GOURMET

2022.10.06

収穫したての野菜を目の前で調理! 京都の大自然を風景に食す絶品飯

美しい里山や季節によって表情を変える海――。自然の営みとともにある、京都の“別の顔”を見つけに。今、足を運びたい「美味しい京都」へ案内する。【特集 京都の秘められしスポット】

田舎の大鵬のある日のメニュー

「親鶏の塩茹で」や近所の上林(かんばやし)川でとれた「すっぽんの米粉蒸し」、畑で育てた「空芯菜の海老味噌炒め」、長茄子を炒めた「魚香茄子」。料理はコースでひとり¥11,000、ワイン¥7,000~。

京都の人気中華の二代目が選んだ、己が生きる道

秋風になびく稲穂の波の向こうにくっきりと稜線が見える。都会で暮らす多くの人にとって、尊くも縁遠いものになってしまった日本の原風景。市内からクルマで2時間ほど北上した綾部市に移住して間もないが、京都の人気中華料理店「中國菜 大鵬」の二代目、渡辺幸樹さんは、まるで昔からここに暮らしていたかのように、しっくりと風景にとけこんでいた。

京都府綾部市に広がる原風景

田舎の大鵬のスタッフ

右が渡辺幸樹さん。左から2番目が峰地幹介さん。蓮ヶ峯農場を支える仲間と。

「綾部は父が生まれ育った場所で、子供の頃は夏休みに遊びに来たりしていたけれど、その頃は田舎のよさがピンと来なかった。今じゃ、ずっと住むんじゃないかって店の子にも言われるくらいなじんでます」と渡辺さんは日焼けした顔で笑う。

田舎の大鵬

鶏舎ではオスとメスを分けずに育てるが、群れになじめない鶏の手当てもする。

田舎の大鵬

渡辺さんが収穫したばかりの野菜などを調理。

田畑が広がり、鶏舎まで歩いて数秒のこの場所で飲食店の営業許可を取ったのは昨年の暮れ。きっかけは、もともとやりとりがあった蓮ヶ峯(はすがみね)農場の養鶏家、峰地幹介さんに会いに綾部を訪れたことだった。平飼いの鶏は餌やりも集卵もすべて手作業。機械に頼らず、自然と向き合いのびのびと生きる峰地さんの姿に心が動かされた。「峰地さんの協力なくして『田舎の大鵬』の実現はなかった」と渡辺さんが言えば「こんなに畑が好きな料理人はそういないと思う」と峰地さんも笑う。

田舎の大鵬

エネルギッシュな香りが食欲を刺激。

鶏舎の番人としても活躍する豚。

鶏舎の番人としても活躍する豚。

夕暮れ時。空がオレンジ色に染まり始めたら、いよいよ開店時間。訪れたお客を畑や鶏舎に案内し、時には鶏をしめる様子を見せることも。命の営みを食の体験を通して大切に、丁寧に伝える。客席から調理風景を眺められるふた口コンロで畑から収穫したばかりの野菜を炒め、塩茹でにした丸鶏をテーブルに運ぶ。料理はその日の流れにまかせるので、決まったメニューはないが10品前後のおまかせで1万1000円が目安という。

それにしてもなんという解放感、都会の日常では得られない高揚感──。ワインを飲みながら、ゆっくりとにぎやかに料理を囲むひと時に真の贅沢と本当の豊かさを知る。

田舎の大鵬店内

大きな丸テーブルがひとつ置かれた解放的な食空間。雨よけもあるので多少の雨天でも営業。

田舎の大鵬(Inaka no Taihou)
住所:京都府綾部市八津合町別当2-1 蓮ヶ峯農場 
TEL:なし 
営業時間:17:00~(予約状況に応じて変動も)
定休日:不定休
席数:最大12名までで応相談
※予約はInstagram(@inakanotaihou)から

【特集 京都の秘められしスポット】

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=伊藤 信

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