GOLF

2021.03.12

原因は当てに行くインパクト!? スランプに陥ったときの対処法

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム133回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

不調の原因になりやすい、当てにいくインパクト

先日、主催しているオンラインセミナーに、女性ゴルファーAさんからの相談が来ていた。

「今まで70台後半のスコアを出したことがあるのですが、最近はドライバーを振り切ることができなくなって飛距離が落ち、アプローチでもミスが続いて、スコアは100を切るのがやっとの状態です」

Aさんはいつのまにか調子が悪くなり、不調の原因がわからず悩み続けているという。

彼女のスイングを直接見たわけではないので不調の原因は特定できないが、似たようなスランプのケースは多く存在する。徐々に不調になる人は、ラウンド中に何とかボールをまっすぐ飛ばそうと試行錯誤した結果、知らない間にスイングが狂っていく傾向がある。その時の調子によってスイングを微調整することは大事なことなのだが、いつの間にかその場をしのぐための「ごまかしスイング」を繰り返し、意図しない動きが定着してしまうことで本来のスイングを見失ってしまうのだ。

あくまでも推測だが、Aさんはラウンド中に「ボールに当てにいくインパクト」を繰り返したことが原因となって不調に陥ったのではないだろうか。Aさんはアプローチとドライバーショットの不調が顕著ということなので、アプローチで当てにいくインパクトが習慣化した結果、ドライバーショットに悪影響を及ぼしたのかもしれない。

アプローチショットでダフりに悩むゴルファーは、クリーンにボールをとらえようとして、クラブヘッドを上からボールに当てに行く傾向がある。この動きによってダウンスイングのクラブの入射角が鋭角になり、ゾーンではなく点でボールをとらえるインパクトになることで、かえってアプローチのザックリやトップが頻発してスコアがまとまらなくなる。

打ち込み傾向のアプローチの軌道に影響を受けると、フルスイングのクラブの入射角は鋭角になり、アウトサイドイン軌道でクラブを振るようになってしまう。アイアンは入射角が鋭角でもなんとか打てるが、ドライバーは入射角が鋭角すぎると方向性が不安定になり飛距離も出ない。そして、アウトサイドインの軌道でドライバーショットを振り切れば、ボールは左に飛び出し大けがをする。すると、振り切ることが怖くなり、ボールをなんとかコントロールしようとして振り切れなくなり、飛距離も落ちる。このような悪い悪循環に陥ってしまうと、自分の力だけではなかなか抜けだすことができなくなってしまう。

プロに現状を分析してもらうことが最善

アプローチからドライバーショットまでスイングが全体的に狂ってしまうと、自分では不調の原因になかなか気づくことはできないし、たとえ気づいても自分で直すことは難しい。こういうときは、プロの目でチェックしてもらうことが大切だ。

病気になったときのことを考えてもらえば分かると思うのだが、体の不調を感じたときに、インターネットや本から仕入れた知識だけで素人が自己診断したところで、正しい病名を確定させることはできないし、適切な治療法も分からない。しかし、何もせずに放置していると、ますます悪化して手遅れになるかもしれない。このような場合は、早めに医療機関を受診したほうがいいだろう。

それと、ゴルフ仲間や知り合いの上級者にアドバイスを受けるのは避けたほうがいい。複雑に絡みあった糸を元に戻すのは簡単な作業ではない。不調に陥ったゴルファーを再生するのは、初心者にゴルフの基礎を教えるのとは全く異なるスキルが要求される。修正するポイントがズレれば、糸はさらに複雑に絡み合い、イップスなどの手に負えない状態になってしまう可能性があるので気を付けてほしい。

深刻な不調に陥っているゴルファーは、信頼できるコーチを見つけ、きちんとそのコーチに現状をチェックしてもらい、適切な対処法を教わることをお薦めする。元の状態に戻るのは不調に陥っていた期間と同じくらい時間がかかるだろうが、我慢強く取り組めばきっとまた楽しいゴルフができるようになるはずだ。

不調の入り口は小さなところに潜んでいるかもしれない。普段からスイングチェックを怠らず、不調にならないように気を付けてほしい。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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