世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム134回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
急に体を動かすと、ケガの原因にも
最近は暖かな日が多く、春の訪れを感じる季節になってきた。そろそろゴルフを再開しようと考え始めている人も多いのではないだろうか。久しぶりのゴルフの練習やラウンドの前に気をつけてほしいことがある。それは体をスイングできる状態に整えることだ。自分では問題なく体を動かせているつもりでも、筋肉は動かさないでいると、いつの間にか固くなってしまう。そんな状態でいきなりフルスイングしても、体がうまく動かないので思うようなプレーはできないし、ケガをしてしまう恐れもある。
PGAツアーのアーノルドパーマー招待、ザ・プレーヤーズ選手権において、2試合連続で優勝争いをした47歳のベテランプロゴルファー、リー・ウェストウッドは、自身が第一線で活躍できている要因を「日々ストレッチを行うこと」だと語っていた。柔軟性は年齢とともに失われていくものだが、毎日ストレッチを行うことで柔軟性を維持し、若手に負けないプレーをすることができるという。
ストレッチはもちろんアマチュアにとっても効果的だ。むしろ、普段運動不足になりがちなアマチュアのほうが、パフォーマンスを高め、ケガを防止する意味で欠かせないだろう。普段の練習やラウンドの前はもちろん、特に久しぶりにクラブを握る前は入念にストレッチで体をほぐして柔軟性を高めよう。
練習やラウンド前に行いたいストレッチ
ストレッチの種類はたくさんあり、柔軟性には個人差があるのでフィジカルトレーナーに自分に合ったストレッチを教わるのがベストだが、ここではゴルフに役立つ下半身と上半身の代表的なストレッチを紹介したい。
スイングにおいて最も重要な体の部位は下半身だ。特に、太ももの裏側のハムストリングスやお尻の筋肉を柔軟に保つことで、適切な前傾角度でアドレスでき、フットワークを使って飛距離を出すことができる。感染症予防で外出を控えていたり、テレワークで座っている時間が長い人は太ももの裏側やお尻の筋肉が固くなっていることが多い。そんな状態で無理に体を動かすと腰など痛めてしまう心配があるし、アドレスでしっかりと前傾姿勢を取ることができず、お尻が落ちた構えになってしまう。すると、いつもと同じようにスイングしているつもりでもクラブ軌道が変わり、思うようにボールを飛ばせなくなる。
パフォーマンスを高めるために、いつでも気軽にできる、太もも裏のハムストリングスやお尻の筋肉を伸ばすストレッチをご紹介したい。まず、足裏を地面につけた状態でしゃがみ、アキレス腱側から両足首を左右の手でそれぞれ握り、そこから膝を伸ばす。この時、勢いをつけないようにして、無理をせずにゆっくりと行ってほしい。このストレッチを行うことで、単純に前屈するよりも、効果的に太もも裏や殿部が伸びる感覚がわかるだろう。その他にも、スクワットや四股(しこ)を踏むなどの運動も下半身の筋力や柔軟性を高めるのに有効だ。これらの動作を膝の曲げ伸ばしではなく、骨盤の前傾を意識して行うことで、ダウンスイングの動作を改善することにも役立つ。ストレッチや自重を使った運動で下半身が使える状態にしてほしい。
上半身で意識してほしいのは、大胸筋や広背筋、肩甲骨周りや腹斜筋などの胴体部分の筋肉だ。ここが固くなっていると背中が丸まったり、体が回転しづらくなる。適切ではない姿勢で無理やり体を動かすと、怪我をしてしまう恐れがある。
上半身のストレッチは、腕を伸ばした状態で頭上で手を組み、手のひらを天井に向ける。その状態から、手を背面側に倒していく。上半身が反るような動きによって胸や肩甲骨周りの筋肉が刺激され、丸くなっていた背中が伸びていく感じがするだろう。次にそのままの状態で体を横に倒し、体の側面を伸ばして腕から脇腹にかけての筋肉を伸ばそう。
最後に、椅子に座って胸の前で腕をクロスさせた状態で上半身をねじってみる。肋骨などからなる胸郭や背中を動かす意識をもって体をねじることで、スイング動作の練習にもなる。この時、腹筋や背筋、わき腹に適度なテンションが感じられればOKだ。
ストレッチや軽めのトレーニングは、できれば普段から家でも行って、筋肉を刺激しておいたほうがいい。そして、練習やラウンドの前でも入念に体を動かしておけば、体もよく動くし、ケガ防止にもなる。ゴルフに限らず、スポーツではケガをしないことが大切だ。プロのスイングを参考にするだけではなく、普段からストレッチを欠かさない姿勢も真似てみてほしい。