新型コロナウイルスによる不安な空気はいまだ続いている。さまざまなニューノーマルが生まれる中、知らず知らずのうちに心身には疲労が蓄積していることも。こんな時は生きる原点に立ち返りたい。犬や猫という全力で生きるかけがえのない存在が教えてくれることは、ただただ懸命に生きるーー。そんな相棒の姿こそ、今を生きる指針となるのではないだろうか。「生涯、最愛の相棒」を再録。
「老いていく過程も愛おしい」
マイクロソフトの社長時代に部下から譲り受けた子犬は、両親がチャンピオン犬というトイ・プードル。
『ロード・オブ・ザ・リング』が好きだった奥様が、愛嬌がありイタズラ好きなピピンというキャラクターから名づけたという。
投資コンサルティング会社、インスパイアの創業者で書評サイト「HONZ」代表の成毛 眞氏の仕事場は自宅。「家族みんなにべったり」というピピンも、仕事の邪魔をすることはない。自室にやってきても、鳴くこともなく部屋の前で静かに待っている。
「犬は口がきけないから、どこか痛いのかな、散歩したいのかな、とこちらが気持ちを忖度(そんたく)しなければいけない。子育てにも役に立つと思うんですよ」
そんなピピンも、もう14歳。散歩の時間が減ったり、耳や目の不調を感じるという。
「最近は音が聴こえづらいようで、出迎えの頻度は減りました。それと、ピピンが骨折した際に手術をしましたが、本当に辛そうで。高齢になっての大手術はやめたほうがいいなと痛感しましたね。彼を見ていると、静かに老いていく過程を見つめられる。子供が祖父母から生き方を学ぶように、今の私は犬から『老い』を学んでいます」
Makoto Naruke
1955年北海道生まれ。書評サイト「HONZ」代表も務める。スルガ銀行社外取締役。早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に『面白い本』、『大人げない大人になれ!』などがある。(ピピン・トイプードル・オス・14歳)
※記事は2018年2月号より再録。2017年12月22日現在のものとなります。