歴史と伝統の街・京都から若手作家を輩出する「ARTISTSʼ FAIR KYOTO」。2024年に「マイナビ ART AWARD」最優秀賞を受賞した志賀耕太氏の受賞作品やマイナビアートスクエアでの展覧会「SIDE GAME」への想いを聞いた。
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未来の才能が羽ばたくフェアが今年も開催!
今年もまた、「ARTISTSʼ FAIR KYOTO」の幕が開く。歴史ある京都を舞台に、2018年から開催しているこのフェアは、今年で8回目。若手の作家たちが主導で企画から出品、販売までを行うことに加え、優秀作品を表彰する「マイナビ ART AWARD」も開催され、日本現代美術の登竜門として注目を集めている。
昨年、アワードで最優秀賞を獲得したのは、志賀耕太氏の「SPIRAL JETTY MONJA」。志賀氏は東京藝術大学大学院在籍中。現代美術家ロバート・スミッソン氏の代表作である、渦巻状の作品「スパイラル・ジェティ」をモチーフに、もんじゃで映像化し、来場者の度肝を抜いた。
「広島でG7が開催され、それを機に海外でも広島焼が注目されていると知りました。日本食とアートでもなにかできないかと考え、そして『遊び』を通じて、欧米のアートと日本の関係、伝達の問題を捉え直したいという思いから作品を制作しました」
京都新聞ビル地下の無機質な空間に設置された7メートルのスクリーンの前で、多くの来場者が足を止めた。巨大なもんじゃの迫力やお祭り感のある提灯、そこで語られる多層的な歴史に惹かれ、作品世界に引き込まれたのだ。

「良し悪しを見極める感じではなく、ラフに見てくださる方が多かった。それも京都やこのフェアの寛容さだと思います」
マーケットベースではない自分の作品を、より多くの人に知ってもらう機会になったと、志賀氏はフェアを振り返る。
受賞を記念し、2024年10月から東京・銀座の歌舞伎座タワーにあるマイナビアートスクエアで志賀氏の個展「SIDE GAME」も開催された。「遊びの歴史」をテーマに、歴史にとっての遊びとは、を映像インスタレーションで表現したものだ。
「展覧会の会場が決まった時、真っ先に想い浮かんだのが、マイナビの広告がある神宮球場。そこから作品の物語が動きだしました」と志賀氏。
戦後、GHQの接収下だった神宮球場を舞台に、野球と社会の関係性を解き明かす「ステートサイド・ゲーム」と、鎖国下の長崎で広まったビリヤードやバドミントンを兵器に見立てた「鎖国兵器」の2作品を展示。
志賀氏の制作の根幹ともいえる「遊び」を通して、複雑性のある社会に向き合う展覧会は、大きな反響を呼んだ。
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2025年の「ARTISTSʼ FAIR KYOTO」は、京都国立博物館、京都新聞ビルを会場に、40組の若手の作品が展示される。そして彼らの推薦者でもあるアドバイザリーボードの展覧会は今回、東福寺で開催。近代庭園を代表する名園として知られ、豊かな自然を望む通天橋が架かる東福寺。美しい京都の街並みとアートの融合を、また新たな場所で体感できる。
志賀氏に続くのは誰か。若い才能に出合いに、会場へ足を運びたい。
志賀耕太/Kota Shiga
1998年東京都生まれ。東京藝術大学大学院博士課程在籍。東京を拠点に、空間や道具の規則を流用して「遊ぶ」ことで、現代の都市を捉え直すショートフィルム、パフォーマンスビデオを制作する。映画や出版の企画も行う。
ARTISTS’ FAIR KYOTO 2025
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【日程】2025年2月28日(金)~3月2日(日)※東福寺会場は3月6日(木)まで
【会場】京都国立博物館 明治古都館、京都新聞ビル 地下1階、臨済宗大本山 東福寺
【時間】京都国立博物館 明治古都館9:30〜17:00(最終入場16:30)、京都新聞ビル 地下1階10:00〜17:00(最終入場16:30)、臨済宗大本山 東福寺9:00〜16:00(最終入場15:30)
【入場料】京都国立博物館 明治古都館:一般¥2,000/大学生¥1,000、京都新聞ビル地下1階:無料、臨済宗大本山 東福寺(方丈):一般・大学・高校¥500/小学・中学¥300
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問い合わせ
ARTISTS’ FAIR KYOTO実行委員会事務局 TEL:0120-068-330(10:00-17:00)