端正な面持ちで多彩な役どころに挑む俳優として。また、独自の視点で斬新な映像を切りだす監督として八面六臂の活躍を見せる斎藤工。譲らず、妥協せず、確固たる哲学から生みだされる彼のクリエイションは、世界中の多くのオーディエンスから熱い支持を得ている。
日々の現場で本物を生みだす瞬間をスナイパーのように狙う
俳優という職業は、個で成立しているように見えて、実は大きな輪の中のひとつのピースだと思っています。時期によっては複数の作品が同時進行して、異なる役柄を日替わりで演じることも少なからずあります。でもそれぞれの現場では、衣装や照明、撮影や録音などのスペシャリストがよい作品を作るための準備をしてくれていて、僕はその環境に身を委ねることで、現場のボルテージの火加減を調整することができる。それはひとえに信頼できる他力があるからこそ。とてもありがたいことだと思っています。
朝のルーティンがバイオリズムを整える
現場には台詞や所作を頭に入れていくといった最低限の準備はしていきますが、生身の人間が集まってひとつの作品を作り上げていくことで生じる偶発性も、時には必要だと思っています。準備したことを披露するだけになってしまうと、たとえ現場はスムーズに流れても、観客に強い印象を残す絵面にはならない。自分が心を惹かれる表現をする俳優さんも、意図せぬ出来事をプラスに転じさせる底力を持つ方が多いように感じます。
この仕事を続けていると、こうしたら波風が立たずに現場が進むという『型』のようなものができてきます。昨年、俳優の黒田大輔さんと兄弟を演じる作品を撮った際、喧嘩をするシーンのリハーサルで本気でぶっ叩かれて、久々に身体とメンタルがつながったような感覚になりました。そうなりたくないと思いつつも、いつしか『型』に嵌(はま)っていた自分がいたんです。俳優は虚業でもあるので、だからこそ本物を突き詰めないといけない。日々の現場で本物を生みだす瞬間をスナイパーのように狙うという黒田さんからの無言の助言のように感じられて、改めて気づきを得た体験でした。
日々、さまざまな現場をかけ持ちし、時計の秒針に追われることが多い身だからこそ、頭をスッキリとさせ、気持ちを整えることは不可欠です。このところは毎朝のルーティンで心を落ち着かせ、特製ドリンクを持って空が見える場所に移動し、一分間黙禱をするようにしています。バイオリズムをチューニングする時間を意識して作るようにしてから内なる自分に対峙でき、次に進めるいい循環が生まれたような気がしています。
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Takumi Saitoh
1981年生まれ。2001年に俳優デビュー。主演映画『零落』が大ヒット公開中。齊藤工名義で監督作品も数多く手がける。2023年9月には監督作品『スイート・マイホーム』(主演:窪田正孝)の全国公開も控える。
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