新たな味わいを生むシャンパンの“実験”
フランスの最高勲章レジオン・ドヌールをモチーフにした赤いリボンが印象的な、メゾン マムのシャンパーニュは、1904年に極地探検家のシャルコーが南極到達成功の祝杯に開けたことで有名になった、勇気と成功のシンボル。
「チャレンジ、勝利、祝福」をコンセプトとするこのメゾンの代表銘柄はピノ・ノワール特有の力強さを持つ「マム グラン コルドン」だ。
その魅力を誰よりも熟知する最高醸造責任者ローラン・フレネ氏は、「偉大なシャンパンは成り立ちが複雑。よく観察することで隠れた面が見えるようになる」と言う。
その考えに基づいて脳神経学者のガブリエル・ルプゼ氏と共同開発したテイスティング方法は、シャンパンを味わう前後に、香りの小瓶を嗅ぐというもの。
例えばひと口シャンパンを飲んだあとに小瓶の香りを嗅ぎ、再びシャンパンを飲むと、ふた口目の味や香りの感じ方がひと口目と変化する。「これは香りの認識が記憶と結びついているために起きる現象です」とフレネ氏。
実際に「マム グラン コルドン」で試してみると、香りAを嗅いだあとに飲んだ時は白い花のような香りが立ち、香りBを嗅いだあとに飲んだ時はバターのような香りが立った。
香りの小瓶に記憶が呼び覚まされたことで、「マム グラン コルドン」の香りに対する感じ方が変わったためだ。名門メゾンの定番には、実に豊かな味わいが隠されていたのだった。
Laurent Fresnet
1967年フランス・シャンパーニュ地方生まれ。「メゾン マム」最高醸造責任者、ローラン・フレネ氏。代々ワイン造りを行う家庭で育ち、ランス大学で生化学、ワイン学、ワイン経営学の学位を取得。国内外でワイン醸造技術者の経験を積む。2006年「メゾン・アンリオ」の最高醸造責任者に就任。’15年と’16年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」で「スパークリング・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。’20年1月より現職。
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