世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム146回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
上半身優位のスイングだと飛ばずに曲がる
先日、初めてオンラインでスイングチェックをするアマチュアからスイング動画が送られてきた。送られてきたスイングは、一見するときれいなスイングなのだが、ほとんど下半身が使えておらず、手や腕の振りに頼った上半身主導のスイングだった。そこで、本人にどの程度、下半身を意識しているのか聞いてみると、「スイング中は上半身のことしか考えていません。下半身のことはあまり意識したことがないですね」という答えが返ってきた。
このレッスン受講者のように上半身のことばかり考えている人は多いと思うが、そのような意識を持ってスイングをしていると、手や腕ばかりが動く「手打ちスイング」になりやすい。手打ちになれば、当然球筋が定まらないし、飛距離も出すことができない。
上半身に頼ったスイングをしている人は、下半身を適切に使うことができるようになれば、再現性の高いスイングができ、地面反力を利用して飛距離を伸ばすことができるようになる。しかし、下半身を使うと言っても、これまで上半身のことばかり考えてスイングをしてきたアマチュアはどのような意識を持てばいいのか分からないだろう。そこで、今回はダウンスイングの下半身の動きと、適切な切り返しのタイミングを習得するための「ステップドリル」を紹介しよう。
バックスイングの途中で左足を踏み出す
下半身主導のスイングを身につけることに役立つ「ステップドリル」は非常にシンプルな動きだ。両足の幅を狭くしてクラブを振り上げ、バックスイングの途中で左足を一歩目標方向に踏み出し、その後は通常と同じようにスイングをしてボールを打つドリルだ。この練習は左足を踏み込むだけなので、簡単そうに思えるかもしれないが、実は正しくポイントを押さえている人は少ない。大事なポイントが3つあるので、その点を意識して練習をしてほしい。
1つめのポイントは、左足を踏み出すタイミングだ。クラブをトップの位置まで振り上げ、その後に左足を踏み込めばいいと思っている人が多いが、それではタイミングが遅すぎる。そのタイミングでは、左足に体重を乗せ終わったときにはクラブはボールの近くまで下りてきてしまい、身体が沈み込んだままインパクトすることになる。
左足を踏み込む適切なタイミングは、バックスイングで左腕が平行になったときだ。「それではトップが上がらないのではないか?」と思うかもしれないが、振り上げたクラブは惰性で上がり続けるので、結果としてトップはちょうどいいポジションに収まる。この「早すぎる」と感じるタイミングで左足を踏み込むことで、下半身→上半身→クラブの順に動く「運動連鎖」が適切になり、スイングの再現性が高まる。
2つめのポイントは、踏み込むときの膝の形だ。ダウンスイングで左足を踏み込むとき、スクワット動作のように、お尻を後ろに引くようにして骨盤を前傾させ、膝が前に出ないようにすることが大事になる。膝が前に出てしまうと、地面に対して力を加える方向が適切ではなくなり、前傾角度が起き上がってしまう。両膝が前に出さないようにして、適切に地面を押すことができると、地面からの反力を飛距離に転換することが可能になる。
そして3つめのポイントは、ダウンスイング後半に行う「抜重」だ。ダウンスイング初期に左足で地面を押したことで生まれる反力は上方向に向かうので、ダウンスイング後半ではジャンプをするときのように自らの重みを抜き、左足を伸ばす動作「抜重」を行う必要がある。この抜重動作はインパクトで急に左足を伸ばすのではなく、クラブが右腰くらいまで下りたら、クラブヘッドをリリースするタイミングに合わせて徐々に左足を伸ばしていく。このとき、左膝は伸びていくが、前傾角度を起こして伸び上がってはいけない。あくまでも伸びるのは太ももやひざなどの骨盤よりも下の部分で、上半身は前傾姿勢を保ちながら回転をしていく。
左足を一歩踏み出すだけの単純なドリルに思えるかもしれないが、ドリルを行うポイントを意識して行ってみると難しく感じると思う。ステップドリルを何度も繰り返して、左足を踏み込むタイミングを習得すれば、スイング軌道が安定して飛距離も伸びるだろう。
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