世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム94回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
自分のカップインの確率を知る
会心のショットでカップまで1メートル足らず。「バーディーチャンス」と思いきや、カップを外してしまい「自分はなんてパッティングが下手なんだろう」と落ち込んだ経験はないだろうか。
残り1、2メートルほどのショートパットだと、「入って当たり前」と考え、「外すと恥ずかしい」と力が入ってしまう人もいる。しかし、本当に「入って当たり前」なのだろうか。
実はプロでも1メートルのパッティングでカップインできるのは95%くらい。2メートルだと60%くらいだ。アベレージのアマチュアなら成功率は1メートルで80%、2メートルで35%ほどといわれている。アマチュアにとってショートパットは入って当たり前ではないのだ。
だから、ショートパットで一喜一憂しないよう、自分がパットを決められる確率を練習で把握しておくといい。外出自粛要請が出ている今こそ、自分のパッティングの成功確率を確かめるいい機会だ。パターマットで1メートルの距離から100回打って何回成功するか確認してみよう。当然、パターマットなので平らで毎回同じ場所から打つことになる。それでも100回打って100回成功する人は少ないのではないだろうか。100回パッティングをしてみて、80回決められれば成功率は8割だが、実際のグリーンでは傾斜の影響などもある精度はさらに5~10%程度低くなる。平らで毎回同じ条件でも、1メートルの距離を100パーセント決められるわけではない。「決めなければ恥だ」と力む必要もないし、失敗しても「これが今の実力だ」と心の整理もつくだろう。
再現性の高いパッティング軌道を身につける
自分の実力を知って高望みしないことは必要だが、「そんなものさ」と諦めてしまってはいつまでたっても上達しない。パッティングの成功率を確認するとともに、精度を高めるためにパッティングの基本技術を確認しよう。
基本的にパッティングではボールを曲げる必要はなく、まっすぐ打つだけだ。あとは、どれくらい強く打ち出すか、傾斜でどれくらい曲がるのかを正確に読めるかどうかにかかっている。
まっすぐなボールを打つには、フェースを目標にスクエアにセットし、パターをまっすぐ引いてまっすぐ戻せばいいのだが、人間は機械ではないので、そう簡単ではない。厳密にいうとパッティング軌道は振り子型と直線型に分かれる。振り子型は胸を支点として若干のフェースの開閉が入るイントゥイン軌道、直線型は左肩を支点としてフェースの開閉が少ないストレート軌道になる。支点やストローク方法に違いはあるものの、基本は共通する点が多い。
クラブを2本おいて間を通す
パッティング軌道を適切にするために、自宅のパッティングマットや絨毯でできる、ゴルフクラブを使った練習方法をご紹介したい。パターヘッドの幅に合わせて、飛球線と平行になるようにアイアンなどのクラブを2本置く。外側のクラブはパターのトゥ側に触れるかどうかギリギリに合わせて置き、内側はヒールよりシャフト1本分くらい離しておく。この2本のクラブの間をうまく通り抜けることができれば、パターの軌道が適切になっていることになる。
外側のクラブにパターが当たれば、アウトサイドにパターが上がっていることになり、内側のクラブに当たれば、インサイドに上がっていることになる。ただ、体の回転でストロークを行った場合、適切な軌道は若干インサイドにあがるので、内側は少しだけ隙間をあけておくのだ。
このとき注意してほしいのは、手の位置。飛球線後方から見て肩の真下より体に近い位置に手があると、アウトサイドにパターヘッドが上がりやすくなる。逆に手が体から離れすぎているとバックストロークの軌道は内側に入り、過度なインサイドイン軌道となる。飛球線後方から見たときに、肩の真下に手が位置すると、上半身の回転に合わせてクラブが適切な軌道を通りやすい。アドレスをした後に腕をダランとして構えて、手の位置を確認するといいだろう。
また、手を使って過度にまっすぐヘッドを引こうとすると、バックストロークでアウトサイドに上がりやすい。手元だけをまっすぐ動かすことで、ヒール部分が連動して直線的に動くため、フェースがクローズになり、軌道もアウトサイドに上がる。自分ではまっすぐ引いているつもりでも、パター軌道が外側に上がってしまうのだ。このような傾向のある人は、パターのトゥ側を意識して、フェースを少し開くイメージにすると適切な軌道になりやすい。
また、前傾が浅く棒立ちになっている人や垂直軸に対して体を回転させる傾向がある人はバックストロークでヘッドをインサイドに引きやすくなるので注意したい。
パッティング軌道は手先でコントロールするものではなく、上半身の回転を使ってストロークすることで安定する。自分では適切なストロークをしているつもりでも、いつの間にか狂うのがパッティングだ。再現性の高い、適切な軌道を身につけてほしい。