世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム144回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ファーストパットをしっかり寄せることが大切
最近、米シニアツアー選手の活躍が目覚ましい。フィル・ミケルソンは昨年シニアツアーデビューを果たし、今年は50歳11ヵ月でメジャートーナメントの全米プロを制した。ミケルソンのように道具やフィットネスの進化の恩恵を受け、シニアツアー経由でメジャートーナメントやPGAツアーを制する選手がどんどん増えてくることだろう。
私はCS放送のゴルフ専門チャンネルで米シニアツアー・PGAツアーチャンピオンズの解説をする機会があるのだが、アプローチやパッティングなどのシニア選手の熟練の技はアマチュアにとって非常に参考になる。特に今年2月のウェイストマネジメントフェニックスオープンで、往年の名選手サム・スニードのPGAツアー最年長優勝記録を破るのではないかと注目を集めたスティーブ・ストリッカーのプレーは必見だ。
ストリッカーは特にパットのタッチを合わせるスキルに長けている。優勝争いの中でも20メートルくらいのロングパットをOKの距離まで確実に寄せるシーンを多く目にする。一見地味なプレーに思われがちだが、プレーのリズムやメンタルのことを考えれば、ロングパットをタップインできる距離まで寄せることは非常に重要なことだ。ロングパットに限らず、ミドルパットやショートパットでもファーストパットで距離をしっかり合わせることは3パットをなくすだけではなく、カップインの確率を高めることにも大きく影響する。
パッティングの距離感を合わせる、30センチオーバードリル
よく「ボール半分くらい切れるかな?」などと、パッティングのラインを細かく読むアマチュアがいる。ラインの読み間違えでカップを外したのであれば、次のパットで入れられる可能性は高いが、距離が合わずに大きくショートしたり、オーバーしたりしてしまっては、次のパットで入れることが難しくなる。ラインを読む前に、ボールのスピードをコントロールできなければ、3パットどころか、下手をすると4パット、5パットなどと目も当てられない状態になってしまうだろう。
今回紹介する距離感を養う練習は、2メートルくらいの距離からボールを転がし、カップの後ろ30センチの場所に刺したティーの間にボールを止めるというシンプルな練習法だ。ボールがカップに入ってしまうと、オーバーした距離がわからなくなるので、カップの代わりにマークなどをカップに見立てて置くといいだろう。自宅のパターマットや絨毯の上でもできるので、10球打ってどれくらいそのエリアに収まるか成功確率を確認しながら行ってみてほしい。
2メートルくらいの距離なら簡単すぎるのではないかと思う人もいるかもしれないが、2メートルの距離でもタッチを合わせることは意外と難しい。実際に、シングルプレーヤーにこの練習を行ってもらったが、ショートやオーバーを繰り返し、10球打って3球しか30センチ幅にボールを止めることができなかった。本人も驚いていたが、私もシングルプレーヤーでもタッチをコントロールできていないことに驚いた。このように、ほとんどの人がボールを入れることばかりを考え、縦の距離をコントロールできていないのだ。
この2メートルの距離に慣れてきたら、すぐに距離を長くしてはいけない。カップから30センチ~40センチの10センチ幅にティーを刺し、そのエリアに止める練習をしてみてほしい。10センチ幅に止めることができれば、かなりタッチをコントロールできている状態だ。慣れてきたら1メートルずつ距離を伸ばして練習してみてほしい。
この練習は意外に難しいため、何回練習しても距離が合わない人もいるだろう。そのような人は、クラブを振るスピードやインパクトの力加減で距離を合わせようとしているかもしれない。インパクトの強弱で距離を合わせる方法では、いつまでたっても安定したタッチを身につけることはできないので、パターの振り幅で距離感をコントロールするようにしてほしい。ストロークのスピードやインパクトの強弱は一定にして、バックスイングとフォローを同じ大きさにし、振り幅の大きさでボールの転がる距離をコントロールしてほしい。
振り幅をどれくらいにしたら良いかよく分からないという人は、ボールの後ろでカップと正対して、カップを見ながら素振りをするといいだろう。目を目標と正対させながら素振りをすることで、目標物までの距離から適切な振り幅をイメージすることができる。ボールを手で持って軽く2メートル先に投げるのと同じような感覚で、目からの情報を手やクラブに伝え、その距離に合った振り幅を決めてほしい。
距離感を磨くことで、3パットをなくすだけではなく、カップインする確率も高まる。カップに入れる練習だけではなく、縦の距離をコントロールする練習も取り入れてみてほしい。
パッティングの距離感を合わせる、30センチオーバードリル↓