男を刺激する新作時計#1 雲上ブランドの力作【バーゼルワールド・レポート】

スウォッチ グループの離脱をはじめ、出展ブランドの激減など、昨年来ネガティブな 情報が飛びかっていたバーゼルワールドが、3月21日~26日の日程で開催された。 果たして、この「世界最大の」ウォッチ&ジュエリーショーは、今年どうなったのか? そこで発表された新作は? そして、現場で明らかになった意外な事実とは。

フェアの迷走とは裏腹、新作はなかなか見応えが

来場者8万1200人、22%減。出展ブランド数520、20%減――フェア最終日のクロージング・プレスカンファレンスで、バーゼルワールドを立て直すべく、昨年同フェアのマネージングディレクターに就任したミシェル=ロリス・メリコフ氏から、衝撃的な数字が発表された。

リーマンショック前の最盛期で出展ブランドは2100以上。リーマン以降の経済復興期の2013年には、会場のバーゼルメッセの大規模改装・増床を敢行し、出展ブランド約1500、来場者は約15万人の規模となっていた。それと比較すると、フェアの後退感はあまりにも鮮明だった。

メリコフ氏は、さまざまな改革プランも発表し、多くの声に耳を傾けるスタンスも示した。実際、独立時計師やスモールブランドを中心に、主催者の対応が改善され、商談も充実していたとの声も聞かれた。今年を「底」にV字回復を期待したい。

フェアの迷走とは裏腹、各ブランド新作はなかなか見応えがあった。

シリーズ第1回では、いわゆる“雲上”ブランドの力作を紹介していこう。

好調をキープするウブロから成功者にふさわしい新作

まずは、ウブロ。1月のジュネーブサロンでも50型以上を発表したばかりなのに、バーゼルワールドでも60モデルもの新作を用意した。ウブロ中興の祖というべき時計業界の巨星、ジャン=クロード・ビバー氏が昨年11月、執行権のないLVMHウォッチメイキングディヴィジョン会長となり、氏の引退や関係するブランドへの影響も懸念されたが、そんな不安の声を払拭して余りある勢いを見せつけた。ちなみに、ビバー氏からも「これまでより自由に俯瞰できる立場で、後進の指導やアドバイザー的な動きを続けていく」という頼もしい言葉をいただいた。

そんなウブロの“今”を象徴するのが、ここに紹介する2モデル。「クラシック・フュージョン フェラーリ GT キングゴールド」は、2011年以来パートナーシップを継続しているフェラーリのワークス・レーシングチーム、スクーデリア・フェラーリの90周年を記念するもの。フェラーリのデザインチームが手がけた外装は、エアロダイナミックな世界観に富む。「クラシック・フュージョン」としては初めて、自社製キャリバーのウニコを搭載。ウォッチシーンと自動車業界のトップ同士の世界観の進化を印象づけた。

「スピリット オブ ビッグ・バン カーボンブラック」は、カーボン素材の開発でもリーダー的なプライドを示すモデル。ウブロの研究・開発における“要”というべき技術者、マシアス・ビュッテ氏が手がけたオフセンターデザインのスケルトン・トゥールビヨンを搭載する。

HUBLOT

クラシック・フュージョン フェラーリ GT キングゴールド
フェラーリとのコラボレーションモデルは独創的なデザインで見るものを驚かせる。新作はフェラーリのデザインチームが、高速で長距離を走行するグランツーリスモの世界観を表現。自社製キャリバー、ウニコを搭載。

世界限定500本。自動巻き、キングゴールドケース、径45mm。¥4,120,000[予価/9 月発売予定](ウブロ TEL:03-5635-7055)


スピリット オブ ビッグ・バン トゥールビヨン カーボンブラック

カーボンファイバーとブラックコンボジットを融合した素材のケースに、スケルトン トゥールビヨンキャリバーを搭載。ストラップを素早く交換できるワンクリックシステムも装備。

世界限定100本。手巻き、カーボンファイバー×ブラックコンポジットケース、径42mm。¥10,030,000[予価/9月発売予定] (ウブロ TEL:03-5635-7055)


パテック フィリップから若い層を意識したモデルも登場

パテック フィリップは、メンズ10モデル、レディス5モデルの新作を発表。なかでも、パイロットウォッチ第2弾となる「アラーム・トラベルタイム 5520P」は話題の1本。デュアルタイム機構と、ミニット・リピーターのノウハウを導入したハンマーとゴングによるアラーム鳴動機構を備えた新開発キャリバーを搭載。12時位置の二重表示窓に15分刻みでアラーム時刻を表示できる。

存在感あふれる「アラーム・トラベルタイム」は、価格も2400万円超と“雲上”の貫禄だが、スチールケースを採用した「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー 5212A」は、若いユーザーを意識したというだけあって、頑張れば手の届きそうな1本。レッドのヘッドを備えたハンマー型指針が週番号と月名を差し示すことに加え、デイト表示、曜日表示も備える。実用性の高さが、端正にまとめられた。

パテック フィリップは、女性用の新生ノーチラスや、昨年発表された女性用の「Twenty~4 オートマティック」のハイジュエリーバージョンなども発表。幅広い層を意識した新作を披露した。

PATEK PHILIPPE

アラーム・トラベルタイム 5520P
2015年に発表された「パイロット・トラベルタイム」を踏まえ、デュアルタイムと24時間表示のアラーム機能を備えた新キャリバーを開発。リピーター同様ハンマーがゴングを打つ機構。

自動巻き、Ptケース、径42.2mm。¥24,700,000 [予価/今秋発売予定](パテック フィリップ ジャパン・インフォメーション センター TEL:03-3255-8109)


カラトラバ・ウィークリー・カレンダー 5212A

1年のうちで第何週かを表示する機能を搭載。曜日、日付も備え、いつでもリスクなしにカレンダー調整が可能なのも特筆点。書き文字風フォントを採用するなど、ほどよいヴィンテージ感も。

自動巻き、SSケース、径40mm。¥3,650,000[予価/今秋発売予定] (パテック フィリップ ジャパン・インフォメーション センター TEL:03-3255-8109)


独立時計師界の雄、アントワーヌ・プレジウソが魅せるラグジュアリーの極み

今回のバーゼルで目にした新作のなかでも高額だったのが、独立時計師のアントワーヌ・プレジウソ氏と、その息子フローリオン氏との共同制作による、トリプルトゥールビヨンモデル「トゥールビヨン オブ トゥールビヨンズ」のハイジュエリーバージョンだ。“トゥールビヨンのなかのトゥールビヨン”の名にふさわしいこの超絶モデルは、3つのトゥールビヨンが1分間で1回転しながら、全体が10分間で1回転する超複雑機構。そしてホワイトゴールドケースには、バゲットカットダイヤモンドが敷き詰められた。アラブの石油王でもなければ手にすることができなさそうな、至高のオーラがため息を誘った。

ところで、プレジウソも所属する独立時計師アカデミーには、日本人時計師としては菊野昌宏氏と浅岡肇氏の2名が所属しているのだが、今回、牧原大造氏が新たに準会員に迎えられたことも報告しておきたい。"菊繋ぎ紋"と呼ばれる江戸切子の文字盤を採用し、ムーブメントには桜モチーフの繊細なハンドエングレーブを施した彼の作品「菊繋ぎ紋 桜」が、注目を集めていた。

ANTOINE PREZIUSO

トゥールビヨンオブ トゥールビヨンズ
独立時計師界の巨星、アントワーヌ・プレジウソと息子フローリオンが共同製作したトリプルトゥールビヨンに、バゲットダイヤをセットしたハイジュエリー仕様。

手巻き、WGケース、径47mm。¥151,800,000[予価] (一新時計 TEL:03-6854-5802)


#2に続く

Text=まつあみ靖