世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム153回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
下半身から上半身への運動連鎖を身につける
スライスに悩む人は多いが、その中でもボールが左に出て大きく右に曲がるカットスライスになっているケースをよく目にする。カットスライスの原因はアウトサイド・イン軌道と開いたフェースなのだが、この原因が分かったからといって体に染みついたカットスライスのクセを直すのは簡単ではない。
カットスライスに最も影響を与えるのはクラブが高い位置から下りるアウトサイド・イン軌道なのだが、この原因は下半身を使えず、手や腕だけでスイングする「手打ち」になっていることだ。
アマチュアの中には「手打ちになっている」と言われてもピンとこない人がいるかもしれない。この手打ちという状態は、文字通り手先や腕だけでボールを打つことなのだが、特にダウンスイングで上半身が先行することで起こりやすい。手打ちを解消するために、適切に下半身を使ってダウンスイングを行う必要があるのだが、この動きは野球のピッチングをイメージするとわかりやすい。
ピッチャーがボールを投げるとき、最初に左足を上げて右足に重心をかけた後、目標方向に左足を踏み込んで体重を移動させ、それにつられるように上半身が動いていく。左足を踏み込んだとき、ボールを持った手はまだ後方にあり、その後リリースに向けて動き出していく。このように投球動作では下半身から動き出すことで、下半身の動きが腰、肩、腕と伝わり力強いボールを投げることができる。
このように下半身から上半身の順番で動くことを「運動連鎖」と呼ぶのだが、ゴルフスイングでも、同じようにダウンスイングを足の動きから始める必要がある。この運動連鎖が適切になることで、ダウンスイングのクラブ軌道がインサイドから下りやすくなり、アウトサイド・イン軌道が解消される。
逆に、この運動連鎖が機能していないと、野球のピッチングで言えば、「手投げ」「上体が突っ込む」という状態になる。ゴルフスイングにおいても手打ちになってしまい、スイングもアウトサイド・インのカット軌道になってしまう。
これを改善するのが、歩きながらクラブを振る「歩き素振り」のドリルだ。
足を踏み込むタイミングが重要
「歩き素振り」は、一歩ずつ交互に足を踏み出しながらバックスイングとダウンスイングを繰り返していくだけのシンプルなドリルだ。
スタートポジションでは右足を前に出し、クラブは左サイドのフォロースルーの位置に上げておく。そこからクラブをトップに向けて振りながら、左足を踏み出しはじめる。左足に十分体重をかけて切り返してから、インパクトに向かってクラブを振り下ろす。クラブがインパクトを通過したら、今度は右足を踏み出していく。その後も交互に左右の足を踏み出しながらスイングを行っていく。一見すると誰でも簡単にできそうに思えるかもしれないが、私の経験上、最初からこのドリルを適切にできたアマチュアは一人もいない。
どこが難しいのかといえば、足を踏み出すタイミングだ。クラブを振り上げながら足を踏み出す必要があるのだが、多くの人は足を踏み出すタイミングが遅い。クラブを振り下ろすタイミングと一緒に足を踏みこんでしまうので、上半身と下半身が同時、もしくは上半身が先に動いて下半身が後から動いてしまう。そうすると、上半身が優位なカットスライスの手打ちスイングになってしまう。適切なタイミングで行うためには、クラブが上がっている最中に下半身が動き出すように上下が別々に動くことが必要になる。その上下の分離ができることで、下半身から動き出す運動連鎖が起こるのだ。
この歩き素振りをしっかりマスターすれば、スイングの再現性が高まり、ボールの飛距離も伸びる。運動の基本である運動連鎖をマスターしてカットスライスから卒業してほしい。