世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム161回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
【前傾姿勢の鍵は膝と骨盤の角度】
最近、コロナ禍ということもありオンラインレッスンをする機会が増えたが、自分でスイング動画を撮影して指導を受けようと考える勉強熱心な人が多い。オンラインでレッスンをしていると、ダウンスイングやインパクトで体が起き上がってしまい、前傾角度が崩れてミスショットになっている人が多いと感じる。
西日本在住で半年ほどオンラインレッスンをしているHC15の女性ゴルファーAさんも、最初にスイングチェックをした際、ダウンスイングで頭1つ分くらい体が伸び上がり、前傾姿勢をキープできないでインパクトをむかえていることが原因でプッシュアウトのミスを連発していた。
「前傾角度が起き上がってしまうクセはわかっているのですが、どうしても治らないんです」
Aさんは前傾姿勢をキープしようと長年取り組んでいたが、一向に良くならないという切実な悩みをメールで相談してきていた。Aさんは前傾姿勢をキープしようと、頭の位置を変えないようにしたり、胸を下に向けたまま振るなど、上半身に力を入れて前傾姿勢を保とうとしていたが効果はなかったという。むしろ、上半身に頼ったスイングになってしまい、ますますボールが飛ばなくなってしまったという。
前傾姿勢をキープするには、頭を動かさないようにしたり、上半身を意識しても改善しない。ダウンスイングやインパクトで体が起き上がっている人は、たいてい、クラブを振り下ろす際に膝が前に出る。この膝の角度が前傾姿勢を保てない大きな理由になっているのだ。
【お尻を引いて、頭を沈み込ませる】
敢えてダウンスイングやインパクトで体が起きてしまう動きを体験してもらうために、アドレスの姿勢をとってから、膝頭がつま先よりも前に出るようにして膝を曲げてみてほしい。すると、膝を前に出すことで骨盤が立った「後傾」した状態になり、自然と体の角度が起き上がる。普段の生活の中で膝の曲げ伸ばしや太腿の前側の筋肉に頼っている人は、膝を使って体を支えようとするため骨盤が後傾しやすく、前傾姿勢を保てない傾向がある。
膝が前に出ることで体が起き上がることを体感したら、次は膝はアドレスの位置にキープしてお尻を後ろに引いてみよう。すると、逆に骨盤が前傾し、自然と前傾角度が深くなり、頭の位置が下がるはずだ。要するに、前傾姿勢をキープするには、頭の位置をキープしたり、上半身を使って姿勢を保つのではなく、股関節から骨盤を前傾させることが重要になる。
前傾姿勢をキープする膝や骨盤の動きを身に付けるため、トップからの切り返しでお尻を引き、スクワットをするような動きをしてみよう。股関節を使って骨盤が前傾することで、頭の位置が下がるので顔がボールに近づくようなイメージになる。特に左足をしっかり踏み込んで、左の骨盤を前傾させることが大切だ。
ダウンスイングで沈み込むと顔も地面に近くなり、ダフリそうだと感じる人は多い。だが、飛ばし屋のローリー・マキロイをはじめ、PGAツアー選手の多くはダウンスイング初期に頭の位置が1つ前後下がっている。実際には、ダウンスイング後半で脚を伸ばす「抜重」の動作を行うことで頭がアドレスの位置に戻り、ちょうどいい高さでインパクトするため問題はない。よく「頭の高さを変えないように」と言って、頭を動かさないように頑張っている人もいるが、頭は動かされるものであって、動かそうとしたりキープするものではないのだ。
このダウンスイングのシャドースイングは、トレーニングの一環だと思って行ってほしい。実際に球を打ちながらこの動きを意識して練習しても習得に時間がかかるので、しっかりと事前にシャドースイングで体に覚え込ませることが必要になる。頭を2つほど沈み込ませるイメージを持って、実際のスイングの時よりも極端に大きく動いて体に動作を覚え込ませてほしい。
前出のAさんは地道なシャドースイングを半年間行った結果、頭1つ分浮き上がっていたダウンスイングが改善され、前傾角度をキープした力強いダウンスイングになった。スイング動画では頭半分ほど沈んでダウンスイングをしているように見えるが、本人の感覚では頭3つ分沈むイメージだという。シャドースイングで頭3つ分沈むようにダウンスイングの動作を繰り返し、ひたすら動きを体に叩き込んだことによって、球筋は安定し、15ヤードほどドライバーショットの飛距離も伸ばすことができたという。
下半身に意識を向け、ダウンスイングでボールに近づくようなイメージをもってもらうことで地面反力を適切に使うことができるようになる。どうしても、体が伸び上がってうまくボールをとらえないという人は、シャドースイングから地道に取り組んでみてほしい。