ゴルフ歴1年で70台に突入した大塚友広さんのゴルフ論とは。短期連載「ゴルフはインパクトの前後30cm」3回目。
スイングの「スタート」と「ゴール」の設定
今回の話は、スイングの最適化を図るために必要でありながら、ロングショットにおいては飛距離を上げるために欠かせない、「スイングの“スタート”と“ゴール”の設定」です。多くのアマチュアゴルファーは、スイングの「スタート」と「ゴール」をアドレス(振り上げる前)の状態に設定しています。アドレスの状態に身体を戻そうとすること自体は間違っていませんが、考えるべきは“スイングにおける”スタートとゴールの設定です。
インパクトを中心にとらえたとき、クラブ(ヘッド)の最加速点はボールを通過したあとの位置に設定する必要があります。インパクト通過後30〜50センチに最加速点、すなわちスイングの「ゴール」を設定し、そこから自然なフォロースルーにもっていく。インパクトの瞬間をゴールに設定しないということです。
そして、スイングの「スタート」は、テイクバックをして手が最も高い状態に到達したところ(トップの位置)に設定することが最も効率的です。アドレスの状態をスタートに設定すると、どうしてもそこに戻ってくる場所を最加速点にしたがるのが人間です。それでは、ボールが飛ばないばかりか右に出てしまう、もしくはスライスになってしまう確率がとても高くなります。野球経験などがあるスイングの速いゴルファーがスライサーから抜け出せない理由はここにあります。
アドレスからテイクバックする腕がいちばん高いところに向かうまでは、あくまでスタートに向かっている段階。飛行機に喩(たと)えるなら、滑走路に向かっている最中です。その後、テイクバックの最も高い位置で滑走路に入り、そこから振り抜いていく。この意識を頭に叩き込むことでショットは大きく進化します。
アドレスから一気に振り上げて打っていく動作は、体幹がしっかりした人でも切り返しからインパクトを迎えるまでに軸を戻すことが困難になります。これはほとんどのアマチュアゴルファーに共通して言えることです。アドレスの状態をスイングのスタートに設定すると、速い切り返しになりやすく、インパクトを迎える大切なときに軸がブレてしまうのです。この方法で行うスイングに再現性をもたせられるのは、小さな頃からゴルフに馴染んでいるプロゴルファーです。つまり、身体で覚えることができる年齢からしっかりとスイングの回数を重ねている人ということになります。
ゆったりと振り上げ、体幹がブレないままスタート地点に着き、そこから一気に助走するイメージをもつことで、軸のブレないインパクトを迎えることができます。さらに、最もスピードの上がるポイントをボールの30〜50センチ先に設定すれば、ボールとの接触時間(フェースがボールに触れている時間)が長くなり、つかまった強いボールが打てるのです。
女子プロより明らかにスイングが速く、力もあるスポーツ経験豊富な男性アマチュアが、なぜ女子プロよりも飛ばないのか? その秘密はすべてここに隠されています。
・ボールをつかまえて、生きたボールを打っているか?
・クラブヘッドがボールにぶつかった瞬間にスピードが落ち、ボールが死んでしまっているか?
この違いによって差が出ているのです。
ドライバーのみならず、すべてのクラブに共通して言えることです。ぜひ、スイングの「スタート」と「ゴール」の設定に意識を向けて練習に励んでください。
Tomohiro Otsuka
群馬県富岡市生まれ。メンタルヘルステックサービスを展開するラフール執行役員。AJGAアジアジュニアゴルフ協会理事兼GM。HED法人営業デジタル化協会理事。富岡製糸場の世界遺産プロジェクトに公募による民間登用で観光マネージャーに就任。その際にゴルフを始める。独学でゴルフ理論を構築し、1年でベストスコア70台前半に到達する。オンラインゴルフコーチング「Natural Works Golf」も主宰している。