世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム127回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
自宅でアプローチの練習をする方法
「ゴルフのスコアの6割はピンから125ヤード以内で打たれたもの」というのは往年の名選手、サム・スニードの言葉だが、それくらいグリーン周りのアプローチショットはスコアメイクに重要な要素だ。しかし、アマチュアがアプローチショットを練習する機会はあまり多くない。練習場に行っても、アプローチ専用の練習エリアは少ないし、打ちっぱなしでアプローチショットの練習に何球もボールを使うのはもったいないような気がするかもしれない。
練習不足になりやすいアプローチショットだが、わざわざ練習場に行かなくても、ボールをとらえるための基本的な練習は自宅で練習することができる。アプローチショットは距離感が大切といわれるが、その前に短い距離で練習し、ボールをしっかりとフェースにのせてコントロールできる技術を身につけてほしい。
自宅でアプローチショットを練習するときは、リビング、自分の部屋、廊下などどこでもよいが、周りの安全を確保できるスペースで行うようにしよう。スペースはクラブの振り幅を含めて、3メートルあれば十分だ。使用するボールは柔らかい素材でできた練習用のボールを使うといいだろう。通常の硬いゴルフボールだと、トップする恐れもあり、室内で思い切って練習することが難しい。しかし、練習用のボールであれば、短い距離のアプローチショットなら壁に当たっても大丈夫だ。
床はできれば練習用の人工芝のマットを敷いたほうがいいが、持っていなければカーペットの上でもいいし、フローリングの床なら厚手のバスタオルを敷くだけでもいい。そして、ペットボトルなどのターゲットを2メートル先にセットし、キャリーで当てるようにする。「2メートル先の目標物にボールを当てるのは簡単だ」と思うかもしれないが、短い距離ほどアプローチは難しいものだ。まずは2メートルの距離でアプローチショットの基礎をマスターし、その後ターゲットをランダム設定して距離を打ち分ける練習をしてみてほしい。
再現性の高いゾーンインパクトを身につける
アプローチショットが苦手な人は、クラブヘッドをボールに当てにいってしまう「点」のインパクトになる傾向がある。このようなインパクトでは、その時々のタイミングによって打点がバラつき、再現性が低くなる。そのため、アプローチショットの再現性を高めるために、インパクトを「点」から「ゾーン」にする必要がある。
今回、2メートルの距離で練習を薦めているのは、敢えて手先でボールを打ちにいきたくなる短い距離で練習することで、「点」のインパクトを改善したいからだ。この難しい状況でインパクトゾーンを安定させることができれば、長い距離のアプローチも改善できる。
2メートルのアプローチ練習で身につけたいことは、スイング軌道の中でボールをとらえられるようにすることだ。そのために、まずはバックスイングとフォロースルーの振り幅を確認してほしい。点でボールをとらえていた人は、バックスイングが大きく、フォロースルーが小さい傾向にある。そのような人は、バックスイングを小さくし、フォロースルーを大きくして、クラブヘッドが加速しながらボールをとらえることを覚えてほしい。
もう一つイメージしてほしいのは、クラブの入射角だ。クラブの入射角が鋭角になりすぎるとクラブを打ち込んで終わってしまう。緩やかな入射角をイメージし、クラブヘッドの裏面にあるバンスを滑らせるようにして打つことで、ゾーンでボールをとらえることができる。急角度な入射角にならないように、構え方にも注意したい。アドレスはハンドファーストにせず、ボールは真ん中もしくは若干真ん中よりも左に置くようにすることで、入射角が緩やかになり、ゾーンでボールをとらえることができるようになる。
ボールを上げようとして手首を使いすぎてしまう傾向の人は、最初はパターのストロークと同じように左右対称の振り子運動をイメージしながら、手首を使わずに上半身の回転だけでクラブを振ってみるといいだろう。振り幅や入射角が安定してきたら、徐々に手首をやわらかく使う方法を試してみてほしい。
2メートルの距離で正確にボールをとらえられる確率が高くなったら、ボール位置を変えたり、手首をやわらかく使うなどして、ボールの飛ぶ高さや距離をコントロールすることに挑戦してもいいだろう。高いボールや低いボールを打ち分けたり、様々な距離にターゲットを置くなどして、ゲーム感覚でボールを打ってみると楽しみながら練習することができる。
アプローチショットを上達するためには、基礎的なスキルを習得し、再現性の高いインパクトを身につけることが欠かせない。冬の間は基礎固めをし、暖かくなったらコースや練習場で距離感の練習をしてスキルを磨いてほしい。