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2021.06.17

ニューノーマル時代にステータスカードは必要か?

生活様式が劇的に変化を遂げている昨今。真の意味での「豊かさ」を求めるため、人々はどのようなお金の動かし方をするのだろうか。その選択肢のひとつが、クレジットカード。新たな時代にふさわしい使い方を、今一度考えてみたい。連載「新しい時代のお金の動かし方」の第5回は、ラグジュアリーカードHead of Asiaの林ハミルトン氏が語るステータスカードの必要性について。

変わり始めたステータスカードのニーズ

こんにちは。ラグジュアリーカードHead of Asiaの林ハミルトンです。

みなさんはクレジットカードを選ぶ際に何を重視しますか。ポイント還元率ですか、それとも年会費でしょうか。私の経験でいうと、日本の方はアメリカや中国の方に比べて、ステータス感を求める傾向が強いように感じます。

ステータスとは社会的地位の意味。ですから、ステータスカードの意味合いが強い日本の富裕層向けクレジットカードは、「大手企業に就職した」「収入が安定した」「出世して新しい肩書きを得た」など、ビジネスステージが上がったときに選ばれやすいという特徴がありました。結果として、ステータスカードを持っているのは、比較的年齢層が高く、成功した人たちが中心になっていたのです。

でも、そんな状況が変わり始めています。昨今では「働き方」の多様性が広がり、ビジネス環境が変化。会社勤めをしながら、副業で別のビジネスを展開するような働き方も珍しくありません。世界的には、20代前半のベンチャー起業家の活躍も当たり前になっています。ステータスカードへのニーズは、若い世代にも十分あるのです。

メガバンクから、夢を追ってラグジュアリーカードへ

2008年にアメリカで誕生したラグジュアリーカードは、’16年から日本でのサービスを開始しました。私はそれまでシティグループやJPモルガン・チェース銀行でクレジットカード事業に従事しておりましたが、「日本での事業立ち上げを任せたい」というオファーを受け、引き受けることにしたのです。

オファーを受けた時のことは、今も鮮明に覚えています。夜中の3時、当時私が住んでいたニューヨークに電話がありました。「ラグジュアリーカードの創業者が日本市場を開拓できる人材を探している。今すぐ面接を受けないか」。

あまりにも唐突なオファーに、キツネにつままれたような心境になりました。でも、同時に何か運命のようなものも感じたのです。数時間後の飛行機に飛び乗り、創業者の元に向かいました。そして到着から数時間後には内定をもらい、0ベースから市場の開拓を始めることになったのです。

このスピード感あふれる展開に気持ちが高まり、心が燃えてくるのを感じました。でも、周囲の反応は冷ややか。仲間や仕事の同僚は「大手銀行のキャリアを捨てるなんて、もったいない」と口を揃え、家族からも「考え直したほうがいい」と猛反対にあいました。

しかし、心は決まっていました。「一生に一回の大きな挑戦を、絶対にやり遂げてやろう」と。私は失敗するよりも、何もしないことのほうが嫌だった。たとえ結果が悪かったとしても、今回の挑戦は大きな意味で”人生の成功者”に近づけると考えたのです。ラグジュアリーカードを選んだこの選択に、まったく後悔はありません。

ステータス重視ではなく、自分の世界観に合う一枚を

そんな経歴も影響しているのかもしれませんが、私は”ステータスありき”でカードを選ぶべきではないと思っています。自分のライフスタイルに合っているかどうか。資産や年収ではなく、自分とカードの世界観がフィットする一枚を選ぶべきです。

そもそもラグジュアリーカードは、ステータスカードや富裕層向けの高級クレジットカードを目指していたわけではありません。ラグジュアリーカードは、2008年に米国の起業家スコット・ブラムによって創設。スコット自身、金融のキャリアバックグランドをまったく持たない、IT/ECビジネスで成功した人物です。

そんなスコットが、どうしてラグジュアリーカードを立ち上げたのか? それは自分や友人のライフスタイルにフィットする「欲しい!」と思えるクレジットカードがなかったからです。スコットは自分が心から欲しいと思える機能や役割を、ラグジュアリーカードに詰め込んでいきました。

結果として、ラグジュアリーカードは富裕層の方々に共感いただき、ステータスカードと呼ばれるようになりました。でも、立ち上げ当初からステータス性を意識していたわけではないのです。

私が日本の方にラグジュアリーカードを紹介したり、薦めたりする時に、よく言われることがあります。「私は裕福ではありません。ラグジュアリーカードのような高級カードのターゲット層ではないんですよ」というような言葉です。中流意識が強く、謙遜が美徳とされる国民意識もあるのでしょう。でも、世界観が合うなら、勇気をもって一歩を踏み出してほしい。試してみなければ、自分にふさわしいクレジットカードを探り出すことはできないのです。

クレジットカードにも 審査はございます。もちろんお申込み内容によって発行を見送りさせていただく場合もございます。しかしながら、審査に通らないことは個人的にはむしろチャンス。「いつかは、このカードを持てるようになりたい」と思っていただくことで、結果的にもっと仕事に精が出るような側面もあると思うんです。

チャレンジしなければ、飛躍はありません。「夢」を持つことからすべては始まる。私はそう考えています。

Hamilton Hayashi
ラグジュアリーカードHead of Asia。1977年東京都生まれ。少年期にニューヨークに移住し、コロンビア大学・大学院を卒業。米国系金融機関シティバンクで新規カード立ち上げに従事した後、2007年からラグジュアリーカードのHead of Asiaに就任し、約7年間日本に在住。'16年11月、日本でカード発行開始。中国には'18年1月に進出、'21年3月には2社目の銀行と提携。

LUXURY CARD
2008年米国で創業された富裕層向けクレジットカード。重厚感ある金属製カードを特徴とする。マスターカードが認定した最上位クラスのカード「ワールドエリートMastercard」を採用。24時間365日、グローバルコンシェルジュが対応。ポイント還元率は業界最高水準の1.5%、賞品交換では最大3.3%。「プライオリティ・パス」「ダイニング優待」といった定番のサービスのみならず、「リムジンサービス」「美術館・映画館の無料鑑賞」「会員制カフェ・ラウンジアワー」、経営者向けにカード会員に自社商品を宣伝できる「LCオーナーズコミュニティ」などユニークなサービスを数多く提供している。

COMPOSITION=川岸 徹

PHOTOGRAPH=喜多孝幸

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