スイス・バーゼルでの2018年新作時計見本市、現地最新レポート

世界最大規模の時計見本市「バーゼルワールド」が、3月22~27日まで開催された。ロレックス、オメガなど世界の名だたる人気時計ブランドが最新モデルをここで発表。時計業界注目の6日間の現状やトレンドをレポートする。

ネガティブな情報が飛びかうなかで迎えた時計の祭典

ボルトにマラドーナにモウリーニョも! なんとも豪華な顔ぶれが、バーゼルワールド2018の開幕前日、プレスデーである3月21日の夕方、一堂に会した。FIFAワールドカップ ロシア™のオフィシャルタイムキーパーを務めるウブロが、レフェリー用に開発した初となるスマートウォッチ『ビッグ・バン レフェリー 2018 FIFA ワールドカップ ロシア™』を発表、そのお披露目パーティでのことだった。

「こういうことって、 バーゼルじゃなきゃあり得ないよな」と思わせるエキサイティングなイベントでバーゼルワールド2018はスタートした。

ウブロのプレスデーには豪華メンバーが集結

今年のバーゼルワールドに関しては、開催前からネガティブな情報が飛びかっていた。 出展ブランドが数百単位で激減、それにともないエキシビションスペースも縮小を余儀なくされ、「さあどうなるバーゼルワールド!?」といった空気の中で、開催日を迎えたのだ。

ミラノのウォッチ・リテーラーで、自らのブランド、グリモルディを展開し、かつてバーゼルにも出展していた、友人のジョルジョ・グリモルディが興味深い話をしてくれた。

「SIHHの後、バーゼルまでフェア関係者と交渉に行ったんだ。出展社数が減少し、出展料金もディスカウントされる観測も流れていたから。でも話しに行ったら、もうスペースの空きがないって言うんだ。冗談じゃないぜ、こんなにスペースが余っているのに!」

 結局、彼はバーゼルメッセの目の前にあるハイぺリオンホテル(旧ラマダホテル)3階のスモールスペースに出展することになったのだが。

バーゼルワールドの出展社数は、2011年の1892社をピークに、右肩下がりの状況が続いていた。出展コストの上昇が、その一因と言われている。バーゼルの出展料を以ってすれば、世界の主要都市で独自に新作発表会を実施したほうが、費用対効果が大きいという。バーゼルワールドのマネージング・ディレクター、シルヴィ・リッター氏は「量より質を重視する」旨の発言をしている。前述したグリモルディのケースを、ここに当てはめるなら、“持てるブランドを重用し、持たざるブランドは切る”、そしてラグジュアリーに舵を切りたい、という意図が見えてくる。SIHHを中心とするジュネーブのエキシビションが勢いを増してきた影響もあるだろうし、ネットやSNSの進行も、バーゼルワールドの在り方に変容を迫っていることは、間違いない。

そして幕を開けたバーゼルワールド2018だが、心配の声をよそに、結構盛り上がっていたような印象を筆者は受けた。主催者発表では、2日目までの来場者は前年比8%増、最終的な来場者も、昨年の10万6000人とほぼ変わらなかったとか(毎年スイス出展社協会がフェア後にクロージングレポートを配信し、そこに出展社数や来場者数が発表されてきたのだが、残念ながら今年はこのレポートが届いていない)。

フェア自体は曲がり角に来ているのかもしれないが、スイス時計業界は2017年半ばから回復基調にあり、それを反映し、新作には目を見張るものが少なくなかった。順不同で、筆者の考えるニュースなウォッチを挙げてみると……。

◆ブルガリが、4つ目の世界最薄記録となる最薄自動巻きトゥールビヨンを発表。
◆ウブロ、発色の難しいレッドセラミックケースを完成させる。
◆タグ・ホイヤー、ロレックスのブラック加工で知られるイギリスのバンフォードと、ゼニスに続いて、パートナーシップを締結。
(ここまでは、時計業界の巨人、ジャン-クロード・ビバー氏がらみだが)
◆ロレックス、オメガの2大人気ブランドが、片やディープシー、片やシーマスター300という人気ダイバーズウォッチをアップデート、信頼性が向上。
◆フレデリック・コンスタント、パーペチュアルカレンダー搭載トゥールビヨンでアンダー300万円を実現。
◆創業100周年を迎えたシチズン、製品化はまだながら、年差±1秒以内のエコ・ドライブムーブメントを開発。
◆パテック フィリップ、ゴールデン・エリプス誕生50周年記念の新作&限定モデルを発表。

毎年注目を集めるロレックスのブース

文字盤カラーについては、相変らずブルーは大人気。今年は特に、シャイニーなグラデーションダイヤルが豊作。グレーは定番化の勢い、そしてグリーンがトレンド最前線に浮上してきた。

そのほか気になったトレンドを挙げると、まずダメージ加工。経年変化を味わえるブロンズケースが増えてきたこともあるが、それ以上に、新品の段階で錆び風の加工を施したモデルが、いくつか登場。最近、ヴィンテージテイストは人気だが、それをさらに押し進め、デニムにおけるダメージ加工的なテイストが、タイムピースにも導入されそうな予感。

サファイアクリスタルの加工技術の進化も顕著だ。サファイアケースのバリエーションが増えたことに加え、往年のボックス型ミネラルガラス風に大きくラウンドしたサファイアクリスタル風防も増加。ヴィンテージな味つけに力を発揮し始めた。また、いくつかのハイブランドで、ムーブメント内にサファイアクリスタル製のコンポーネンツを用い、透明性や審美性を高めたモデルも見られた。

アーカイブを活かした70’sデザインのモデルも、いくつかのブランドが発表。静かなブームとして押さえておきたい。

さて、前述したように、バーゼルワールドが曲がり角に来ていることは間違いない。メディアでもフェアに対して厳しい論調の記事が少なくない。確かに、ラグジュアリーを意識するあまり、多様性を捨て去るようなことがあっては、フェアの醍醐味は薄れてしまう。

筆者は、今年で記念すべきバーゼル取材20回目を迎えたが、バーゼルはウォッチシーンのベンチマークとなるエキシビションという以上に、時計を巡る一大「祭」だったように思う。冒頭に書いたスターアスリートたちが集結したイベントなどは、それを象徴するものだ。これからも、バーゼルワールドは、敷居の高い「サロン」ではなく、賑やかな「祭」であって欲しい。そのために、何をすべきなのか? フェア主催者や各時計ブランド、関係各所が、最大限知恵を絞り、連携して、この“祭”がよりよい方向に進んでいくことを、切に願っている。

Text=まつあみ 靖

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