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2022.03.27

コロナ禍の旬なプレゼント!? 普通のマスクではできない予防ができるダチョウ抗体マスクがすごい

ダチョウに惚れこみ、ダチョウに生涯を捧げたと言っても過言ではない博士、塚本康浩が発見したのは、人間を救うとんでもないダチョウのパワー。コロナ禍になってすぐに、大きなダチョウの卵から、たくさんの抗体を大量生産する方法を確立した。ワクチンなどの医薬品と違い、すぐ製品化されたのはダチョウ抗体を使ったマスク、スプレー、そして飴。感染症と戦ってきた人類に光明が差す。2021年に刊行された塚本康浩『ダチョウはアホだが役に立つ』から一部を引用、再編集してお届け。

『ダチョウはアホだが役に立つ』¥1,540 塚本康浩著、幻冬舎刊。新型コロナウイルスを不活性化する「ダチョウ抗体マスク」を開発した「ダチョウ博士」こと塚本康浩氏。鳥好き少年はいかにして世界を驚かす研究をする「ダチョウ博士」となったのか? ダチョウ抗体の開発から最新研究のこと、ダチョウの生態、ダチョウ博士の生態まで楽しくわかる科学エッセイ。

最大の特徴は鈍感さと、類まれな回復力

鳥は一般的に清潔好きです。羽は空を飛ぶための大事な道具だからしょっちゅう羽繕いをしてきれいにするし、水浴びや砂浴びなどでメンテナンスを欠かしません。

ダチョウはこの点でも鳥らしからぬ鳥と言えます。羽繕いはほとんどしないし、羽が泥だらけでも気にならないようです。自分のウンコをつけたまま平気で走っているし、どんだけ無精者なのか。空を飛ばないせいで羽にそれほど神経質にならないのかもしれませんが、この鈍感さはダチョウの大きな特徴です。

ダチョウは2羽以上で飼うと、ときどき仲間どうしで羽をむしり合ったり、お尻をつつき合ったりします。ダチョウの毛根は人間の小指の先くらいの太さがあるので、そうやって羽をむしられると穴があいて血が出ます。

鳥はケガに弱く、ちょっとのケガで死んでしまいます。セキセイインコなんて数滴血が出ただけでも貧血になって、命の危機に瀕してしまうほどです。ところがダチョウは血が出るくらいどうってことないようです。痛みに対してケタ違いに鈍感なんですわ。

「三歩歩けば忘れる」とかいって、ニワトリはアホの代表みたいに言われています。

たしかにニワトリも大概アホやけど、ああ見えて意外に繊細で、注射をすると卵を産まなくなることが多いんです。注射されて痛いのと、とっ捕まえられたことのストレスでしょうね。違う鶏舎に移しただけでも卵を産まなくなったりします。

そこへいくとダチョウは注射しても何も感じないようで、おかげで抗体を作る上でごっつ助かっています。

仲間内でつつき合うのは、縄張り争いか? はたまた集団内の順位を巡る争い? 観察していると、どうやらそういう意味がある行動ではないようです。単にヒマやからだと思います。「ほかにすることもないし、ちょっとアイツをイジメたろか」といったとこでしょう。

そのうち血のにおいを嗅ぎつけてカラスがやってきます。ダチョウの背中に舞い降りて、図々しく肉をついばみ始めても、ダチョウは知らん顔。尻の肉がえぐれ、かなり出血しても平然とエサのもやしを食べ続けます。

いくら痛みに鈍感やとしても、自分の身ィが食われてんのにもやしを食うとるなんて!

「自分のそのデカい目は節穴か! カラスを追っ払わんかいッ」

そうひとこと忠告したくなります。

でも、驚くのはここからです。

ぼこっと体に穴があいて骨まで見えるひどい重傷を負っても、ダチョウは死なへんのです。傷に薬をスプレーしておけば数日で傷がふさがり、1ヵ月もすれば皮膚が再生されて元どおりになります。これほどの回復力のある生き物は、そうはいません。

なんでこんなに早く傷が回復するんやろう。不思議に思ってダチョウの傷口の組織をホルマリン漬けにして大学に持ち帰り、顕微鏡で覗いたところ、ダチョウの細胞はほかの動物の細胞よりはるかに速く動くことがわかりました。

ケガをすると、傷口をふさごうとして細胞が傷口のまわりで動き始めます。ダチョウの場合、その動きがごっつ速いわけです。だから大ケガをしても、カラスに尻の肉を食われても、驚異的な速度で回復するんですね。

傷口から感染症にかかることもないのは、免疫力が並外れて高いからでしょう。それだけ抗体を作る能力が高いとも言えます。

ダチョウがとてつもない生命力と免疫力の持ち主であることは間違いありません。

ダチョウ抗体マスクについて詳しくはこちら

普通のマスクではできない「予防」ができるわけ

「おっ、ダチョウのマークがついているんですね」

初めてダチョウ抗体のマスクを見た人はたいていそう言い、「かわいいですね」とほめてくれます。

緑色の小さなダチョウマークをつけているのは、表裏を間違えて着けることがないよう目印のためです。外側にダチョウがいてるようになっているわけです。たまに上下逆さまに着けてダチョウが逆立ちしとる人もいてますが、そういうアホなことをしとるのは、なぜかだいたいおっさんです。

ダチョウ抗体マスクは、新しい感染症がでてきてもすぐに対応できるフットワークのよさが大きなメリットです。これまで鳥インフルエンザ、季節性インフルエンザ、新型インフルエンザ(インフルエンザH1N12009)、花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサのアレルゲン)に対応する抗体を配合していましたが、2020年春からは新型コロナウイルスの抗体も配合し、バージョンアップを図っています。

ところで、新型コロナウイルスが世界的に流行し始めた頃、各国でマスク論争が起きました。マスクは果たして新型コロナウイルスの感染防止に役立つのか否か。ヨーロッパでは、マスクを着けない自由を求めてデモが起こりましたし、アメリカでもトランプ大統領(当時)の支持者を中心に、マスクを着けない人が大勢いました。

日本ではもともとマスクを着けることに抵抗のない人が多かったので、「外ではマスクを着ける」という新しい習慣は早くに定着しました。

ただ、「マスクは自分の唾液をキャッチしてくれるので他人を感染させない効果はあるが、ウイルスの粒子はマスクの中に入ってきてしまうから、自分が感染しない効果には乏しい」という説明が、流行初期の頃にテレビでよく解説されてましたよね。それならダチョウ抗体マスクで感染が予防できるってのは塚本のホラちゃうの? 誇大広告ちゃうか?

ご心配はもっともです。では普通のマスクとダチョウ抗体マスクはどこが違い、なぜダチョウ抗体マスクは新型コロナウイルス予防に力を発揮するのか。改めてその仕組を説明します。

ダチョウ抗体マスクのフィルターは4層構造になっていて、いちばん外側のフィルター表面にダチョウ抗体が配合されています。ここにウイルスが付着すると、ウイルスと抗体が結合して、ウイルスは不活性化されるわけです。

さらに2枚目のフィルターには、メルトブローン不織布というものが使われています。この不織布に若干の静電気をもたせているので、万が一ウイルスがここまで来たとしても静電気がキャッチします。つまり2重の関所があるというわけです。

だからふつうはダチョウマークを表にして着けてほしいですが、咳が出るなど、自分に何かしら症状がある場合は、あえて裏表逆に着けると人にうつすことも防げるんです。

フィルター入りの不織布マスクは洗うと静電気がなくなるなど、効果が薄れてしまいます。もしどうしても洗って使いたい場合は、マスクの表と裏にダチョウ抗体スプレーをシュッと吹き付けるといいと思います。

左:ダチョウの卵1個から抗体は約4グラム採取でき、8万枚のマスクが作れる。1グラムあたりの取引価格は10万円程度。右:ウサギやマウスの卵はそもそも小さいので、取引価格は1グラムで億単位にものぼるという。

速くて安くて高品質、お得すぎる抗体

「速くて安い! おまけに質は天下一品。めちゃくちゃお得ですわ」

ダチョウ抗体をひとことで言えば、そんなところです。
ダチョウ抗体が開発できるまで、抗体といえば、ウサギやマウス、あるいは培養細胞などから生成されるのが一般的でした。たとえばマウスから抗体を作る場合、ふつうは血液を使います。

あのちっこいマウス1匹から取れる血液の量を考えてみてください。それこそ、マウスですけどスズメの涙ですわ。いったい何匹分の血液を集めればそれなりの量になるのか。大量のマウスに注射する手間も馬鹿になりません。

人件費も試薬代もかかりますから、ウサギやマウスから作る抗体はかなり高額になります。取引価格は100マイクログラムで数万円。ということは、1グラムで億の値段がついてしまうわけです。

おまけに新しい抗体を作るのに、軽く1年くらいかかってしまう。ウサギやマウスは人間と同じ哺乳類なので、人間が反応しない異物には免疫システムが働きにくいなど、免疫システムそのものもダチョウに比べて脆弱だという弱点もあります。

そこへいくと、ダチョウの卵から取り出す抗体は質がいい。しかもお値段、1グラムで10万円程度ですよ奥さん! 卵1個から抗体は約4グラム採取でき、これでマスク8万枚が作れます。

そして注射をしてたった2週間で卵に抗体が出るわけです。抗体の大量生産という点では、ダチョウさんはウサギやマウスの比ではありません。もう、ダチョウさまさまといった感じです。

新しい抗体ができるのが速いという点は、感染症対策の上では大きなメリットです、新しい感染症が流行ったときいち早く対応でき、ワクチンや治療薬が完成するまでの間も人の命を守ってくれるからです。

新しいウイルスが登場したとき、ワクチンを完成させるにはかなりの時間がかかるのは新型コロナウイルスでみなさんもおわかりのことと思います。

その点、ダチョウの抗体の場合、ウイルスの遺伝子情報がわかれば、即作り始めることができます。おかげでMERSやエボラ出血熱、新型コロナウイルスなど新しい感染症が流行り始めると、間をおかずに抗体を作ることに成功しました。

ワクチンなどの医薬品と違い、ダチョウ抗体を使えばマスクやスプレー、飴などにすぐ製品化してみなさんの命を守ることができます。さすがダチョウさん、いい仕事してくれはります。

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