GOURMET

2022.10.08

“海の京都”の旬食材を生かした、薪料理が話題の店「縄屋」

美しい里山や季節によって表情を変える海――。自然の営みとともにある、京都の“別の顔”を見つけに。今、足を運びたい「美味しい京都」へ案内する。【特集 京都の秘められしスポット】

魚菜料理 縄屋

薪釡は自分で設計図を書いて地元の鉄工所に製作を依頼。コースに登場する料理の刺身、酢の物以外はすべて薪釡を使用する。

“京丹後の恵み”の瞬間を切り取る

京都の北部に位置し、日本海に面する京丹後。“海の京都”として知られるこの場所は、季節によってさまざまな旬の魚や農作物が取れる食材の宝庫。その“自然の恵み”を最大限に生かす料理で注目を集めているのが「魚菜料理 縄屋」だ。

店主吉岡さん夫婦

店主の吉岡幸宣さんと奥様の恭子さんの二人三脚で店を営み、全国らゲストを迎える。

店主の吉岡幸宣さんが自身の生まれ故郷に店を構えたのは2006年のこと。「和久傳(わくでん)」仕込みの腕前はたちまち食通の知るところとなったが、2年前のリニューアルがさらに大きな飛躍のきっかけとなった。

地元の伝統工芸や懇意にする和紙アーティスト、陶芸作家の作品に彩られた空間。まるで木の呼吸が伝わるような清々(すがすが)しさは、この土地の空気感そのものだ。

魚菜料理 縄屋

黒むつの塩焼き。魚の出汁で炊いた玄米を添えて(写真の料理は¥13,200のコースの一例)。

魚菜料理 縄屋

「れんこ鯛と花にらのおこげあんかけ」。揚げた魚と天然のオオモミタケの旨味がたっぷり。花にらの風味もアクセント。

供するのは1万3200円のコースのみ。リニューアル後に導入した薪焼きは吉岡さんにとって探求しがいのある調理法であり、料理との向き合い方に確たる自信をもたらした。料理の熱源としての薪は火力が安定しづらいため扱うのが難しいといわれるが、吉岡さんは炭に比べて水分を多く含む薪の性質や温度変化も利用しながら料理を仕立てる。

最初の強い炎で煮えばなを炊き、ゆっくりと火が入る熾(お)きの状態や、水分が抜けて灰かぶりになるタイミングを見計らって野菜や魚を焼いていく。薪が灰になるまでの時間と食材の個性を見極め、うまく重ね合わせながら調理する技は見事のひと言。客席から炎のゆらめきを眺め、料理が仕上がるのを待つのは至福のひと時だ。

魚菜料理 縄屋

「南瓜とすっぽんの蒸し焼き」。南瓜に円山川の天然すっぽんを詰め、南瓜の葉に包んで蒸し焼きに。

魚菜料理 縄屋

煮えばな。コースの最初に登場する釡炊きのごはん。

旬とは儚いものといわれるのと同様に、この薪が燃えている時だけ見られる美食の夢。都会でも薪を使うことはできるし、新鮮な食材を手に入れることも難しくはない。けれど、本当の美味しさの瞬間を切り取り、食べ手に伝えるためには、この京丹後しかありえなかったのだと深く納得する。

魚菜料理 縄屋入口

隠れ家的な佇まいが印象的。

魚菜料理 縄屋店内

カウンター席でひときわ目を引くのが“すす竹の目隠し”。柔らかく間仕切りする意味もあるが、調理場の風通しをよくする作用も。

魚菜料理 縄屋(Sakanaryori Nawaya)
住所:京都府京丹後市弥栄町黒部2517
TEL:0772-65-2127 
営業時間:12:00~、18:00~(一斉スタート)
定休日:火・水曜
料金¥13,200のコースのみ
※予約はTableCheckから受付

【特集 京都の秘められしスポット】

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=伊藤 信

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