アメリカ、レドモンド。ワシントン州シアトルの近郊にある街に本社を構えるのが、テック界の巨人、マイクロソフトだ。今なお拡張する、圧倒的スケールのオフィスを書籍取材のため実際に訪れた、ブックライターの上阪徹氏がレポートする。全10社が登場する「こんなオフィスで働きたい!」特集はこちら!
キャンパスがさらに拡大中! ハイウェイが間を横切る
昔ながらの無機質な空間とはおよそ対極にあるオフィスを日本で10年も前につくりあげ、コロナ以前に100万人以上の見学者が押し寄せていた会社がある。東京・品川にある日本マイクロソフトだ。
カラフルな色づかい、形、大きさ、種類のテーブルやデスク。椅子のタイプもさまざまで、デスクチェア、ハイチェア、カフェ風のソファ、ボックスシートも。個室も用途別に用意され、中小規模の会議室からオンライン会議用、一人で集中できる部屋もある。
基本的にフリーアドレス。そして、10年前から行われていたのが、リモートワークだ。しっかり結果を出せば、基本どこで仕事をしても構わなかった。2011年の品川オフィス完成で、従業員の満足度は一気に高まる。ソフトウェアというインフラを使い、最先端のオフィスや働く環境を構築していたのだ。
私はこのマイクロソフトのアメリカ本社を’18年、書籍の取材で訪れた。世界12万人の従業員のうち約4万5000人が働くのが、ワシントン州シアトル近郊にある本社。シアトル・タコマ国際空港から高速道路を使って約40分。レドモンドにある本社は、社員の間で“キャンパス”と呼ばれている。創業者のビル・ゲイツ氏が、大学の構内(キャンパス)のようにすぐに集まれるところで仕事をしようと考えたのが、名の由来だ。
まず驚かされたのは、そのスケール。約1500万平方フィート(東京ドーム30個分、当時)の敷地に、125もの建物が点在。建物の間には道路が縦横無尽に走り、まるでひとつの都市のよう。地上からは、とてもではないがオフィスの全貌はつかめない。建物間の移動も徒歩では無理。そこで、シャトルと呼ばれる自動車が利用される。大型バンのほか、プリウスなど150台以上が走り、各建物の前から乗り込むか、スマートフォンのアプリを使って呼び出す。
キャンパスは4つのエリアに分けられ、それぞれがナンバリングされている。建物は高さも大きさもデザインも異なる。低層でこぢんまりした建物もあれば、吹き抜けがあるビルも。内装も、左右対称など単純なデザインや構造のものはまず見られない。無機質で平板にしないことは、知的生産との関わりがあるのかもしれない、と感じた。
アップルと時価総額世界一を競うマイクロソフト。そのビジネスの最前線を支えているのが社員であり、オフィスだ。マイクロソフトは今、数年かけてキャンパスを大改造している。今より広い新しい敷地が加わるのだ。実は私の取材時から、アメリカではリモートワークが当たり前のように行われていた。クルマでの通勤も多いため、渋滞を避けて午後3〜4時には会社を出てしまう社員も多かった。
コロナ対策でアメリカ本社でも一度は在宅勤務が義務化されたが、徐々に緩和されている。これから生まれる新オフィスは、テクノロジーをフル活用し、リアルとリモートがハイブリッド化される、まさに世界最先端になるのではないか。要注目だ。
上阪 徹
1966年生まれ。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、書籍を中心に雑誌やウェブなどで執筆やインタビューを手がける。『マイクロソフト 再始動する最強企業』をはじめ著書多数。携わった書籍の累計売上冊数は200万部を超える。