秋の装いを思い描いて、心がふっと高鳴る季節。人気ブランドの新作から各々の個性を読み解き、新たな服との出合いに期待を膨らませたい。人気スタイリスト・野口強による連載「The character of G」。

1.既成概念を鮮やかに覆す。プラダが示す、次の一手
伝統を踏まえつつアイテムを再構築し、既成概念への問いかけを通して新たなスタイルを組み立てる「BEFORE AND NEXT」をテーマに掲げた今季。ロング&リーンのシルエットや、敢えてティントをほどこしたシャツといった攻めのスタイリングに、進化を続けるブランドの美学がにじむ。

2.正統と自由を軽やかに制す、セリーヌのパリ・シック
卓越したテーラリングが光る段返りのジャケットに合わせたのは、ポップなパッチをアタッチしたワイドブラックデニムパンツ。アーティスティック・ディレクターのマイケル・ライダーのメンズウェアの解釈が反映された、新時代のエレガンスがここに。

3.匠の技で磨き上げる、ルイ・ヴィトンの普遍美
「タイムレス」をキーワードに、機能性と匠の技、さらには服の本質を、多様なスタイルで表現した今秋冬。しなやかなヌメ革色のレザーを用いたパーカは、襟元にシアリングを配した仕立て。ダブルのタイドアップしたスーツに羽織れば、洗練されたモダンな佇まいが完成。

4.異なる質感を響かせる、エルメスの粋な手腕に刮目
なめらかな質感が際立つシープスキン・ヴェロアのブルゾンは、内側のシアリングや、前立てから襟にかけて施されたカーフトリミングが、モダンなコントラストを描く。自在な着こなしが可能で、多彩なテクニックを駆使した佇まいは、季節や年月を超え、着る人の個性に寄り添う唯一無二の相棒となりそうだ。

5.柔らかな輪郭に普遍を宿す、アルマーニ流、貫徹の美学
今季のテーマである「CANGIANTE(玉虫色)」は、見る角度によって表情を変えながらも、本質は決して揺るがないことを示唆。シルエットは柔らかく、ボリュームはリラックス。ダブルブレストスーツのルックひとつにも、メンズウェアデザイン責任者であるレオ・デル・オルコのビジョンが貫かれている。

6.親密な記憶を未来につなぐ、ドリス ヴァン ノッテン新章
クリエイティブ・ディレクタージュリアン・クロスナーが手がけて2シーズン目となる今季は、初めて自分自身と向き合う純真さと誠実さを表現した好コレクション。刺繍とスパンコールで装飾されたタイトフィットのフルレングスコートのルックは、愛着のある服を再解釈し、新たな始まりを称えるニュアンスを感じさせる。

7.偉大な系譜を軽やかに着る、ディオールのモダニティ
メゾンの偉大なるアーカイブへのオマージュが、今季も数多く登場。「バー」ジャケットはクロップドされたシルエットで鮮度が加味され、カーゴジーンズは、1947年秋冬 オートクチュール コレクションに登場した「キルギス」ドレスから着想を得、再構築された傑作。風合いのあるダメージ加工は、日本でほどこされたものだというから、なんとも誇らしい。

8.光と影が大胆に交錯する、バレンシアガの造形力
盛期ルネサンスの芸術技法「Clair-Obscur(明暗法)」をもとに、ダイナミックなシェイプとボリュームで、鮮烈なコレクションを展開。オーバーダイ加工が施されたコットンキャンバスのモッズコートは、ライナーに着脱可能なファーをあしらったスーパーボリューミー仕立て。クラシカルな千鳥格子のセットアップとのコントラストも映える。


