世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム152回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ザックリの原因はハンドファーストのアドレス
パー5で1打目のドライバーショットをフェアウェーに運び、2打目もフェアウェーウッドで会心のショット。次のアプローチでうまくピンに寄せれば、バーディも狙えそう。はやる心を抑えながらウェッジを握ったのに、クラブヘッドがボールの手前にザックリと突き刺さり、がっくりと肩を落とす・・・といった経験はないだろうか。
先日、一緒にラウンドしたSさんはグリーン周りでザックリを連発してしまい、グリーンオンするのに苦労していた。「カップに寄せることまでは望まないので、せめて1回でグリーンに乗せられるようにしたいんです」と嘆いていた。
彼のアプローチショットのアドレスを確認してみると、ボールを右に置き、クラブが極端にハンドファーストになっていた。この構えだと、リーディングエッジが地面に刺さりやすくなり、ザックリのミスが出やすくなる。ザックリを嫌がって、ボールだけをクリーンに打とうとするとトップをしてしまうこともある。
このようにハンドファーストにアドレスをすることでザックリのミスが出やすくなるのだが、アマチュアの中には同じような構えをしている人が結構多い。これは旧来のレッスンでは右にボールを置いて、ヘッドを上からボールにぶつける打ち方を教えていたためだ。芝の上に浮いたボールをグースネックのウェッジで打つのなら問題のない打ち方なのだが、現在主流のリーディングエッジが前に出たタイプのウェッジだと、そのような打ち方は適さない。実際、PGAツアーにおいて、極端にハンドファーストに構えるアプローチショットを目にする機会は少ない。
ポイントはグリップエンドの位置と向き
ザックリという現象は、ウェッジのリーディングエッジ(刃)の部分が地面に突き刺さってしまう状態のことをいう。リーディングエッジが地面に接することが原因なので、シンプルにリーディングエッジが地面に当たらないようにすればいい。そのために、フェースの裏側にあるバウンスを接地させ、ソールを滑らせるようにスイングすることが肝心だ。
バウンスを使うには構え方が重要になってくる。アドレスのボール位置は真ん中よりもボール1個から半分ほど左足寄りに置き、グリップの位置は左太ももの内側にセットするので、シャフトの傾きはほぼ垂直になる。ボールを真ん中よりも左に置くと、今まで右にボールを置いてハンドファーストに構えていた人は、ボールが上がりすぎるのではないかと心配になるかもしれない。今まではハンドファーストにしてロフトを立てて打つためボールは低く飛び出していたが、今度はロフトなりの高さのボールになるだけなので心配はない。低く打ちたい場合は、ロフトの立ったピッチングウェッジなどのクラブを使えば同じ打ち方で対応できる。
このように「脱ハンドファースト」のアドレスをすれば、リーディングエッジが地面に刺さってザックリすることは減っていくはずだが、もう一つ重要なのはスイング中のグリップエンドの向きだ。
インパクトでグリップエンドが目標方向に移動しすぎてしまうと、結局ハンドファーストと同じようにリーディングエッジが地面に刺さりやすい状態になり、ザックリが起きてしまう。バウンスを使うためには、グリップエンドをあまり移動させずに、クラブを振り子のように動かす感覚が重要になる。インパクトからフォロースルーまでグリップエンドはおへそを向いた状態にすることで、ソール面が滑り、ボールの手前にクラブヘッドが接地してもザックリしにくくなる。
このように言うと、手首を支点にしてクラブを振り子のように振ろうとしてしまうアマチュアもいるので注意が必要だ。手先を使ってすくい上げたり、こねる打ち方になってしまうと再現性が低くなるので、体全体を使ってスイングすることが大事になる。左足を中心に体を回転させて、手や腕などの末端部分を使いすぎないアプローチショットを行ってほしい。
Sさんには、ハンドファーストのアドレスから、シャフトがほぼ垂直になるバウンスを使えるアドレスに変更してもらった。そして、グリップエンドがインパクトからフォローにかけておへそを向くように、体の回転を意識しながらスイングしてもらうようにした。最初は違和感を覚えていたようだが、徐々にバウンスを使う感覚をつかみ、その後のラウンドでは寄せワンを連発し、グリーン周りでのプレーに自信が芽生えたようだった。
クラブの構造を理解してアドレスをすれば、アプローチのザックリのミスはなくなるはずだ。優しく再現性の高い打ち方でグリーン周りから寄せワンをする機会を増やしてほしい。