世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム36回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ハンドファーストはミスの確率が高い
“右足の前にボールを置き、ハンドファーストに構える”というのはアプローチの定説だ。しかし多くのアマチュアにとって、これはミスの確率を高くしてしまうことになる。ハンドファーストに構えると、ダウンスイングのヘッド軌道は地面に対して鋭角(垂直に近い角度)になる。つまり少しでも手前に落ちればヘッドは地面に刺さり、逆に目標方向に下りてくればトップする可能性が高くなる。ミスに不寛容な、シビアな打ち方と言える。
アプローチで重要なのは“グリーンに乗せること”だ。できるだけカップに近づけたいと考えるだろうが、アマチュアは距離や方向性が多少間違っていてもまずはグリーン乗せることを最優先に考えたい。最悪なのはヘッドがボールの手間に突き刺さりほとんど距離が出ないザックリか、トップしてグリーンをオーバーするミスだ。練習量の不足しているアマチュアはミスを許容してくれる易しい打ち方を採用する必要がある。
ボール位置はドライバーと同じでよいというコーチ
ではハンドファーストの固定概念を捨て、ボール位置をスタンスの真ん中より左にするとどうなるか。ダウンスイングでヘッドがゆるやかな角度(地面に対して水平に近い角度)でボールに向かってくる。これによってインパクトゾーンが長く保てるので、多少ヘッドが手前に落ちてもヘッドが芝の上をすべりボールを拾ってくれる。左寄りにボールを置くとすくい打ちのトップが出そうな気がするかもしれない。
しかし、クラブ軌道の最下点はグリップエンドの真下周辺となる。そのため左寄りのボールポジションだとちょうど軌道の最下点あたりとなるので若干のダウンブローやレベルブローとなりトップのミスは出にくい。
かつてジャック・ニクラウスを指導したショートゲームを専門にするコーチの第一人者であるフィル・ロジャースは「ボール位置はドライバーと同じ」と言う。アプローチで重要なのはミスヒットしないこと。そのためインパクトゾーンを長くできる左寄りのボール位置を強く推奨しているのだ。
ハンドファーストをやめるとバウンスを使えるようになる
インパクトゾーンが長くなるとヘッドが地面に刺さりにくくなるが、もう一つザックリが減る要因としてバウンスが使えるようになるということが挙げられる。ウェッジの底面にはバウンスというソールのふくらみがある。このふくらみが接地することで、地面の上をヘッドがすべるようになっている。
しかしハンドファーストに構えてヘッド軌道が垂直に近くなると、リーディングエッジが地面に向かって下りてくるためバウンスが接地する前にリーディングエッジ部分が先に地面に突き刺さってしまう。これではヘッドが地面の上をすべってボールを拾うことはできない。
バウンスというウェッジ特有の補助機能を使うためにも、ボール位置は左寄りにする必要があるのだ。
いいことずくめの左寄りのボール位置だが、ツアーでプロを見るとハンドファーストにしている選手が多くいる。これはコースのセッティングに関係している。固い地面に速いグリーン。そしてカップに寄せるだけではなく、入れなくてはならない場面もある。低い球でスピンをかけてボールを止めるためには、ボールを右寄りに置いてヘッドを鋭角に下ろしてスピンをかける必要があるのだ。しかしこれは毎日のように鍛錬をして、ヘッドを緻密にコントロールできるプロだからなせる業。アマチュアはミスに寛容な打ち方のほうを強く推奨したい。