世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム147回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
古くて新しいスプリットハンドドリル
体と腕のシンクロを高める練習法に、右手と左手を離してクラブを握る「スプリットハンドドリル」というものがある。両手を離してグリップし、素振りをしたりボールを打ったりするシンプルな練習方法なのだが、ゴルフ雑誌や動画で目にしたことがある人も多いと思う。スプリットハンドドリルは30年くらい前から行われており、特段目新しい練習方法ではないし、むしろありきたり練習ドリルだと言える。
だからといって、この練習が古くさく時代遅れの練習ドリルだというわけではない。むしろ、スイング中のクラブにかかる「フォース」や「トルク」を理解し、右手と左手のそれぞれの役割や使い方の感覚を学ぶのにうってつけの練習となる。特に、最近注目されているパッシブトルクの感覚をつかむ練習にスプリットハンドドリルは有効だ。ダウンスイング後半でパッシブトルクを適切に使うために、左右の手がどのような役割を担っているのかを実感することができる。
スプリットハンドドリルを行うことで、最新の理論を体感することもできるが、この練習ドリルの一番の目的は体と腕をシンクロさせ、手打ちを解消することだ。両肘と胸の空間を変えずに体の動きでクラブをコントロールすることで、再現性の高いスイングを行うことができるようになる。
両手それぞれの役割を理解し、同調性を身に付ける
スプリットハンドドリルでボールをまっすぐ飛ばすためには、体と腕の同調性を高める必要がある。手先でクラブをコントロールしたり、腕を振る「手打ちスイング」だと、体と腕のシンクロが損なわれるため打点が安定せず、ダフったり、手首をこねてすくい上げるようなスイングになってしまう。特に右手が強すぎる人は、アウトサイドイン軌道となり、スライスやヒッカケが出てまっすぐに飛ばすことが難しいだろう。
スプリットハンドドリルとノーマルスイングの大きな違いは、両手を離してクラブを握ることだ。両手を離せば離すほど、左右の手が別々の方向に動きやすくなるためスイングをすることが難しくなる。最初はグリップ1つ分くらい右手と左手を離し、慣れてきたらグリップの両端くらいまで両手を離してみよう。右手はシャフトにはみ出すくらいまで短く持ってもいいが、この状態でスイングするのはかなり難しいはずだ。まずはハーフスイングくらいの振り幅から始め、徐々に大きなスイングに移行することをお薦めする。
バックスイングをするときのポイントは、クラブを軽く感じられるポジションにクラブを上げることだ。バックスイングで左腕が地面と平行になった時、グリップエンドが下を向く「クラブが立った」ポジションだとクラブが軽く感じられるはずだ。このポジションにクラブがあることで体と腕がシンクロした状態をキープしやすくなる。逆にクラブが寝た状態だと、クラブが重く感じられ、体と腕のシンクロが崩れた状態になる。クラブを軽く感じながらバックスイングをすることで適切なポジションにクラブが上がり、体と腕のシンクロした状態を維持できる。
ダウンスイングからインパクトまでのポイントは腕を使わずに体の回転に合わせて腕が振られるようにすることだ。両脇を締めて体と腕の同調性をキープすれば、腕を振らなくてもスイングすることができる。手首をやわらかく使うことができれば、ヘッドが走りインパクトからフォロースルーにかけて、右手と左手が自然に入れ替わる。特に右腕を振ってしまう傾向の人は右サイドを使う意識を持たず、上半身の回転や左腕でダウンスイングを行う意識を持ってみるといいだろう。
フォロースルーでも右腕が地面と平行になったポジションでシャフトを立て、クラブを軽く感じられるようにしてほしい。そうすることで、バックスイングとフォロースルーの腕とクラブの形がほぼ左右対称になる。体と腕をシンクロさせることに加え、クラブポジションを適切にすることで、手首などの末端部分を効率よく動かすことができる。左右対称の動きになることで、スイングの軌道の中でボールをとらえる「ゾーンインパクト」を実現することができ、再現性の高いスイングになる。
スプリットハンドドリルを行うと、最初はボールが左右に曲がってしまうと思うが、自分の傾向を把握し、腕の使い過ぎを抑えたスイングを目指してほしい。スプリットハンドドリルは球筋のフィードバックがわかりやすい練習なので、自身の調子のバロメーターや不調の原因を探るときにも活用してみてもいいだろう。