新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論20回。
ビットコインの歴史から、未来の通貨がみえてくる
暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン。2008年にサトシ・ナカモト氏の論文により誕生しました。
2021年2月にはカナダで世界初となるビットコインETFが上場したり、ビットコイン価格の大きな乱高下もあったり、ビットコインをはじめとした仮想通貨が世界中で今また注目を集めています。さらにアメリカでは、高校生の教育カリキュラムに「ビットコイン・仮想通貨及びブロックチェーン」を追加する旨の法案も本格検討されはじめました。
ビットコインは、新しい決済手段となることを想定して誕生しました。しかし現状だと、価格変動率の高さから決済手段としては浸透しにくいというのが実情です。ではビットコインをはじめとした仮想通貨が、決済手段として世界中で浸透する未来はくるのでしょうか。ビットコインの歴史を振り返りながら、最新の海外の動向もみていきたいと思います。
まずは、ビットコインが初めて決済手段として利用された歴史。それはビットコインの誕生から1年4ヵ月後の2010年5月22日のことです。
それでは、お金のトレーニング。それは何を購入する際の決済として利用されたでしょうか?
答えは、ピザ。イギリス人プログラマーであるラズロ・ハニエツ氏が、ピザ2枚を購入する際に利用しました。5月22日は「Bitcoin Pizza Day(ビットコインピザの日)」としても知られています。また、この時ピザ2枚は、10,000ビットコインで購入されましたが、当時の相場では1ビットコインは約0.2円。現在では1ビットコインは600万円を超えることもあります。
それではお金のトレーニング。そのピザ2枚、今ならいくらに相当するでしょうか?
答えは、約600億円。ここからもビットコインの価格上昇率が高すぎて、決済手段としての普及が難しいことがわかると思います。
ビットコインがまだ知名度が低かった時、ビットコインの存在が世界中に知れ渡る大事件がおきました。有名な、マウントゴックス事件です。世界初のビットコイン取引所であるマウントゴックス社のサーバーが何者かによりハッキングされ、当時のレートで約470億円ものビットコインと預り金が流出してしまったのです。この出来事により、一般にもビットコインの存在が知れ渡ることになりましたが、さらにもう一つ、ビットコインの知名度を高める出来事が起きました。
それはヨーロッパを舞台とした金融危機。
ではお金のトレーニング。その金融危機は何と呼ばれているでしょうか?
答えは、キプロスショック。この金融危機を契機にビットコインの知名度はさらに広がり、ビットコインの価格も上昇しましたが、キプロスショックとはどのような出来事だったのでしょうか。
まずは、キプロスというヨーロッパの国で金融危機が起こります。EUも金融支援に応じましたが、その条件としてキプロス国民の全預金に対し最大で9.9%の課税を課すという厳しい金融政策の実施を政府に迫ったのです。そうなると、預金をしているだけで強制的にお金が徴収されることになります。結果、預金者である国民は大混乱し、銀行や金融機関に押しかけ現金を引き出そうとしますが、一気に預金者が押し寄せたため現金が引き出せないという事態も起こりました。
そうなった結果、国民は、政府や金融機関への不信感を募らせました。そして政府や金融機関が関与しないからこそ信用できるという理由で、自分たちの資産を守るためにビットコインを購入する国民が急増したのです。
ビットコインは暗号資産としての普及は進みましたが、やはり価格変動率が高すぎることから、決済手段としては普及は難しい状況でした。そんな中、ついに決済にも使える可能性の高い仮想通貨の開発がスタートしました。それはある民間企業による仮想通貨への参入です。
ではお金のトレーニング。その仮想通貨の名称は「ディエム」ですが、発行している民間企業はどこでしょうか?
答えは、Facebookです。「ディエム」の旧名称が、「リブラ」になります。Facebookは、世界の金融インフラを整備する目的でディエムという新たな仮想通貨の開発を進めています。世界では10億人以上が銀行口座を保有していないと言われています。しかし、ディエムを使えば銀行口座を保有しなくても仮想通貨を管理や保管できますし、またグローバルでの送金も可能になり、多くの人々が金融サービスを利用できるようになるのです。
ではお金のトレーニング。ビットコインは決済としての普及は難しかった。では、ディエムが決済にも利用できる仮想通貨になり得るのは、ビットコインとディエムにどういう違いがあるからでしょうか?
答えは、発行の裏付け有無にあります。ディエムはビットコインなどの仮想通貨と違い、発行に際し裏付けとなる法定通貨が存在するのです。そのため価格変動が起こりにくい仕組みになっているので、ビットコインなどと違って決済にも利用できる可能性が高いのです。このディエムは、米ドルに連動したステーブルコインの発行をめざしていますが、実現すると現状の仮想通貨の課題としている価格変動率の高さという課題をクリアするため、新しい決済手段として浸透する日がくるかもしれません。
物々交換、それは遥か昔の人類の歴史です。それが時代を経て、貝や金銀、紙幣に変わってきたように、より便利に進化していくもので、さらにテクノロジーの進化がその流れを加速させます。さまざまな仮想通貨の登場により仮想通貨がメジャーな決済手段として利用されるようになり、現在の通貨の仕組みそのものが変わる未来が、すぐそこまできているのかもしれません。
Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。