プレジデンツカップで米国の逆転優勝に貢献した21歳の新星、ジャクソン・コイヴン。その飛びの源になっているのが「肩の縦回転」だ。「頑張って振っているのに飛ばない」「ヘッドが走らない」と悩む人にこそ知ってほしい、地面反力を使った飛ばしの極意を、動画とともに解説する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

「メダイナの奇跡」を米国が上書き! 3点差を覆した最終日の逆転劇
米国と世界選抜が対戦するプレジデンツカップが、米国・イリノイ州のメダイナCCで2026年9月24日から27日まで開催された。米国が世界選抜を17対13で下し、11大会連続優勝を果たした。最終日に3点のビハインドから見せた鮮やかな逆転劇は、選手層の厚さに加え、スコッティ・シェフラーの復活、そして21歳の新人ジャクソン・コイヴンの存在が大きかった。
メダイナCCには、ゴルフ史に残る逆転劇の記憶が刻まれている。2012年のライダーカップで米国は最終日を10対6と4点リードして迎えながら、欧州にシングルスで8.5ポイントを奪われ、14.5対13.5で敗れた。「メダイナの奇跡」と呼ばれる大逆転である。
2026年のプレジデンツカップでは、そのメダイナCCを舞台に、2012年とは対照的に米国が7.5対10.5と3点ビハインドで最終日を迎えた。そこから怒濤の反撃を見せ、最終日の結果は米国の9勝1分け2敗、9.5対2.5。最終日だけで7点差をつけ、17対13で勝利した。
これほど大きな逆転が起きた要因の一つは、シングルスにおける米国の選手層の厚さだ。フォアサムやフォアボールなどのペア戦では、2人の組み合わせや相性、戦術が大きく影響する。しかし1対1になれば、個々のショット力や経験、プレッシャーへの対応力が問われる。世界ランキング1位のシェフラーを筆頭に、ジャスティン・トーマスらメジャー優勝経験者が並ぶ米国は、12人の選手層の厚さを生かして個人戦で大きな力を発揮した。
さらに大きかったのが、序盤の数試合で流れをつかんだことだ。シングルスは一つの勝利が次の試合の選手、そして会場の空気に影響する。米国が序盤から勝利を重ねたことで、世界選抜は一つも落とせない状況で戦うことになった。
加えて今回の米国チームには、2012年のライダーカップでメダイナでの敗戦を経験したキャプテン、副キャプテンが4人いた。かつて自らが味わった敗戦の舞台に、今度はチームを率いる立場で戻ってきたのである。そうした経験や思いが、最後まで諦めないチームの執念や、苦しい状況でも流れを引き寄せる力につながったのかもしれない。メダイナという舞台だからこそ生まれた逆転だった。
「世界1位なのになぜ勝てない?」チーム戦の苦戦を乗り越えたシェフラーと、無敗の21歳コイヴン
今回、米国の勝利を語るうえで欠かせないのがスコッティ・シェフラーだ。世界ランキング1位に君臨するシェフラーだが、これまでのライダーカップでは2勝2敗3分け、プレジデンツカップでは3勝5敗と、個人戦ほどの強さをチーム戦では発揮できずにいた。特にプレジデンツカップでは負け越しており、「世界1位なのに、なぜチーム戦では勝てないのか」という視線もあった。
そのシェフラーが今回は3勝1敗。最終日のシングルスでもニコ・エチャバリアを2&1で破り、米国の大逆転に貢献した。チーム戦で結果を残すことが求められていた世界1位がチームをけん引した。
エチャバリアとの対戦で印象的だったのが、1UPで迎えた14番ホールでシェフラーが見せたスポーツマンシップだ。
エチャバリアがセカンドショットを打つ瞬間、ギャラリーからシェフラーを応援する大きな声が上がり、エチャバリアはミスショットした。シェフラーはすぐにギャラリーに向かい、プレーを妨げないよう注意した。
その後、勝利を決めるバーディーパットを外したシェフラーだったが、エチャバリアには約10メートルのパーパットが残っていた。それでもこのパットをコンシードし、引き分けとした。
チームの大黒柱として負けが許されない状況でも、ゴルフに対する誠実さを優先するフェアプレーの姿勢が印象に残った。
そして今回、もう一人の主役になったのが21歳のジャクソン・コイヴンだ。2026年7月にプロ転向後わずか3試合で3Mオープンを制し、キャプテン推薦で最後の1枠に選ばれた新人は、今回2勝0敗1分けと無敗。最終日には世界選抜のエース格であるシウ・キム戦でも勝利し、米国の逆転を後押しした。
チーム戦で苦しんできたシェフラーが世界1位としての責任を果たし、21歳のコイヴンが次世代のスター候補として勢いを加えた。メダイナに刻まれた「奇跡」の記憶が、今度は米国側の逆転劇として新たな歴史に書き加えられたのである。
飛ばないのは「肩の回し方」のせい? コイヴンのスイングに学ぶ"縦回転"のコツ
新たなスターとして注目を集めたジャクソン・コイヴンのスイングを見ると、飛距離を生み出すために重要な「前後軸」の動きを非常にうまく使っていることがわかる。
ゴルフスイングでは、垂直方向の軸を中心に回転するイメージを持つ人が多い。しかし、実際にはそれだけではなく、前後軸と飛球線方向軸という2つの軸も存在する。なかでも飛距離を生み出すうえで重要なのが、前後軸と呼ばれる、前傾した状態で肩が縦回転する動きだ。足の動きと連動して肩を縦に回転させることで、効率よくクラブを加速させることができる。
ダウンスイングで左足を踏み込み、そこから左膝を伸ばしていくと、地面からの反力を受けて右肩が下がりながら肩が縦回転する。つまり、足で地面を踏み込むことによって生じた地面反力を利用し、それを肩の縦回転につなげているのである。
この動きができると、インパクトゾーンが低く長くなるため、飛距離だけでなく方向性の安定にもつながる。コイヴンのようなトップ選手のスイングを見る際には、「軸と足の連動」に注目すると、スイングの見え方が変わってくる。
動画で解説|肩の縦回転で飛距離を伸ばす方法
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

