師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。連載「相師相愛」第44回は、駐車場とスポーツでつながったふたり。
akippa代表取締役社長CEO金谷元気が語る、藤原靖久
最初に(フェイスブックの)メッセンジャーをもらった時は、「なんでトヨタの偉い人が?」と驚いて。でも本当で、これはすごいことになるかもしれない、と社内がざわつきました。
それで会いに行くと、大企業の人とは思えないほどフランク。すぐに何か一緒にやろうと言ってくださったんです。しかもすばやく矢継ぎ早にいろんなことが進み、それを皮切りに次々と他社からの出資も決まりまして。お会いしてから月商は約30倍になりました。
名古屋は駐車場が少なかったんですが、例えば名古屋グランパスと提携して豊田スタジアムの周辺の開拓を行い、500台ほど増やしました。今は5つほどプロジェクトが走っていて、クルマ、電車、バス、タクシーなどさまざまな交通機関を組み合わせて最適な結果が検索できるルートアプリの実証実験にも関わっています。
実は藤原さんは水泳選手としてトヨタに入った人。仕事が速いわけです(笑)。既存の枠組みをどんどんはみだせ、と言われています。
ベンチャーにとって大企業連携は重要。トヨタと提携した後、びっくりしたのは超大手企業との提携が次々に進んだことでした。今は大手損害保険会社と連携して、数万の損害保険代理店に駐車場開拓をお願いしています。自動車保険を扱っているので、年を取って車を手放した、などの情報があるわけです。そこを駐車場として貸し出していただく。実はヒントになったのは、トヨタの販売代理店網だったんですが。
実は父親と同年代なんですが、本当に発想が若い。グローバルはじめ、いろんなことをご存じなんです。もっともっと勉強させてください。
トヨタコネクティッド専務取締役・藤原靖久が語る、金谷元気
予約ができる駐車場というのは、魅力でした。しかも、設備にお金をかけないから駐車場代も安くなる。これはいいと思った。実は人工知能とか駆使するのかと思いきや、会ってみたら社長はスポーツマン。しかも、ベタベタの営業会社で(笑)。だから、駐車場がどんどん増えていたわけです。これもまた面白くて。
あとは、やれるところからやろう、でしたね。まずはガンガンやってみて、うまくいかなきゃ、修正すればいいんです。それが私のやり方なんです。でも改めて思ったのは、このビジネスのポテンシャルの高さ。オフィス、工場、個人宅など、世の中の空いている駐車場をシェアという形で有効活用すれば、駐車場不足の解消に繋がるわけです。初期費用ゼロで。それこそ、役所や学校など、予想もしないところからのニーズも生まれてきています。
いずれは、このテンプレートを海外に持っていってはどうか、とアドバイスしています。志が高いですからね。きっとうまくいきます。
出会った1年後くらいに、トヨタの未来創生ファンドから出資をして、その後、大きな資金調達をしていますが、金谷さんはまったく変わらないですね。志はまったくブレていない。
今後はクラウドを使って、いかにリアルでマッチングさせられるか。そうなれば、もっともっと便利になる。借り手にも貸し手にも、ますますうれしいビジネスになっていくはずです。
今の非常識は10年後の常識になると思っています。どんどん非常識なことをやってほしいです。
Genki Kanaya(左)
1984年生まれ。Jリーガーを目指し関西リーグなどでプレイ。2009年にakippaを創業。月極駐車場などを時間単位で貸し借りするサービスを運営。
Yasuhisa Fujiwara(右)
1964年生まれ。水泳選手として入社し、中国勤務などを経て2018年にトヨタコネクティッドへ出向。新たなモビリティサービス開発を推進する。