次の休暇は久々にどこへ遠出しようか。そんなことを考えている人にぴったりの本をご紹介したい。ホテルジャーナリストせきねきょうこさんによる「麗し日本旅、再発見!星野リゾート10の物語」だ。ただのガイドブックにはとどまらず、ひとつの読み物としてワクワクしながらページをめくれる一冊。
リゾートが建つ土地についての細かな知識を学べる。代表・星野佳路との対談も!
星野リゾートといえば、星のや軽井沢に代表される「星のや」が有名だが、温泉旅館として真の心地よさを追求した「界」、ファミリー型リゾートをコンセプトとする「リゾナーレ」、街に根付いたカジュアルホテル「OMO」などのサブブランドや、その他個性的な施設を持ち、国内の宿泊施設の数は50にもなる(2021年11月現在)。
本書では、せきねきょうこさんが特にオススメする20の施設について、美しい写真とともに紹介がされていくのだが、特徴的なのはその土地に関する豊富な情報量だ。例えば「星のや竹富島」のページでは、竹富島の民家の特徴、島の約束事「竹富島憲章」、600年の歴史のある「種子取祭(タナドゥイ)」などなど。どれも島の人々に寄り添った目線で、丁寧に説明してくれているのでまさに目から鱗。その地に一度行ったことがある人でも、全く異なる土地の魅力を堪能できるのではないだろうか。
星野リゾートの企業としてのあり方にも注目
著者が語るのは、観光客目線のリゾートの魅力や知識にとどまらない。リゾート建設前に現地の人々と星野リゾートはどのようにやりとりをして、地元の信頼を得てきたのか。代表の星野佳路氏は、その土地へのどのような熱い思いを持っているのかといった部分まで伝えているので、ホテルの在り方や未来までも垣間見える。
星野氏とせきねさんの対談のページでは、星野リゾートのコロナ禍の乗り越え方、星野氏による星野リゾートベスト3、今後会社が目指す先なども語られ、その視点に舌を巻くほど。特に代表が選ぶベスト3には、作り手としての達成感や強い思いが込められ、読んでいるだけで旅に出たい衝動に駆られてしまう。
星野リゾートがなぜ選ばれるのか、執筆のために何度も現地に足を運んだジャーナリスト魂で魅力を深掘りした本書。知られざる星野リゾートの物語にワクワクしながらひと通り読んだら、いつでも見返せるよう本棚に置いておきたくなる一冊だ。
Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト。仏国アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地の観光案内所に勤務。期間中に3年間の4ツ星ホテル居住。仏語通訳を経て1994年、ジャーナリズムの世界へ。ホテルの「環境問題、癒し、もてなし」の3テーマで現場取材を貫く。世界的ブランドホテル「AMAN」のメディアコンサルタント、他ホテルのアドバイザーも。連載・著書多数。
「麗し日本旅、再発見!星野リゾート10の物語」
せきねきょうこ著
講談社刊 ¥1,980