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2023.07.25

30分で完売! 話題の会員制別荘を創る、若き起業家とは

従来のシステムやスケール、サービスとは一線を画す新発想の会員制別荘ブランド「ADD」を立ち上げた武田崇嗣。別荘の在り方にイノベーションを起こす若き起業家の情熱の源を紐解く。

武田崇嗣氏
武田崇嗣/Takatsugu Takeda
Blue Order 代表取締役
1990年北海道生まれ。中央大学を卒業後、星野リゾートに入社。入社2年目にしてホテルの施設運営責任者を経験する。その後、2015年に不動産業に転身し、2018年にはBlue Orderを設立。現在は会員制別荘ブランド「ADD」を運営するだけでなく、不動産開発・売買事業も展開しながら、グループとして組織拡大を目指す。

第1期会員募集はわずか30分で完売

正面に琵琶湖、背後には山の斜面が迫り、外の世界と隔絶されているかのようにひっそりと佇む小さな集落。「時が止まった隠れ里」と称されるこの場所に、この夏、エクスクルーシブな会員制別荘が誕生した。

外観は和の趣に満ちているものの、内装はモダンでスタイリッシュ。広々としたベッドルームを備える居住エリアと、サウナ併設のスパエリア、湖を眺めながら篝火を楽しめるテラスの3つから成る建築面積603㎡の空間を1棟貸し切りで満喫できる。そんな充実した複数の別荘を、限られたメンバーだけでシェアできるのが、Blue Orderの武田崇嗣が展開する会員制別荘ブランド「ADD(アド)」だ。

既存のシェア別荘の平均利用日数のデータに基づき、1口あたりの利用日数を7日(VIP会員は21泊)に制限することで、1口あたりの価格を購入しやすい額に設定。その結果、第1期の販売では、インターネットを中心とした集客だったにもかかわらず、30口がわずか30分で完売という、驚異的な記録を打ち立てた。

「建物完成前にもかかわらず多くの方々が会員になってくださったのは、合理的な価格だけでなく、ADDが掲げる“ウェルネスセカンドハウス”というコンセプトと、画期的なシステムに共感していただけたからだと思います」と、武田は分析する。

日常も豊かにするウエルネスな滞在を提供

武田が目指したのは、滞在中だけでなく、その後の日常まで豊かにするウェルネスな別荘。アンダーツーリズムを取り入れ、静かな空間でサウナやメディテーションを楽しむ。その発想は実体験から導きだしたものだ。

ヒントになったのは、3年前の夏に妻と1週間を過ごした小浜島の貸別荘での体験だ。星野リゾートを退社後、不動産会社でディベロッパーを務めた経験を生かし、28歳で収益物件を中心にビジネス向けの不動産事業を行うBlue Orderを設立してから約2年。多忙を極めていた武田にとって、自分たちだけで想いのままに過ごせる別荘での時間は、渇きかけていた心と身体を満たしてくれた。

「今の日本は疲れている大人が多い気がします。けれど、日常を彩ってくれる時間が持てれば、活力や創造性に溢れた日本を取り戻せるのではないでしょうか」そこで武田は、別荘を持つことを決意。旅の帰途、リサーチしたものの、理想の土地はいくつか見つかったものの、建てることに迷いが生じた。

「そもそも別荘が1軒だけでは飽きてしまう。かといって複数所有だと莫大な資金が必要になる。維持管理の手間も考えると、経済的合理性に乏しい気がして、シェアリングにシフトしました」

別荘を所有することがステータスという時代もあったが、当時30歳の武田にはそんなことよりも優先すべきことがあった。心地よく過ごせる時間と場所を、金銭的にも使い勝手の面でもリーズナブルに手に入れること。取材中に何度も「本質を大切にしたい」と口にした武田が、シェアリングサービスに行き着いたのは当然のことと言えよう。

ところが、既存の会員制ホテルや別荘にも、武田が求めるものは見当たらなかった。ないのなら自分でつくればいい。そう考えた武田は、早速行動に移す。真っ先に取り組んだのが、自分のニーズと既存の会員制別荘のギャップの洗いだしと、その解決策の考案だ。予約がとりづらいという課題は、全施設の稼働率が85%以下となるように会員数の上限を設定することで解決し、利用可能日数内であれば何泊しても宿泊費は不要、会員の利用日を限定しないなど、ユーザーの使い勝手を優先。若い感性を生かしつつ、唯一無二であることにこだわった。

そうして誕生したのが、ADDというブランドだ。着想からリリースまでわずか1年というのに驚かされるが、「子供の頃から、ハマったらのめり込むタイプなんです」と、武田は笑う。

「小学生の時に、水泳に夢中になったのですが、毎日どうしたらもっと速く泳げるか、手や足の動きを自分なりに研究しては試して。それを繰り返すうちに自分でも驚くほど上達して、北海道の大会で1位になりました」

目標を最速で達成するために、自分自身の頭でとことん考え、戦略を練り、行動する。それは、経営者になった今も、武田の最大の強みになっている。

会員・地元・経営側の三方よしを目指す

ADDは現在、琵琶湖のほかに房総半島と屋久島、沖縄にも別荘を建設中だが、そのコンセプトは土地ごとにまったく違う。

「大学時代にヨーロッパをバックパックで旅したのですが、その時に気づいたのは、“心地よさ”とは土地や文化、人々の暮らし、建物のすべてが相まった“空気感”によって得られるものだということ。なので、ADDの別荘は、その地にふさわしいものを心がけています。そもそも私たちは、その土地に後からおじゃまさせていただく身。なので、デザイン優先で別荘を建てるのは違うと考えています」

そんな武田の姿勢が伝わるからか、ADDは新規参入が難しい地域の人々からも好意的に受け入れられているようだ。

「会員様が別邸に訪れた際に、地元の方々に『お帰りなさい』と迎えてもらえる、故郷のような存在を目指しています。同時に、地元の方々からも『ADDができてよかった』と言われるような存在でありたいです」

そんな“故郷”を2026年までに30拠点ほどに増やす予定だという武田。しかし、プロジェクトは「そこで完成ではない」と言う。

「会員様に常に新たな楽しみを提供させていただけるよう、そして建物の資産性を維持するためにも、30拠点を達成した後は、既存の別荘を売却して新たな別荘を造る予定です。ADDはいつまでも未完であり続けます」

既成概念を覆す新しい発想と、会員・地元・経営側の三方よしのビジネスモデルで、シェア別荘のナンバー1を目指す。武田の挑戦は始まったばかりだ。

武田崇嗣が手がける会員制別荘ブランド「ADD」

審査を通過した会員を対象に、1棟貸し切りが基本の別荘ブランド。公平かつゆとりのある宿泊率の提供を目指し、会員権の発行上限を2000に設定することで、利便性と希少性、さらに資産性も担保。2026年までに国内外30拠点に展開予定。https://add-second-house.com

RESERVATION
通常会員は1口あたり7泊、VIP会員には21泊の優先予約権を付与。必要なのは入会金と年会費のみで、宿泊費や清掃費、修繕積立費は不要(食事などは別途費用要)。空きがある場合のみ追加予約が可能。

STAY
プライベート空間を満喫してもらうべく、スタッフは常駐せず、予約やチェックイン&アウトはアプリで完結。事前にリクエストすれば、ハイヤー送迎やシェフズダイニングなどの手配が可能(一部有料)。

PRICE
第5期会員募集中(上限に達した時点で募集終了)。通常会員:入会金¥7,800,000、年会費¥500,000、VIP会員:入会金¥23,400,000、年会費¥1,000,000。別荘が増えるごとに会員権価格の上昇も予定。

仕事もプライベートもすべてにこだわる、武田崇嗣を構成する12個のファクター

Second House 1|滋賀・琵琶湖「湖畔の別邸」

禅の間を併設した「篝火(かがりび)テラス」や「ダイニングラウンジ」など、どこにいても琵琶湖の雄大さを感じられる「湖畔の別邸」。隠れ家感が満載だ。

琵琶湖と山、集落の空気感を五感で堪能してほしい

「『湖畔の別邸』が建つ集落を初めて訪れた時、俗世から遮断された空間だと感じました。このようなロケーションは、日本全国を探しても他にないのではないでしょうか。会員様にもこの空気感を味わっていただきたくて、敢えてスパ棟や離れなどの建物を分け、屋外を通ってアクセスする構造にしました。きっと滞在中、幾度となくこの土地ならではの風情を感じていただけると思います。聞こえるのは湖面のさざなみと木々の揺れる音だけという静けさもご堪能ください」

建築面積:603㎡
2023年7月12日オープン

Second House 2|千葉・房総半島「海と月の別邸」

大海原と月を愛でる特等席は、「海の棟」と「月の棟」というふたつの棟と、ラウンジやスパ&サウナを有する共有スペースで構成される。

太平洋を照らす月明りの美しさに心を奪われます

「都心からほど近いのに、手つかずの自然が息づいていて、美味しい食材に満ちている南房総は最高のリゾート地。なかでも『海と月の別邸』が建つエリアは、国定公園に指定されている海岸沿いで、開放感に満ちています。特に私が魅せられたのは、太平洋の水面を照らす月明り。それで、海と月をコンセプトに据えました。ちなみに南房総は、気の流れがいいパワースポットと言われていて、発展していくエネルギーがあるそうです。それも会員様とともに享受したいですね」

建築面積:616㎡
2023年秋オープン予定

Second House 3|鹿児島・屋久島「星命の別邸」

鬱蒼(うっそう)とした森の中、およそ19,000㎡という広大な敷地に3棟の別荘と1棟の共用棟。圧倒的スケールの別邸は、日々の喧騒を忘れ、心身を整える絶好の場所だ。

屋久島ならではの着生(ちゃくせい)と生命の営みを表現

「屋久島といえば山と思われがちですが、海遊びに山でのトレッキング、里の散策など、実は多彩な楽しみ方ができる島です。雨も多いのですが、だからこそ海から雲が湧き、雨が降り、雨水が山を伝ってまた海へと戻っていくという循環が成立しています。『星命の別邸』は、こうした生命の営みと、植物などが他のものに付着する“着生”という地元でなじみのある光景を表現すべく建設を進めています」

建築面積:19,000㎡
施工開始時期:非公開

Second House 4|沖縄「翠玉(すいぎょく)の別邸」

沖縄本島随一の透明度と言われる海に囲まれた離島というロケーション。「食」にも力を入れ、シェフを中心に据えたライヴキッチンを各棟に配備する予定。

大切な人とともに究極のお籠りステイを

「『翠玉の別邸』が位置するのは、沖縄本島と唯一橋でつながっている離島。本島とのアクセスがよいにもかかわらず、観光客があまり訪れないため、静かで手つかずの自然が残っています。この環境を最大限活用するには、“お籠り”が一番。そう考え、シェフを別邸に呼んで食事を提供することを想定しています。沖縄随一と名高いエメラルドグリーンの海と満天の星は、忘れ難い光景になると思います」

建築面積:560㎡
施工開始時期:非公開

武田崇嗣の3つの信条

1. いつまでも未完であり続ける

「未完とは、進化と可能性を秘めているということ。ビジネスも人間も、完成だと思った瞬間に歩みは止まってしまいます。別荘が会員様にとっていつまでも魅力的な存在であるよう、常に変化し、進化し続けたいですね」

2. 時には戦略を取っ払い、“バカ”になる

「ビジネスにおいて戦略を立てることは重要。けれど、唯一無二を目指すなら、時にそれを取っ払い、バカになることも必要な気がします。ネジがぶっ飛んだような発想こそが、イノベーションにつながるのだと思います」

3. 愚直に、まじめに、ひたむきに

「ビジネスにも人生にも、さまざまな波があります。調子がよい時も驕(おご)らず、慢心せず、どんな時も愚直に、まじめに、ひたむきに取り組む。それを続けた先に、信頼や人と人との絆が生まれるのだと思っています」

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=長尾真志

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