飲料ブランド「TOCHIとCRAFT」の「加賀棒ほうじ茶」が、特徴的な香りを活かしつつ、軽やかな飲み口となってリニューアル。「にほんもの」のクリエイティブディレクターの中田英寿とポッカサッポロフード&ビバレッジの三枝裕昭が見いだす、ほうじ茶の新たな可能性とは?
香りと軽さを徹底的に追求した“食中茶”
ほうじ茶の人気が急上昇している昨今。各飲料メーカーからも商品が続々と発売され、熾烈な戦いが繰り広げられている。そんななか、ポッカサッポロフード&ビバレッジが展開する「TOCHIとCRAFT」の人気商品「加賀棒ほうじ茶」がリニューアル。その目的は「飲料を通して土地の文化や伝統を広める」という同ブランドの価値観をより追求するためだ。そこで同社が監修を依頼したのが、日本の伝統・文化・農業などのものづくりに精通する中田英寿氏率いる「にほんもの」だった。中田氏は「加賀棒ほうじ茶」に“食中茶”としての可能性を見いだしたという。
中田 僕は毎月全国を回っているのですが、実は地方のお茶農家さんを訪ねる機会も多く、ここ数年は特にお茶の可能性を感じていたところなんです。だから今回は本当によい機会をいただきました。
三枝 中田さんはお茶に対する高度な知識や考えとともに、情熱を持たれているので、私どもも勉強になる点がたくさんありました。理想の味ができるまであきらめない中田さんの熱意によって、焙煎を手がける油谷製茶の油谷祐仙さんの職人魂に火がついたと聞いています。
中田 僕はどうしたら「加賀棒ほうじ茶」が世の中に広まっていくかを考えていたんですが、ふとお茶文化の発祥地である中国では食中にお茶が飲まれていることを思い出し、この商品を特に食事中に楽しめるような味にしていきたいと思ったんです。
三枝 これまでにない発想で驚きました。
中田 食事に合わせて飲むお茶はどんなものがいいかというと、まずは軽いほうがいい。旨みが強くて美味しいお茶は、飲んだ後も口の中に余韻が残りますが、食事中に飲むお茶はそれではダメです。なぜなら、口の中に甘さや苦さが残るお茶だと、食事を邪魔してしまいます。なので、試作の際にお茶が美味しくなりすぎて元に戻したこともありました。食事中は、飲み始めの香りと味を最大化して、喉を過ぎた後は水のように消えていくものがよいと思います。
三枝 なるほど。
中田 だからこそ、一番大事なのは香り。さらに言えば、口に入る香りよりも鼻から抜ける香りが大切です。そのため、茶茎のブレンドを見直し、渋み、雑味、甘さだけが切れて、軽さと香ばしい香りを残すことにこだわりました。そんな僕のリクエストに油谷さんは、何度も試行錯誤して応えてくださいました。
三枝 「加賀棒ほうじ茶」の原料は、茶の“葉”ではなく茶の“茎”。ひと言で茶茎といっても、碾茶の茎や煎茶の茎などいろいろな茶茎があります。火の入れ方や配合率を変えることで味わいを調整できるわけですが、今回の配合変更では華やかな香りとすっきりと澄んだ味わいが向上したと思います。油分の多い食べ物と一緒に飲むと口の中がリセットされ、何度でも最初のひと口目のように楽しめますね。
中田 「加賀棒ほうじ茶」はキレがいいので、食事中はもちろん、アルコールの合間のチェイサーとして飲めるというところにも可能性があると思います。
三枝 そうですね。「加賀棒ほうじ茶」は昔、金沢の茶商がお茶を作る際に捨てていた茎の部分=“棒”をもったいないと思って焙じてみたことから誕生した経緯があります。ですからもともとは庶民が場面を限定せずに飲んでいたお茶ですが、敢えて飲む場面を設定すると新しい可能性が見えてきますね。どのような食事にも本当に合いますので、多くの方々にぜひお試しいただきたいと思います。
美味しさの秘密は焙煎にあり!
石川県金沢市発祥の加賀棒茶は、独特の香ばしさが特徴。香り成分は茶の葉のほうじ茶の約1.5倍とも言われる。「TOCHIとCRAFT」シリーズの「加賀棒ほうじ茶」の焙煎を手がけるのは、大正7年から高品質な茶葉を扱ってきた石川県の老舗・油谷製茶。
使用する茎茶は、金沢の伝統製法を再現した直火と遠赤外線で焙煎。丁寧に時間をかけて浅く焙煎することで、透き通った香りと透明感のある甘み、食事に合うキレを実現している。配合の割合を調整しながら試飲を繰り返した制作期間は8ヵ月以上に及ぶ。
にほんものYouTubeでは、開発の過程を公開中。