について考えることは、社会について考えること。それが結実したのが、クラウド録画サービスを提供する隆平の会社です。社会が目を持ち、人の暮らしをよくしていくという壮大なビジョンは、隆平らしいと感じています。
実は隆平の母方の実家は、大正時代に日本文化を守るパトロンをしていました。隆平、お金儲けは任せるので、文化芸術を僕に任せてね。
事業もそうなんですが、とにかく情熱がすごい。大学時代にひと目惚れした女性に何度も告白してはフラれ続けていました。そして30歳の時、彼女が仕事で滞在していたパリに一人で乗り込んで、婚約指輪を持ってエッフェル塔でプロポーズするんです。これでダメならあきらめる、と。その相手こそ、今の奥さんです。
タイで宝石商にダマされた時には、日本の空港で気づいて、「絶対に許さない」と相手と対決するために、到着した足でそのままタイに戻ったことがありました。交渉して、お金は取り戻しました。とにかく、いつも熱い男なんです。
Ryuhei Sadoshima(右)
1979年生まれ。甲南大学在学中に起業。2002年、ソニーネットワークコミュニケーションズ入社。モーションポートレートを経て、’14年より現職。
Yohei Sadoshima(左)
1979年生まれ。東京大学を卒業後、講談社入社。『ドラゴン桜』『働きマン』『宇宙兄弟』などの編集を担当。2012年、作家のエージェント会社、コルク設立。